明治23年に開業した初代の帝国ホテル(画・藤原カムイ)
洋酒文化の歴史的考察

X 帝国ホテルのマウント・フジ(12)

富士屋ホテルの専務取締役山口正造が、失火直後の帝国ホテルの支配人として呼ばれて着任した10カ月間の間に、世界一周旅行団が日本にやって来ることになった。その歓迎式典のためにマウント・フジを考案したのが、東亜ホテル(神戸)から来たチーフ大阪登章であったはず、というのが前回までである。問題はこの後だ。 考案者と発祥地が分かれた結果  山口はウォルドルフ・アストリア(The Waldorf-Astoria […]
ステージ風景
小売・外食

「Tokyoインターナショナル・バーショー2013」レポート(3)

さて、今回もアジア各地から熱心なバーテンダーがTokyo International BarShow 2013(以下TIBS2013)に来場していた。今回は台湾からやってきたバーテンダー二人組を見つけて声を掛けた。 日本のバーテンディングは“プロフェッショナル”  震災の際にはアメリカに次ぐ巨額の義捐金を日本に送ってくれた台湾だが、人々の年収は日本と比較して高いわけではない。日本の平均年収が409 […]
明治23年に開業した初代の帝国ホテル(画・藤原カムイ)
洋酒文化の歴史的考察

X 帝国ホテルのマウント・フジ(11)

筆者がこの十年余にわたって帝国ホテル版マウント・フジの謎に挑む過程でまとめてきた「帝国ホテルバーテンダーの系譜」をお目にかける。基本的な資料は今から半世紀以上前の日本バーテンダー協会会誌「ドリンクス」だが、これにさまざまな資料で見つけた事実を加えている。 帝国ホテルの戦前の歴代バーテンダー  最も古い記録として残っている帝国ホテルのバーテンダーは、1959年に5人目のミスター・バーテンダー(※)と […]
ステージ風景
小売・外食

「Tokyoインターナショナル・バーショー2013」レポート(2)

次に話を聞いたのは、これも最近世界のトレンドになっているマイクロ・ディスティラリーのブームを先取りした感のある、「イチローズ・モルト」で有名なベンチャーウイスキー(埼玉県秩父市)の肥土伊知郎(あくと・いちろう)社長である。 「イチローズ・モルト」のジョーカーはいつ?  日本のウイスキー・メーカーと言えば、サントリーとニッカ、これに続いてキリンと本坊酒造(鹿児島・「マルスウイスキー」)というのがあら […]
ステージ風景
小売・外食

「Tokyoインターナショナル・バーショー2013」レポート(1)

さる4月20日と21日、ベルサール渋谷ガーデンにおいてTokyo International BarShow 2013(以下TIBS2013)が開催された。37社134ブランドが結集した会場には2日間で8300人の観客が訪れ、日本最大のスピリッツ・イベントを楽しんだ。2000年にわずか600名でスタートしてから12年が経過し、2日目の雨天のなか長い行列が出来る情景には、まさに隔世の感があった。 バ […]
明治23年に開業した初代の帝国ホテル(画・藤原カムイ)
洋酒文化の歴史的考察

X 帝国ホテルのマウント・フジ(10)

 明治7(1874)年、アメリカ西海岸のヴァレーホ(Vallejo)から横浜にバーテンダーがやって来た。英字紙によれば2つのホテルに1人ずつ別々のバーテンダーが来たことになっているのだが、掲載されたイラストを見る限りこの2人は同一人物の可能性が高い(「横浜・カクテルことはじめ」(4)明治7年横浜のフレア・バーテンディング参照)。 帝国で考案し富士屋へ持ち帰った  このカラクリは、電信のない時代に、 […]
明治23年に開業した初代の帝国ホテル(画・藤原カムイ)
洋酒文化の歴史的考察

X 帝国ホテルのマウント・フジ(9)

伝えられるところでは、犬丸もまた鼻っ柱が強い性格だったようで学生時代に大学とぶつかっており、長春には犬丸が恩師の紹介で入ったとも伝えられる。それにしても、人に頭を下げることが苦手だったと言われる犬丸にふさわしい仕事は他にあったようにも思うのだが、よりはっきりした資料も持ち合わせていない筆者としては、犬丸は東京高商を卒業後、長春ヤマトホテルに入社したという事実だけを受け入れるより他ない。 ホテルマン […]
外食産業市場動向調査

4月の外食市場は前年並みに推移

日本フードサービス協会(JF)は2013年4月外食産業市場動向調査を発表した。 全体の合計では、客単価が2.3%とやや低下し、客数は2.0%と微増、売上高は前年並みという結果となった。好調さを見せたのは、麺類ファストフード、和風ファストフード、焼き肉。 JFでは、「前年より休日数が1日少なく、また、第1週の週末には “爆弾低気圧”が日本の広い範囲に暴風や大雨をもたらし、FRや持ち帰り米飯・回転寿司 […]
明治23年に開業した初代の帝国ホテル(画・藤原カムイ)
洋酒文化の歴史的考察

X 帝国ホテルのマウント・フジ(8)

筆者の手元に、富士屋ホテルとカクテルのかかわりを示す興味深い資料がある。「回顧六十年」(富士屋ホテル・昭和13年刊、山口堅吉著)の資料編にある明治40(1907)年頃、つまり富士屋ホテルの経営が仙之助から正造に替わった頃のワインリスト(ドリンクメニュー)で、ここには「ジン・カクテル」「ウイスキー・カクテル」とはっきり記載されている。 二度のアメリカのホテル事情視察  筆者が所有しているさまざまなワ […]
恢復するチェーン

「someday――いつか」という日は来ない(4)

(7)前向きの危機感  閉塞感に満ちているからこそ、今は何事につけ前向きに取り組むべきだ。しかし、会社の規模を問わず企業の正規社員である人々を見ていると、「そんな社会と私は関係ない」と考えているように見えることが多い。変化せず、むしろ変化を求めない人の方が多数であるように感じるのである。  そういう人でも、いろいろな情報を取り、よく学んでいるのである。学びにかけては、零細企業とくに凋落の過程にある […]
明治23年に開業した初代の帝国ホテル(画・藤原カムイ)
洋酒文化の歴史的考察

X 帝国ホテルのマウント・フジ(7)

金谷カテージ・インの創業からややあって明治11(1878)年、箱根・宮の下に開業した富士屋ホテルは、そのルーツを元治元(1864)年に開業した外国人向けの娯楽施設「神風楼」(横浜)に辿ることができる。富士屋ホテルの初代山口仙之助は明治18(1885)年の改築でホテル内に酒場(バー)を設けた他、当時はまだぜいたく品だったガラスを多用して採光に意を使ったラウンジを作るなど進取の気象に富んだサービスが外 […]
恢復するチェーン

「someday――いつか」という日は来ない(3)

(5)胆識  経営者にとくに求められているのは、「Someday」のタイミングを見極め、迅速に行動として起こすに必要な「胆識」である。  思想家の安岡正篤は、実務家に必要な三識というものを挙げている。一つは「知識」で、単に知っているというもの。次が「見識」で、これは知識に経験と学問が積まれて生まれるもの。物事の本質を見通す力や判断力が備わったものだと言えるだろう。そして、それに実行力が備わって「胆 […]