細胞ベース食品のハザード同定

No.08(2023.04.12)

イメージ

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。FAOとWHOが細胞ベースの食品の安全性に関する専門家会合を開催し、その報告書を発表した。欧州食品安全機関は、食品中のN-ニトロソアミン類による健康へのリスクについて科学的意見を発表した。ドイツ連邦リスクアセスメント研究所は、ワイルドガーリックと他の有毒な植物との誤認について注意喚起を行っている。

注目記事

【WHO】細胞ベースの食品の食品安全について

 2022年11月、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が細胞ベースの食品の安全性に関する専門家会合を開催し、その報告書を発表した。専門家会合では、リスク評価プロセスの第一段階として、細胞ベースの食品に関する各国の規制的な枠組みの整理、4つの製造工程(細胞原料、培養/分化、収穫、加工)の技術的な確認と各工程におけるハザード同定を目的とした。

※ポイント:2020年12月に世界で初めてシンガポールでEat Just社の培養鶏肉が認可され、次いで、2022年11月にUPSIDE Foods社の製品、2023年3月にはGOOD Meat社の製品について米国食品医薬品局(FDA)による市販前協議が相次いで完了するなど、商用の細胞ベースの食品の生産が注目されています。しかし、細胞ベースの食品について明確に制度を構築している国はまだ少なく、進行中の課題です。今後、細胞ベースの食品の安全性を監視するにあたり、今回同定されたハザードが参考になるでしょう。

【EFSA】食品中のニトロソアミン類は健康上の懸念を引き起こす

 食品中のN-ニトロソアミン類(10種類)による健康へのリスクについて欧州食品安全機関(EFSA)が科学的意見を発表した。食品のうち「肉および肉製品」の摂取がN-ニトロソアミン類の暴露に最も寄与している。EFSAは、EUのすべての年齢集団において現在の暴露レベルは健康上の懸念を生じると結論した。

※ポイント:ニトロソアミン類は食品の調理・加工中に生成する代表的な物質です。健康への懸念があるとEFSAが指摘したため、今後、その報告を受けた欧州委員会(EC)で最大残留基準値(ML)の設定も含めたリスク管理オプションの検討が始まります。

【BfR】ワイルドガーリック:混同すると中毒になることが多い

 ワイルドガーリック(Allium ursinum:別称ラムソン)は、よく知られたネギ属の野草である。この植物は、若葉のときに有毒なイヌサフラン(Colchicum autumnale)やスズラン(Convallaria majalis)とよく似ているため誤認されることがある。とくに4、5月に、ドイツやオーストリア、スイス、クロアチアで誤認による中毒の発生件数が増える。ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)は、自ら採取したものが疑わしいと思った場合には食べないよう助言している。

※ポイント:我が国も山菜採りのシーズンとなり、食べられる植物と有毒植物の誤認による中毒の発生が多くなる時期になりました。安全情報部では注意喚起のためのパンフレットとポスターを公開しておりますので、参考にしていただけましたら幸いです。下記URLよりダウンロードして、ご自由にお使いください。

安全情報部「有毒な植物と食べられる植物 間違えないように気をつけて!」
パンフレット
http://www.nihs.go.jp/dsi/section_s3/toxins/toxicplantsA4.pdf
ポスター
http://www.nihs.go.jp/dsi/section_s3/toxins/toxicplantsB2.pdf

(安全情報部第三室)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.08(2023.04.12)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2023/foodinfo202308c.pdf

今号の目次

【WHO】
1. 低ナトリウム塩代用品の使用に関するガイドライン案
2. 細胞ベースの食品の食品安全について
3. 栄養食品安全部2022年の重要成果
4. 出版物(第91回、第93回 JECFA 報告)
5. 国際がん研究機関(IARC)

【FAO】
1. 全ての人に安全な食品を:食品安全に関する FAO の取組:科学、規格、グッドプラクティス
2. FAO 戦略的枠組み2022-2031での食品安全のための戦略的優先課題
3. FAO は食料安全保障と緊急時回復力強化のための日本からの3,440万ドルの貢献を歓迎
4. Codex

【EC】
1. 動物福祉:産卵鶏の福祉保護に関連する公的管理の報告書発表
2.「水枠組み指令優先物質の環境基準案」についてのポジションペーパー
3. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. 飼料中の臭素とオクラトキシン A の拡大文献調査
2. 食品中のニトロソアミン類は健康上の懸念を引き起こす
3. グループの意思決定モデルに関する科学的文献レビュー
4. データに関するアドバイザリーグループの2022年の年次報告書
5. 食品酵素関連
6. 食品接触物質関連
7. 農薬関連

