サルモネラ汚染されたキクラゲ

国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(微生物)No.03(2021.02.03)を発表した。

注目記事

【米国】キクラゲのサルモネラ

 米国疾病予防管理センター(US CDC: Centers for Disease Control and Prevention)、複数州の公衆衛生・食品規制当局および米国食品医薬品局(US FDA)は、キクラゲに関連して複数州にわたり発生したサルモネラ(Salmonella Stanley)感染アウトブレイクを調査した。

 2020年11月4日までに、S. Stanleyアウトブレイク株感染患者が12州から計55人報告された。患者の発症日は2020年1月21日〜9月19日であった。情報が得られた患者48人のうち6人が入院した。死亡者は報告されなかった。

 情報が得られた患者23人のうち22人が飲食店でのラーメンの喫食を報告した。このうちの数人は同じラーメン店での喫食を報告しており、患者クラスターの一部である可能性が示された。

 FDAおよび複数州の当局は、患者が喫食したキクラゲの供給元を特定するため、患者クラスターに関連した飲食店のうち4カ所を起点として追跡調査を実施した。その結果、Wismettac Asian Foods社がこれらの飲食店にキクラゲを供給したことが特定された。
2020年9月23日、Wismettac Asian Foods社は、サルモネラ汚染の可能性があるとしてキクラゲの回収を開始した。

【イギリス】食品由来疾患の被害推定の英国の方法と他国の方法の比較

 英国食品基準庁(UK FSA: Food Standards Agency, UK)は、各国で食品由来感染性胃腸疾患(IID)実被害の推定に用いられるさまざまな方法について系統的文献レビューを行い、異なる方法により推定された食品由来疾患患者数が国家間で相互比較可能であるかについて検証した結果などを発表した。

 主な結果は以下の通りである。

  • 感染性胃腸疾患(IID)および食品由来疾患(FBD)の実被害推定を行っている研究は、主に、後ろ向き横断研究、前向きコホート研究、サーベイランスピラミッド研究の3つのカテゴリーに分類される。研究に用いられる調査方法は国家間で異なり、また同一国内でもさまざまであった。これにより、各研究間の比較および解釈が困難になっている。
  • 後ろ向き横断研究が最も一般的に行われる研究であった。これらの調査では、全人口の代表性のある標本として選ばれた一定数の住民に連絡が取られ、最近の症状について質問が行われる。自己申告情報から得られたIID罹患率は0.31〜1.4回/人・年であった。しかし、症例定義、遡り期間、集団標本の代表性などの研究デザインの違いが罹患率に影響している可能性がある。したがって、異なる研究間で罹患率を比較することは困難な場合がある。
  • 前向きコホート研究では、調査に先立ち対象集団を抽出する必要がある。さらに、調査対象者は下痢や嘔吐の症状が見られたかどうか毎週報告する必要がある。このような研究の大多数においては、具体的な疾患名を特定できるように、症状を報告する調査対象者が微生物学的検査のための便検体を提出する。前向きコホート研究は実施費用が高額なため、実施件数はわずかである。しかし、症状が見られる患者から病因を同定するための検体が得られるため、サーベイランスピラミッド研究や横断研究と比較すると、前向きコホート研究はIIDの罹患率を最も正確に推定できる方法である。
  • 英国の第1回IID調査(IID1)および第2回IID調査(IID2)は、同一国内で同一方法を用いて異なる時期に反復実施された唯一の前向きコホート研究である。したがって、病原体特異的な推定値が経時的に比較できる研究はこれら2件の研究のみである。
  • サーベイランスピラミッド研究は、食品由来疾患の全体的な実被害を算出するために未確認率および未報告率の程度を推定する研究である。しかし、使用されるモデル(乗数など)は国によって異なる。各病原体による実被害は国によって異なる可能性があるため、特定の国のモデルを他国に適用する場合は注意が必要である。食品由来IIDの推定値の計算は、サーベイランスシステムを介して集められた、検査機関で確定された患者データから導き出されるため、各国内のサーベイランスシステムの質および得られたデータの代表性も考慮されるべきである。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.03(2021.02.03)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2021/foodinfo202103m.pdf

今号の目次

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. キクラゲに関連して複数州にわたり発生したサルモネラ(Salmonella Stanley)感染アウトブレイク(最終更新)

【カナダ公衆衛生局(PHAC)】
1. 公衆衛生通知:イヌ用餌の豚耳との接触に関連して発生したサルモネラ(Salmonella Typhimurium)感染アウトブレイク(最終更新)

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and Feed)

【欧州疾病予防管理センター(ECDC)】
1. 欧州疾病予防管理センター(ECDC)の2019年次報告書

【欧州食品安全機関(EFSA)】
1. 食品ラベルに記載される期限表示および関連情報に関するガイダンス:パート1(期限表示)

【Eurosurveillance】
1. ヒトのカンピロバクター症の多座塩基配列タイピング(MLST)法を利用した感染源特定に関する系統的文献レビュー

【英国食品基準庁(UK FSA)】
1. 食品由来疾患の被害推定に使用される英国の方法と他国の方法との相互比較

【アイルランド食品安全局(FSAI)】
1. 食品事業者のための新しい食品ラベル表示情報システム

【オーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ)】
1. 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)と食品安全
2. 食品および食品包装を介した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の伝播