ラム肉がお薦めである3つの理由

ラム
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筆者の“ラム肉デビュー”はかなり遅い。2002年6月、家内と北海道へ取材旅行に行き、帯広で初めてジンギスカンを食べた。ジンギスカンが初めてなら、面と向かって羊の肉と対峙したのも初めてのことだった。「羊肉は臭い」という先入観で避け続けていたこともあるし、豚や牛、鶏などと比べて、日本人にはなじみの薄い肉だという理由もあった。

ラム肉人気の背景に「ヘルシー」あり

ラム肉の販売例
カルニチン訴求の文言を含むラム肉の販売例

 食べてみた。臭くない。むしろ鶏肉の匂いの方に辟易することがある。調子に乗って夫婦して大量に食べた。後で消化薬の世話になるものと思ったが、それは杞憂に終わった。消化がよかったのだ。

 筆者はその時44歳。以来すっかりラム肉のファンで、ときおり無性に食べたくなることがある。矢も盾もたまらず精肉店やスーパーに走るが、近隣で常時置いている店はほとんどない。その事実を改めて知って落胆するが、その分、置いてあるのを発見した時の喜びは大きい。

 ちなみに「羊肉は消化がいい」というものは個人的感想なので、別に根拠があるわけではない。ただ、近年じわじわとラム肉人気が盛り上がってきている。耳にするのは「健康にいい」という説だ。

 ラムとは生後1年未満の仔羊で永久歯が生えていない羊のことを指す。

 これが健康にいいという説には3つの理由がある。1つが「ラム肉の脂肪は人体に吸収されにくい」というものだ。肉の動物性脂肪が肥満の原因になるというのは、ことラム肉に限っては当たらないという。

 なぜかというと、人間の体温とラム肉の脂の「融点」(溶け始める温度)の違いによるものだ。人間の体温はだいたい36℃前後だが、ラム肉の脂の融点は44℃と8℃も高いことから、腸内に入った脂はなかなか溶けず、腸で吸収されることなく体外に排泄されるという。

 ちなみに他の食肉の融点は、牛肉が40℃、鶏肉30℃、豚肉28℃。この論でいけば、牛肉も吸収されにくいことになる。

 とは言え、ヒトの消化器は融点の高い脂肪も消化する能力を持っているわけだが。

ラム肉は不飽和脂肪酸が多い

 ラム肉が健康にいいとされる理由の2つ目は「不飽和脂肪酸」だ。現代人にとってとくに気になる体の数値がコレステロール。これ自体はホルモンや神経細胞の材料として、人間の体を維持するのに必要なものだが、問題は過剰となることだ。

 コレステロールが過剰になると血液中に必要以上に入り込んで粘度の高い血液にしてしまい、また血管の壁に付着して血管内部を細くし血流を妨げる。その結果、高血圧や動脈硬化を起こし、心筋梗塞や脳卒中、糖尿病などの生活習慣病を引き起こす原因となる。そうしたコレステロール過剰の引き金となるのが肉食とされているわけで、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉などを食べて動物性脂肪を摂取する場合には、必ず付いて回る問題だ。

 ところが、牛肉・豚肉・鶏肉と羊肉の間に一線を画しているものがある。それが不飽和脂肪酸である。この成分を他の食肉に対して格段に多く含んでいるのが羊肉なのである。

 イワシやサバ、アジなどの青魚に多く含まれているこの成分は「コレステロールを減らす働きに優れている」とされている。したがって、コレステロール過剰を気にするならラム肉を選択することをお薦めするという話になるのだ。

脂肪燃焼を促すカルニチン

 ラム肉が健康にいいとされる理由の3つ目。それは「カルニチン」である。動物性タンパク質に含まれるアミノ酸の一種で、羊肉や牛肉、馬肉や魚のカツオ、牛乳などに含まれているが、とくに羊肉には多く含まれている。

 カルニチンの健康的効果とは、「体内の脂肪を燃焼させる働きに役立つ」ということである。体内で脂肪酸からエネルギーを取り出すのは、細胞の中にあるミトコンドリアという“工場”だが、この工場に脂肪酸を運び入れる機能を持つ唯一のアミノ酸がカルニチンだ。これが多ければ、脂肪酸の“燃焼”を促すことに役立つはずだというわけだ。

 カルニチンはヒトの体内でも生成している。しかし、20歳をピークに年々生成能力が落ち、体内のカルニチン量が少なくなっていく。脂肪を運ぶカルニチンの量が少なくなれば、工場であるミトコンドリアの中に入る脂肪の量も減って、燃焼できなかった脂肪は体内に蓄積される。反対に、カルニチンを食事によって補給すれば脂肪の燃焼が促されて、脂肪は体内に蓄積しにくくなり、肥満防止となる上に、肥満が原因となる生活習慣病の予防にもつながると考えられる。

 カルニチンの健康的効果はまだある。近年、アスリートの間でカルニチンが注目されている。それというのも、カルニチンを毎日一定量摂取すると、体内に取り込める酸素の量が増え、運動が長く続けられるようになるとされるからだ。また、カルニチンは筋肉中の疲労物質である乳酸を減少させる働きもあるので、激しい運動をより長く続けることができるという。

 さらには、カルニチンは体内で代謝されると新たに「アセチルカルニチン」という物質に合成される。これには脳細胞を再生する働きがあるので、脳の活性化につながるといわれている。

 健康面から言えば、ラム肉を避けるのはもったいない話だ。

About 旭利彦 15 Articles
ジャーナリスト あさひ・としひこ 旅行会社勤務の後、スーパーマーケット専門紙「流通ジャーナル」、海外旅行専門誌「トラベルタイムス」(オータパブリケイションズ)、同「トラベルマネジメント」(トラベルコンサルタンツ)での社員編集者勤務を経て、1996年よりフリーランス。「夕刊フジ」「サンケイスポーツ」などで健康および医療・医学分野の契約ライターを担当。その後、「週刊新潮」で連載コラム「よろず医者いらず」、夕刊フジで一般食品の健康的効能を紹介する「旭利彦の食養生訓」、飲食業界専門誌「カフェ&レストラン」で「カフェのヘルシー研究」、経済雑誌「経済界」で50代以上の男性に向けた健康コラム「経営者のための“自力”健康法」を連載。現在は食品専門誌「食品工業」(光琳)、スーパーマーケット専門誌「週刊ストアジャパン」、医療専門誌「月刊/保険診療」(医学通信社)で取材・執筆活動を行っている。主な著書に「よろず医者いらず」(新潮社)、「カフェの『健康食材』事典」(旭屋出版)など。