【JRC】
1. JRC テクニカルレポート:農業食料チェーンの偽装と詐欺的行為に取り組む

【FSA】
1. 規制変更グッドプラクティス
2. FSA 理事会での議論の概要-2023年3月22日
3. 新しい「May Contain」ガイダンスに対する意見を求める
4. 研究プロジェクト:乳生産及び繁殖用全反芻動物の飼料添加物としての3-ニトロオキシプロパノール「3-NOP」の評価結果
5. 食肉詐欺調査に関する CEO の声明
6. 消費者を保護するための新たな輸入規制の提案を歓迎する
7. イングランド、ウェールズ、北アイルランドにおける近代化された食品衛生提供モデルの開発に関する協議を開始する
8. 食肉偽装調査に関する CEO の声明

【DWI】
1. Duxford の PFAS 汚染水質イベント調査

【ASA】
1. ASA 裁定
2. 助言 食品:プロバイオティクスクレーム

【BfR】
1. グルタミン酸とグルタミン酸塩類(E620–E625):食品添加物としての使用による健康影響の評価
2. ワイルドガーリック:混同すると中毒になることが多い

【RIVM】
1.2022年秋に IJmond で再び大量の PAHs と金属が見つかった
2.2030年の飲料水不足を予防するために迅速な対応が必要
3. 報告書

【ANSES】
1.2種類のメタクリレートを感作性物質と刺激性物質に分類する
2. ビタミン D:乳幼児の過剰摂取を避けるために医薬品を選択する
3. 甘草はほんの時たま適度に摂取すること

【VKM】
1. 魚の飼料の成分として使用する遺伝子組換えナタネ油(Aquaterra®)

【FDA】
1. ベビーフードに含まれる鉛のアクションレベルに関する FDA の業界向けガイダンスを更新
2. 米国乳児用調製乳市場の回復力をさらに高めるための緊急の国家戦略を示す
3. 食品ラベルに表示される食事指導文により、FDA は栄養改善と食事に関連する慢性疾患の減少にさらに取り組む
4. ナトリウム摂取量を減らすための塩代用品の使用拡大による栄養改善と疾患減少のための追加措置を講じる
5. 米国のフードサプライは世界で最も安全な1つである
6. FDA と Stop Foodborne Illness は食品安全文化の評価についてのウェビナーを共同開催する
7. ゴマを主要な食物アレルゲンとして追加するための特定のビールの表示に関する改訂ガイダンスを発行
8. 着色添加物認証に関する報告:2023会計年度第2四半期、1月1日-3月31日
9. FDA-SENASICA-Cofepris 食品安全パートナーシップ
10. 警告文書

【NTP】
1. 毒性試験仕様
2. Sprague Dawley ラットでの強制経口in vivo反復投与生物学的ポテンシー試験の報告
3. Wistar Han [Crl:WI(Han)] ラットと B6C3F1/N マウスに吸入投与したアセトインと
2,3-ペンタジオンの毒性試験

【EPA】
1. 飲料水の水質に関する国民の意識を向上させるための提案を発表
2. EPA と HHS は、乳幼児ケアと教育の状況での鉛の検出と対策のため、州に連邦資源の活用を薦める
3. EPA は初めての化学物質データ報告全国レビューで化学物質の国内生産及び輸入をより一般の人々に入手しやすくする
4. Biden-Harris 政権は化学物質とポリマー工場の基準を強化し大気中有害物質によるがんを劇的に減らすことを提案

【CDC】
1. 環境ハザード暴露を評価する新しい資金提供発表

【USDA】
1. APHIS は規制状態レビュー回答を発表:Donald Danforth Center テフと Moolec
Science Limited ベニバナ

【FSANZ】
1. 食品基準通知

【MPI】
1. オーガニック製品法の変更

【香港政府ニュース】
1. 食品中のヨウ素
2. プレスリリース
3. 違反情報

【MFDS】
1.日本産輸入食品の放射能検査の結果
2. QR コードで食品情報を一度に確認してください!
3. 家庭での簡便食のプルコギ・カルビタンなど製造業者の点検結果
4. 食薬処、国内流通農産物及び畜産物残留物質の暴露レベルは安全
5.「子供の成長」など不法・不当広告にご注意ください!

【SFA】
1. 地元の農産物に由来する HoReCa 事業を評価する Farm-to-Table 評価プログラムを開始する
2. 需要と供給に注目した新同盟
3. リコール情報

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・米大統領行政命令
・ProMED-mail