明治23年に開業した初代の帝国ホテル(画・藤原カムイ)
洋酒文化の歴史的考察

X 帝国ホテルのマウント・フジ(6)

改めて調べてみると、富士屋ホテルは旅行など滅多にしない筆者が思い込んでいたような“どこの温泉地にもあるご当地ホテル”などではなかった。明治11(1878)年創業の後も、外国人向けのリゾートホテルとしてさまざまな新機軸を打ち出している。また、立教大学に観光学部が発足したのは、3代目オーナー山口正造の遺志による寄付講座からだという。 どちらかが盗用というのはあり得ない  これほど品格のあるホテルが帝国 […]
明治23年に開業した初代の帝国ホテル(画・藤原カムイ)
洋酒文化の歴史的考察

X 帝国ホテルのマウント・フジ(5)

さて、目先を変えて帝国ホテル版マウント・フジのレシピから探索を続けよう。 クリームとレモンジュース  ミキシング・グラスに氷とベルモットを入れて掻き回し、ジンを加えたものをカクテルグラスに注いでオリーブを一粒浮かべさえすれば、味の善し悪しはともかく、マティーニは出来る。ウイスキーにベルモットを注いでチェリーを飾ればマンハッタンと呼べるカクテルも出来ないことはない。必要なものは洋酒と氷である。  と […]
明治23年に開業した初代の帝国ホテル(画・藤原カムイ)
洋酒文化の歴史的考察

X 帝国ホテルのマウント・フジ(4)

大正時代に世界一周旅行が企画できる旅行会社は、トーマス・クックとアメリカン・エクスプレスの2社を中心に、レーモンド・ウィトコム(ホイットカム)社、クラーク社を含めても4社に過ぎなかった。 大正13年の世界一周旅行団の記録はあるが  当時の通信手段は電信である。世界中の港や観光地に電信一本で人数分の宿泊先と食事を手配し、受け入れ態勢を準備させるわけだから、そこでは信用と実績がものを言う。たとえ資本力 […]
恢復するチェーン

「someday――いつか」という日は来ない(1)

(1)There is no someday. 「いつの日にか、きっと、きっとやってみたい。そういつの日にか……」――誰でも、そう思うことはある。  では、ここに中学一年生でも読める英文があるが、これをどう思われるだろうか。 Someday, I’ll do it someday. Monday, Tuesday, Wednesday, Thursday, Friday, Saturd […]
価格競争からの脱却
恢復するチェーン

改めて「価格競争からの脱却」を目指して(7)価格競争から脱却する12カ条

筆者が社長在任中のハーレーダビッドソンジャパンの成功は、ハーレーというブランドが先に出来ていたからと考える向きもあるが、現実には日本国内でハーレーダビッドソンのブランドはずたずただった。 日本のハーレーにブランド価値はなかった  当時のハーレーダビッドソンは、どこで買えるのか、いくらで買えるのか、どこで修理できるのかはわからず、実際に乗っているのはオートバイ文化とは一線を画す中高年男性のみであり、 […]
価格競争からの脱却
恢復するチェーン

改めて「価格競争からの脱却」を目指して(6)イベントがブランドの歴史を創る

イベントの場においては、Human to Human/Heart to Heart/Hiza to Hiza(膝と膝)の“3H to 3H”コミュニケーションが起こるように計画・実行し、このブランドならではのコミュニティ=絆を形成する。 安っぽいイベントは意味がない  このように、現実の世界で抽象的なブランドの世界を具象化して実現する“コト”を提供していくことができれば、既存メディアに依存すること […]
価格競争からの脱却
恢復するチェーン

改めて「価格競争からの脱却」を目指して(5)モノではなくコトが価値を生む

顧客は物品を買うとき、その商品の物質的な価値、すなわち価格という形で万人と共有される価値だけではなく、“自分自身(だけ)にとっての価値”がある商品とそれにふさわしい販売のあり方を求めている。 価値は販売の前後のプロセスで生み出される  したがって、消費者・生活者がいつでもどのような場合でも、価格だけを選択購買の判断基準にしているわけではない。とくに高額な商品では顕著である。  そのため、行政や産業 […]
ハラペーニョ・マルガリータを作れる「ハラペーニョ・サングリータ」キット。
小売・外食

バーテンダー諸兄に贈るFOODEX JAPAN 2013洋酒レポート(5)

ブラジルのカシャーサ  今回、話がいちばん面白かったのはブラジルの地酒カシャーサを出しているブースだった。筆者は以前自動車工場で働いていたことがあるのだが、食習慣がかなり違う日系の方と接して驚いたというのが、ブラジルを知るきっかけだった。酢豚など甘いおかずには「食べられない」と言って箸を置くのに、食後のコーヒーには山盛り3倍の砂糖を入れる。ご飯を炊くときニンニクを入れる……と、食べ物でもかなり日本 […]
モーリシャスのプレミアム・ラム「Blue Mauritius」。
小売・外食

バーテンダー諸兄に贈るFOODEX JAPAN 2013洋酒レポート(4)

プレミアム・ピスコ  この辺で去年のレポートの“その後”もいくつか知れて来たのでお知らせしておこう。  まず、ペルー産グレープブランデーのプレミアム・ピスコ(バーテンダー諸兄に贈るFOODEX JAPAN 2012洋酒レポート10(2)参照)について。  筆者は「ピスコ」という音感に、ついつい荒涼としたアンデス山脈を飛ぶ鳥と、栄華を極めながら悲劇で幕を閉じたインカ帝国……というイメージを持つのだが […]
バーチ(白樺)ウォッカ飲み較べ。左がNemiroff社製「バーチ」、右がOmskvinprom蒸留所の「ホワイトバーチ」。
小売・外食

バーテンダー諸兄に贈るFOODEX JAPAN 2013洋酒レポート(3)

白樺ウォッカ「ホワイトバーチ」  昨年はネミロフ社の白樺ウォッカ「バーチ」(白樺)を取り上げたが(参照)、今回はシベリアの蒸溜所で作られた白樺ウォッカを会場で見つけた。多くのロシア人にとってシベリアは心の故郷であり、白樺はロシアを象徴する木だからまさに「ロシア人による、ロシア人のためのウォッカ」と言っても過言ではないと思う。  ウォッカで味の決め手になるのは原料となる穀物もさることながら、水と隠し […]
価格競争からの脱却
恢復するチェーン

改めて「価格競争からの脱却」を目指して(4)海外進出を契機にビジネスを再構築する

新興国の強みを直視すれば、彼らと同じ土俵で闘っても無駄だということは容易に理解できる。したがって、日本が不況から脱出し、再び経済的強さを持とうとするならば、従来型の産業を改良改善しても無駄である。そうではなく、産業構造の変革が必要である。これを忘れるわけにはいかない。 チェーンストアを日本発の世界商品に  その産業構造の変革とは、新興国にはまだないものである。すなわち、持続性があり、独自性のある高 […]