2011年食の10大ニュース[8]

  1. 東日本大震災の影響広範に
  2. ホットランド、石巻に本社移転
  3. ゼンショー、外食企業トップに
  4. 「社員食堂本」大流行
  5. レシピサイトが人気
  6. 「焼肉酒家えびす」の食中毒事故などで肉の生食に規制
  7. 介護食などの市場開拓が本格化
  8. ノンアルコール飲料の種類拡大
  9. 日本アクセス、食品メーカーなどと連携し、外食向けメニュー開発
  10. 「カップヌードルごはん」「ぽん酢ジュレ」がヒット

2011年「食」のキーワード

1. 東日本大震災の影響広範に

 東日本大震災が東北地方の産業全体に与えた被害は、工業製品分野では徐々に回復しつつあるが、農林水産業では今後相当の期間、回復が困難なほどダメージが大きいものとなった。とくに水産業では漁業のみならず、水産加工業も大きな痛手を受けていること、福島第一原子力発電所事故による放射性物質の拡散がどの程度の期間・範囲に及ぶか予想しにくいため、食糧供給基地としての東北地方の地盤沈下が心配だ。消費側としても、せめて風評被害だけには与しないような冷静な対応と、正確な情報提供が望まれる。

2. ホットランド、石巻に本社移転

 たこ焼きチェーン「築地銀だこ」を展開するホットランドは、東日本大震災で被害を受けた東北地方を支援する意味も込めて、本社を群馬県桐生市から宮城県石巻市に移転した。同社は7月にトレーラーハウス型商店街「ホット横丁」をいち早く開設、地元を元気づけるとともに雇用の創造にも乗り出しており、小回りが利く外食企業ならではの社会貢献を果たしており、今後もたこの加工施設の建設も予定するなど、話題を集めた。

3. ゼンショー、外食企業トップに

 牛丼チェーン「すき家」などを展開するゼンショーの2011年3月期連結売上高が3707億6900万円と、日本マクドナルドホールディングスを抜き、外食企業のトップに立った。ココスジャパンやサンデーサンなど、既存外食企業の買収を活発に展開したことが大きな要因。ただ、同社は「すき家」の防犯体制の不備や労務問題など数多くの問題点も抱えており、「No.1企業」としての社会的責任も果たすことが期待される。

4. 「社員食堂本」大流行

 体重計、体脂肪計など健康管理機器メーカーのタニタの社員食堂で提供しているメニューのレシピをまとめた「体脂肪計タニタの社員食堂」(大和書房)が大ヒット。これに続けと、「再春館製薬所 ニッポンいちの社員食堂」(主婦の友社)など“健康”や“美”のイメージがある企業の社員食堂のメニュー集が続々と登場した。さらには「女子栄養大学の学生食堂」(PHP研究所)と、学食の世界にも広がりを見せるなど、低カロリー、栄養価に配慮したレシピに対する消費者の関心の高さを示した。

5. レシピサイトが人気

「クックパッド」「楽天レシピ」「ヤフー!レシピ」など、消費者がレシピを投稿したり検索したりできるWebサイトが大人気となっている。各サイトともレシピの蓄積が進んできたことが要因。たとえば「クックパッド」には約100万のレシピがあり、月間1500万人が利用するという。4位の「社員食堂本」の人気と合わせ、日常の献立に苦心する消費者の姿が見える。

6. 「焼肉酒家えびす」の食中毒事故などで肉の生食に規制

 4月に「焼肉酒家えびす」が富山県、福井県などの店舗で提供したユッケが原因となる食中毒事故が発生、5人が死亡した。ユッケに使った牛生肉から腸管出血性大腸菌(O157、O111)が検出された。これを受け、厚生労働省は生食用の肉の規格基準の見直し、周知、若齢者や高齢者などが食べないようにとの呼びかけを強化した。また、12月には牛の肝臓からもO157を検出したことで、厚労省は飲食店に対し提供の自粛を求めていた生レバーについても、法律で禁止する可能性が高まってきている。

7. 介護食などの市場開拓が本格化

 噛んだり飲み込む力が弱くなっている高齢者や要介護者向けの介護食の市場開拓が本格化している。これまで流動食市場は明治とクリニコ(東京・目黒区、森永乳業100%子会社)が大手として市場を押さえているが、きざみ食や嚥下食などは、病院や高齢者施設などでの現場調理が大半だった。将来的にこの部分の市場が拡大することが確実と、日本水産が10月、噛み下しやすい「赤魚の煮付け」「鮭のクリームソース煮」など8品目を発売、介護食市場に参入した。キユーピーも家庭用高齢者向け介護食「やさしい献立」シリーズ49品目中20品目を9月に1割値下げし、拡販に打って出た。ハウスは10月、腎臓病の在宅患者向けに低たんぱくのレトルト食品を発売した。在宅はもちろん、人手不足が深刻な老人介護施設などが市販品を活用する例が増えそうだ。

8. ノンアルコール飲料の種類拡大

 ビール風味飲料ではノンアルコール商品が2年前から出ているが、今年はワイン、梅酒、焼酎風味飲料へと一気に拡大した。これまで「ゴルフ場に車で来たから、昼はノンアルコールビールしか飲めない」など「我慢飲料」の色合いが濃かったノンアルコール飲料だが、「ワイン、焼酎を飲みたいが、酔いたくはない」といった前向きの飲み方をする人が増えているようだ。

9. 日本アクセス、食品メーカーなどと連携し、外食向けメニュー開発

 大手業務用食品卸の日本アクセスが10月末、キユーピーや雪印メグミルクなどの食品メーカーや包材メーカーなど約130社と「アクセス業務用市場開発研究会」を立ち上げた。野菜メニュー、米飯メニュー、鍋メニューなど7つの分科会で参加各社の商品を組み合わせたメニューを開発し、外食、中食、給食企業などに提案する。川中企業が音頭をとっての新規メニュー開発の動きとして注目したい。

10. 「カップヌードルごはん」「ぽん酢ジュレ」がヒット

 日清食品の「カップヌードルごはん」、ミツカンやハウス食品、ヤマサ醤油が発売したジュレタイプのぽん酢がいずれも好調な売れ行きを示している。日清食品では7月の発売後12年3月までの売り上げ目標を50億円に設定、既存の加工米飯市場と同程度の売り上げを1品で獲得する予定だ。ぽん酢は現在約270億円程度の市場規模で、年率数%の伸びを示しているが、今年度は各社がジュレタイプのぽん酢を発売したことで10%以上の伸びとなり、市場規模は300億円になると見られている。既存の成熟した食品も、形を変えることで新市場を開拓できる好例と言える。


2011年の10大ニュース
《特別企画》2011年食の10大ニュース[一覧]
これまでの「10大ニュース」
《特別企画》2010年食の10大ニュース[一覧]

About 加藤秀雄 3 Articles
フードジャーナリスト かとう・ひでお 1973年日本経済新聞入社。88年3月日経マグロウヒル社(現日経BP社)に出向。「日経レストラン」の創刊準備に携わり、創刊時、副編集長。91年から約9年間編集長を務めた後、「日経レストラン」「日経食品マーケット」発行人を歴任。現在、人間総合科学大学、東京栄養食糧専門学校非常勤講師。社団法人オープン・フードサービス・システム・コンソーシアム代表理事、日経読み方セミナー講師、宮城県食大使などを務めている。