「Tokyoインターナショナル・バーショー2013」レポート(3)

ステージ風景
ステージ風景

さて、今回もアジア各地から熱心なバーテンダーがTokyo International BarShow 2013(以下TIBS2013)に来場していた。今回は台湾からやってきたバーテンダー二人組を見つけて声を掛けた。

日本のバーテンディングは“プロフェッショナル”

台湾のバーテンダーたち
台湾のバーテンダーたち
シンガポールのバーテンダーたち
シンガポールのバーテンダーたち

 震災の際にはアメリカに次ぐ巨額の義捐金を日本に送ってくれた台湾だが、人々の年収は日本と比較して高いわけではない。日本の平均年収が409万円(国税庁民間給与実態調査)なのに比べて、台湾の平均給与は一般に150万と言われるからおおよそ2.5倍ということになる。TIBS2013の入場料は1日で5000円、2日通しで9000円で、これに台湾からの交通費と宿泊費6~7万円を加えるとだいたい台湾での平均月収に迫る。それだけの出費をして、どうしてバーショーに来るのかをうかがった。

 一人は「白州」、もう一人は「イチローズ・モルト」が好きだと言った後、筆者の覚束ない中国語に見かねた彼らの友人の女性が英語で助け船を出してくれた。彼女の通訳によれば、日本のバーテンディングは所作がスマートで、一言で言うと「Professional & Friendly」に尽きるという。

 韓国やシンガポールと異なり、台湾のバーテンディングが日本に近いことは去年のバーショー・レポート「『Tokyoインターナショナル・バーショー』レポート(2)海外トップ・バーテンダーに聞く日本とアジアの違いでも説明したが、“マティーニを頼むと周囲の客がさりげなく注目し、客とバーテンダーとの緊張した勝負が見えない火花を散らす”日本独特のバー文化を最も忠実に継承しているのが台湾だ。だから、彼らはバーショーや他のウイスキー関連イベントで来日したときには必ずと言っていいほど銀座の重鎮バーテンダーのところに視察と表敬を兼ねて訪れるそうで、今回の彼らもこれから銀座に向かうと言っていた。

日本のバーテンダーのフルーツカッティング
日本のバーテンダーのフルーツカッティング

 来場者でごった返す会場を行ったり来たりしながら、来場している外国人を見つけるのは結構大変だ。ゲストでも見つけるのは大変なのだが、我々日本人と同じ顔立ちをしたアジアのバーテンダーを見つけるのはさらに至難の業で、喫煙室には何度も足を運ぶことになる。会場内では英語と日本語しか耳にしないが、喫煙所で友人同士で交わされる会話に耳をそばだてると中国語やアジア訛りの英語が聞こえてくるからだ。

 友人同士で英語を話しているシンガポールからやってきたバーテンダーを見つけたのも喫煙室だった。彼らも日本人バーテンダーの技術を学ぶために毎年ここを訪れるという。シンガポールでもフルーツはよく使うが日本のバーテンダーのカッティング技術はレベルが高く、勉強熱心なことにも敬意を表しているという。

異色の競技会「なでしこバーテンディング」

「なでしこバーテンディング・チャレンジ」の出場者たち
「なでしこバーテンディング・チャレンジ」の出場者たち
使う酒を制限時間内に会場内で探して借りてくる
使う酒を制限時間内に会場内で探して借りてくるというチャレンジングな企画だった

 今回はイベントをあまり追いかけることができなかったが、今年の目玉企画である日本バーテンダー協会(NBA)に所属する女性バーテンダー10名による即興カクテルコンクール「なでしこバーテンディング・チャレンジ」は面白い企画として人気を呼んでいた。

 出場バーテンダーは、当日になるまで作るカクテルを知らされていない。創作カクテルを出すところまでは通常のカクテル競技会と変わらないのだが、もう一つ課題が出される。サイドカーやジンフィズなど10種類ほどのスタンダードカクテルの中から、当日の抽選で何を作るかを知らされる。これだけでも、「一カ月前から練習を繰り返して……」という通常のカクテル競技会と比較して異色で、何を使うかは当日になってわかるわけだから、出場者は準備するわけにはいかない。

 酒はどこで準備するのか? 会場には、ウイスキーはもちろんスピリッツもリキュールもふんだんにある――そう、出場者は、競技会の前哨戦として、主催者側がスタッフとして一人に一人ずつ準備したエスコート役のバーテンダーを相談役兼荷物持ちとして後に従えて制限時間内に使う酒とリキュールを会場内で探すという“借り物競争”を繰り広げるのだ。

 筆者もカメラを携えて何組かを追いかけた。今まで使ったことのないブランドも多いからカクテルにした場合の微妙なさじ加減が作ってみないとわからないという、なかなかエキサイティングなカクテル競技会となった。10名の出場者の中で優勝の栄冠を勝ち取ったのは、富山から参加した三栖まりやさんであった。

 正直に言えば、筆者はオープニング・セレモニーでずらりと並んだ彼女たちを写真に収めた後は地下のブースで取材をしていたため、会場で競技会そのものの様子は見ていない。後から優勝者を確認しようとして彼女たちのカクテル調製の模様がYouTubeにアップされていることを知った。読者の方々にもTIBS2013全体を撮影した別動画と合わせて、ぜひYouTubeでご覧いただきたい(※)。

 以上で、今回のバーショー・レポートは終わりとするが、カクテル競技会つながりで、バーショーの翌日に開催されたちょっと珍しいカクテル競技会のレポートにつなげることとする。

※NBAPublicRelations’s channel(YouTube)
https://www.youtube.com/user/NBAPublicRelations?feature=watch
About 石倉一雄 129 Articles
Absinthe 研究/洋酒ライター いしくら・かずお 1961年北海道生まれ。周囲の誰も興味を持たないものを丹念に調べる楽しさに魅入られ、学生時代はロシアの文物にのめり込む。その後、幻に包まれた戦前の洋酒文化の調査に没頭し、大正、明治、さらに江戸時代と史料をあたり、行動は図書館にバーにと神出鬼没。これまでにダイナースクラブ会員誌「Signature」、「男の隠れ家」(朝日新聞出版)に誰も知らない洋酒の話を連載。研究は幻の酒アブサン(Absinthe)にも及び、「日経MJ」に寄稿したほか、J-WAVE、FM静岡にも出演。こよなく愛する酒は「Moskovskaya」。