国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(化学物質)No.26(2020.12.23)を発表した。
注目記事
【FDA】FDAはヒト食品用、治療目的の可能性の両方で、家畜ブタ系統の意図的ゲノム改変をこの種のものでは初めて認める
米国食品医薬品局(FDA)が、GalSafeブタという家畜ブタ系統に含まれる意図的ゲノム改変(IGA)を認可した。これは、ヒト向けの食品用と治療目的の可能性の両方の利用についてFDAが認めた最初の動物IGAとなる。GalSafeブタのIGA(pPL657rDNA構成)は、細胞上のα-gal(ガラクトースα-1,3-ガラクトース)を除くことを意図している。アルファガル(α-gal)症候群は、赤肉(例:牛肉、豚肉、羊肉)のα-galに軽度から重度のアレルギー反応を起こす可能性がある。
※ポイント:米国FDAは、Veterinary Innovation Program(VIP)のもと、企業による革新的な動物バイオ技術製品の研究・開発を推進しています。GalSafeブタの開発者もVIP参加企業で、他社によるさらなる開発についても期待している様子がうかがえます。
今回の発表で注意しておきたいことが2つあります。1つは、FDAが認可したのはGalSafeブタそのものではなく、それに含まれるIGAであること。もう1つは、医療用製品への利用については、素材としての可能性を認めているのみで、実際に製品を製造販売する場合には別途FDAの評価と認可が必要だということです。ちなみに、GalSafeブタはアイオワ州の1施設で厳しい飼育条件下で年間1,000頭未満が生産される予定のようです。
【ANSES】フードサプリメントのチュワブルヘアビタミン®摂取後の重症急性肝炎
英国を拠点とする企業HairBurstが販売するチュワブルヘアビタミン®は、健康的な髪を維持するために使用されるチューインガム形状のフードサプリメントである。フランス食品・環境・労働衛生安全庁(ANSES)は2019年にニュートリビジランス計画の一環として、このフードサプリメント摂取に関連する可能性の高い命に関わる2例の急性肝炎の報告を受けた。29歳と36歳のどちらの女性も入院し、うち1例は緊急肝臓移植が必要であった。両者とも経口避妊薬を使用していた。
※ポイント:原因としては、多くの成分の複合的な作用や、患者が服用していた経口避妊薬との相互作用など、いくつかの可能性が指摘されています。フードサプリメントと健康被害との因果関係を証明するのはとても難しいのですが、今回の被害事例については、因果関係のある可能性が非常に高い(very likely)と結論しています。
【ANSES】装飾用植物-飲み込むとヒトや動物にとって有害
冬のホリデーシーズンになると、セイヨウヒイラギ、ヤドリギ、ポインセチアが家や庭、ケーキの装飾に使われる。だが、その実や葉を子供や動物(ペット)が飲み込むと中毒を起こし、量によっては症状が重症になる可能性がある。たとえば、ポインセチアの葉を子供が口にすると軽度の消化器症状を起こす可能性がある。一方ペットの場合は、数枚の葉や茎を咬むと消化器症状や唾液の過剰分泌などのより深刻な症状を起こす可能性がある。
【ご挨拶】来年も海外の食品安全情報をご紹介しますので、どうぞ宜しくお願い申し上げます。コロナ禍で例年とは異なる年越しになりますが、皆さま、よいお年をお迎えください。
(安全情報部第三室)
食品安全情報へのリンク
- 食品安全情報
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
- 食品安全情報(化学物質)No.26(2020.12.23)
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2020/foodinfo202026c.pdf
今号の目次
【WHO】
1. WHOは世界の主要な死亡と障害の原因を明らかにする:2000-2019
2. 国際がん研究機関(IARC)
3. 行動を求める:インフォデミックを管理する宣言
【FAO】
1. Codex
【EC】
1. EUの食品供給と食料安全保障:危機管理計画
2. ユーロバロメーター
3. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)
【EFSA】
1. ハンガリー全国食品摂取調査
2. ホエイタンパク質濃縮物由来でDanone Trading ELN B.V.社が加水分解タンパク質から製造した乳児用及びフォローアップミルクに使用される特定のタンパク質加水分解物の栄養の安全性と適合性
3. 食品酵素関連
4. 農薬関連
5. 飼料添加物関連
【FSS】
1. 祭日用食品犯罪:注意すべきこと
【BfR】
1. 田畑から遙か遠くまで:植物保護製品のスプレードリフトによる有害健康影響はありそうにない
2. チア、ゴジ等-スーパーフードが約半分の人々の健康的食生活の一部
3. 陶磁器:BfRは鉛とカドミウムの溶出を減らすよう薦める
【RIVM】
1. REACH認可要求の解析:6価クロム代用物の一覧表
【ANSES】
1. フードサプリメントのチュワブルヘアビタミン®摂取後の重症急性肝炎
2. タバコと電子タバコ製品:ANSESはフランスで販売されている製品の前例のない概要を発表
3. フランスのブタクサ:コストと健康影響と対応提案
4. 偽造抗寄生虫首輪がインターネットで販売されていた
5. 装飾用植物-飲み込むとヒトや動物に有害
【FSAI】
1. 食品安全優先研究
2. リコール情報
【Ruokavirasto】
1. 竹の繊維や未承認植物繊維を含むプラスチック食品接触物質の輸入あるいは販売は認められていない
【Tukes】
1. 殺鼠剤はペットに有害
【FDA】
1. FDAは動物用食品添加物請願及びGRAS通知のレビュー過程を改善し、迅速にするためのガイダンスを最終化する
2. FDAは動物用製品の輸出に役立つ新たなオンラインポータルを開始する
3. FDAはヒト食品用、治療目的の可能性の両方で、家畜ブタ系統の意図的ゲノム改変をこの種のものでは初めて認める
4. FDAは冷凍チェリーパイの同定基準の取り下げを提案
5. FDAは食品表示における塩化カリウムの代替名の使用に関する最終ガイダンスを発表
6. FDAは食品トレーサビリティ規則案と情報収集条項についての意見募集期間を延長
7. 警告文書
【USDA】
1. 請願
【NIH】
1. The Scoop 消費者向けニュースレター2020秋:ボタニカルダイエタリーサプリメント
【FTC】
1. FTCは詐欺的に宣伝されているCBD製品の取り締まりを発表
【CFIA】
1. カナダ政府は蜂蜜及びその他の製品の食品詐欺からカナダ市民を保護する
2. 食品検査報告
【FSANZ】
1. 食品基準通知
【TGA】
1. 低用量カンナビジオールの店頭販売入手
【MPI】
1. 更新された食品安全ガイドは妊娠女性がより確実により広範な食品の選択できるようにする
【香港政府ニュース】
1. 食事のナトリウムと砂糖の削減
2. CFSは食べられない又は有毒なキノコの種類が混入している疑いのあるヤマドリタケを消費しないよう市民に注意を呼び掛ける
3. 違反情報
【SFA】
1. 食品安全教育:抗菌剤耐性
2. 殻付き卵のナイカルバジンの最大残留基準値を設定
【HSA】
1. 消費者が「Queenz Mango Xsliim」を使用後に有害影響を経験-HSAの検査で禁止物質シブトラミンと下剤を含む
【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・(ProMED-mail)原因不明の疾患-インド(第6報):(アンドラプラデシ)有機塩素殺虫剤疑い、情報求む
・(ProMED-mail)原因不明の疾患-インド(第7報):(アンドラプラデシ)致死、調査継続