農水省解体の具体案が固まる

農林水産省本省庁舎=中央合同庁舎第1号館
農林水産省本省庁舎=中央合同庁舎第1号館(Lover of Romance 撮影/from Wikimedia Commons

超党派の国会議員で構成する「省庁編成の適正化を考える議員連盟」は、諮問していた「行政機関設計研究所」の答申を受けて、農林水産省解体を実施する諸法案を今国会に提出する。

事業・事務を各省庁に分散

農林水産省本省庁舎=中央合同庁舎第1号館
農林水産省本省庁舎=中央合同庁舎第1号館(Lover of Romance 撮影/from Wikimedia Commons)

かねて他の諸省庁との重複が問題視されていた事業・事務を他省庁へ整理・統合することで、行政の円滑化、不要不急の事業の予算化防止、人件費削減等のコストダウンを狙う。また、JA再編の加速と、“天下り先”とされる特殊法人との関係を断ち切る機会としても推進する。

具体的なプロセスとしては、まず食料産業局・生産局農産部穀物課を食糧庁として復活させた上で内閣府の外局とし、また林野庁を国土交通省の、水産庁を経済産業省の外局とする。

さらに、現農水省が所掌する諸事業・事務を他省庁に移管(表参照)し、それぞれ職員を転籍する。食品衛生関連は厚生労働省に、研究開発や知財関連は文部科学省になど。これまで農水省が監督してきた外食産業は、衛生行政では厚労省が監督するが、産業振興は経産省が担当する。中央競馬は財務省所管とする。

このプロセスを経て農水省を大臣、副大臣、政務官等の幹部と若干の事務職員による形式的な省まで縮小した上で残務処理を行い、最終的には省として廃止し大臣をはじめとする幹部ポストも廃止する。

ただし、すでに所掌する事業・事務が膨れ上がっている厚労省のさらなる肥大化を招くため、厚労省を医療行政、国民の健康増進と安全確保、労働を所掌する3省庁に分割する法案を同時に提出する。

《表に続いて各方面のコメントと重要情報

●農林水産省所掌事務の移管先案(行政機関設計研究所)

