ピスタチオクリームの食中毒

No.13(2025.06.25)

emekブランドのピスタチオクリーム(CDC)

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。米国2州で発生したサルモネラ感染アウトブレイクの原因が特定ブランドの一部ロットのピスタチオクリームと特定され、調査が継続されている。

注目記事

【国際機関】「世界手指衛生デー」で命を守る基本の行動を推進

 手指の衛生は、医療機関での感染症対策および抗菌剤耐性を阻止するための対策として最も効果的かつ費用効率の高い方法の1つである。2025年の「世界手指衛生デー」(毎年5月5日)において、汎アメリカ保健機構(PAHO: Pan American Health Organization)は、特に血液や体液に曝露する可能性がある状況下などでの感染拡大防止策として、医療用手袋の使用は重要な役割を果たすものの、手指の衛生管理の適時の実践に代わるものではないことを強調した。

 2025年のスローガンは「It might be gloves. It’s always hand hygiene.」(手袋は必要でない場合もある。手指の衛生は常に必要である)で、手袋の不必要な使用とその結果生じる資源の浪費が環境に及ぼす影響について注意を喚起した。

 世界保健機関(WHO)が作成した世界の感染症の予防と管理に関する2024年の報告書「Global Report on Infection Prevention and Control2024」によると、WHO地域分類の米州では、2023〜2024年の調査に参加した20カ国のうち17カ国において、全国を対象とした感染症予防管理(IPC:infection prevention and control)プログラムが実施されている。手指の衛生管理の遵守に関しては、15カ国が国の主要な指標として設定しており、2021〜2022年の調査時から増加した。しかし、米州地域の医療機関での「水・衛生設備・清潔な環境」(WASH)の提供の利用可能性については、依然として各国間で格差が見られた。

【米国】ピスタチオクリームに関連のサルモネラ

 米国疾病予防管理センター(US CDC: Centers for Disease Control and Prevention)、ミネソタ州およびニュージャージー州の公衆衛生・食品規制当局および米国食品医薬品局(US FDA)は、これらの2州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Oranienburg)感染アウトブレイクを調査するためさまざまなデータを収集している。

 疫学調査および検査機関での検査によるデータは、emekブランドのピスタチオクリームの一部のロットがS. Oranienburgに汚染され、本アウトブレイクの感染源となっていることを示している。他のロットや製品が本件に関連しているかどうか確認するため調査は継続されている。

 ミネソタ州農務局(MDA)は、患者が食事をしたと報告した飲食店からピスタチオクリームの検体を採取し検査を行った。WGS解析の結果、このピスタチオクリーム検体から分離されたサルモネラ株が患者由来株と近縁であることが示され、当該ピスタチオクリームが本アウトブレイクの原因食品であることが確認された。

 本アウトブレイク調査はまだ継続中であるため、emekブランドのピスタチオクリームを購入した小売業者・飲食店・流通業者は、当該ピスタチオクリームの一部のロットの製品(製造コードが241019、消費期限が2026年10月19日)を販売・提供・出荷すべきでない。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

目次

【汎アメリカ保健機構(PAHO)】

1. 2025年「世界手指衛生デー」:命を守る基本の行動

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】

1. 鶏肉入りアルフレッドソースのフェットチーネ製品に関連して複数州にわたり発生しているリステリア(Listeria monocytogenes)感染アウトブレイク(2025年6月18日付初発情報)

2. ピスタチオクリームに関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Oranienburg)感染アウトブレイク(2025年6月13日付初発情報)

3. 卵に関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Enteritidis)感染アウトブレイク(2025年6月6日付初発情報)

4. 小規模飼育の家禽類に関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella MbandakaおよびS. Enteritidis)感染アウトブレイク(2025年5月29日付更新情報)

【カナダ公衆衛生局(PHAC)】

1. 公衆衛生通知:REAブランドおよびBONAブランドのサラミ製品に関連して発生しているサルモネラ(Salmonella I4,[5],12:i:-)感染アウトブレイク(2025年6月11日付初発情報)

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】

1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and Feed)

【ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)】

1. 有益な細菌と有害な細菌:食品中で微生物がどのような働きをするか-ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)が食品微生物学に関する学術会議を3日間にわたり開催(2025年4月1〜3日、ベルリン)

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.13(2025.06.25)
https://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2025/foodinfo202513m.pdf