現所掌事務移管先
食料の安定供給の確保に関する政策内閣府
農林水産業に係る国土の総合開発及び国土調査国土交通省
農林水産業者の協同組織の発達経済産業省
所掌事務に係る一般消費者の利益の保護消費者庁
日本農林規格及び農林物資の品質に関する表示の基準経済産業省、消費者庁
飲食料品及び油脂経済産業省
卸売市場の整備及び中央卸売市場の監督経済産業省
農林水産物市場における取引及び商品投資の監督財務省
食品産業一般の発達、改善及び調整経済産業省
食品産業における資源の有効利用国土交通省
農林水産物の輸出入並びに関税及び国際協定経済産業省
農畜産物経済産業省
農林水産物の食品としての安全性の確保に関する事務のうち生産過程に係るもの厚生労働省
農作物の作付体系の合理化文部科学省
農林水産植物の品種登録文部科学省
家畜の改良及び増殖並びに取引文部科学省
農地の土壌の改良並びに汚染の防止及び除去環境省、復興庁
草地の整備国土交通省
病虫害の防除、家畜の衛生並びに輸出入に係る動植物及び畜産物の検疫厚生労働省、財務省
獣医師及び獣医療厚生労働省
肥料、農機具、農薬、飼料その他の農畜産業専用物品財務省
農業機械化の促進文部科学省、経済産業省
中央競馬及び地方競馬の監督及び助成財務省
農業経営の改善及び安定経済産業省
農業を担うべき者の確保廃止
農業労働厚生労働省
農業技術の改良・発達及び農林漁業従事者の生活に関する知識の普及交換文部科学省
農地制度国土交通省
農地の権利移動その他農地関係の調整国土交通省
農業構造の改善経済産業省
農業者年金厚生労働省
農業災害補償、森林保険並びに漁船損害等補償、漁船乗組員給与保険及び漁業災害補償金融庁
農林水産業及び食品産業の金融金融庁
株式会社日本政策金融公庫、農林中央金庫、農業信用基金協会、漁業信用基金協会及び農水産業協同組合貯金保険機構金融庁
農住組合国土交通省
農山漁村及び中山間地域等の振興経済産業省
豪雪地帯の雪害防除及び振興内閣府
農業振興地域整備計画国土交通省
農業生産条件に関する不利を補正するための支援経済産業省
土地、水その他の資源の農業上の利用の確保国土交通省
農地の転用国土交通省
農業水利国土交通省
交換分合国土交通省
土地改良事業国土交通省
農地の保全に係る海岸の管理国土交通省
農地の保全に係る地すべり及びぼた山の崩壊の防止事業国土交通省
農山漁村と都市との交流経済産業省
市民農園の整備の促進文部科学省
主要食糧の需給の調整内閣府
主要食糧の輸入に係る納付金の徴収財務省
主要食糧の価格財務省
輸入飼料の流通経済産業省
農産物検査法の規定による農産物の検査厚生労働省
森林資源国土交通省
林野の造林及び治水、林道の開設国土交通省
森林経営の監督及び助成国土交通省
保安林国土交通省
森林病害虫の駆除及び予防国土交通省
林野の保全に係る地すべり及びぼた山の崩壊の防止事業国土交通省
国土緑化の推進国土交通省
木材その他の林産物及び加工炭経済産業省
林業経営国土交通省
林業技術の改良・発達・普及交換および林業・木材産業改善資金文部科学省
林業構造の改善国土交通省
国有林野の管理経営国土交通省
水産資源の保存及び管理文部科学省
漁業の指導及び監督経済産業省
外国人が行う漁業及び水産動植物の採捕の規制海上保安庁
遠洋漁業及び沖合漁業に係る漁場経済産業省
沿岸漁業に係る漁場の保全及び持続的な養殖生産の確保経済産業省
栽培漁業経済産業省
遊漁船業海上保安庁
水産物経済産業省
水産業専用物品及び氷経済産業省
水産業経営経済産業省
水産技術の改良・発達・普及交換および沿岸漁業改善資金文部科学省
独立行政法人北方領土問題対策協会の行う資金の貸付け内閣府
沿岸漁業の構造改善経済産業省
漁船の建造、登録及び検査国土交通省
漁港国土交通省
漁港の区域に係る海岸の管理国土交通省
農林水産業に係る保護増殖事業環境省

全省庁合計で2万人のリストラ

最終的には現農水省の定員に相当する約2万人の人員削減を計画しているが、同議員連盟の旗振り役のある議員は「現農水省職員のクビ切りではない」と強調し、「仕事と人員をいったん全省庁に配分した上で、各省庁の判断で、国民の期待に応える意思と能力を持つみなさんを全省庁の全職員の中から選び直してもらうものと考えてほしい。とくに有能な現農水省職員諸氏の力はさらに効果的に発揮されることになるだろう」と説明する。

国会での審議については「反対に回る議員が少なくないことは想定しているが、最終的には多数の賛同を得て可決されるだろう。農家と農林水産関連業界にとっても、決して悪い話ではない」と自信を見せる。それは農水省がなくなっても各種の利権そのものがなくなるわけではないということかという質問には「そこは新しい組織体系の中で知恵を搾ってもらう」と回答を避けた。職員団体(民間の労働組合に相当)からの反対については「他省庁職員は反対しない。そもそも組織率から言って一顧だに値しない」と発言した直後に付近で罵声が上がり、衛視が駆けつける一幕があった。

「行政機関設計研究所」は、同議員連盟の主要メンバーが民間に呼びかけて設立したタスクフォースで、民間シンクタンク、中堅・中小の広告代理店、産学の識者で構成する。

各界のコメント

行政史に詳しい笠置秀雄教授「明治政府が設置した農商務省が大正期末に農林省と商工省に分割された。その後紆余曲折があるが、産業振興が再び一元化されることは国政でプラスに働くだろう」

コメ農家の桶田育氏「農林水産省がなくなったら、いったい誰が日本のコメを守るのか。コメが守られない農政など我々にとっては意味がない。こんなことが実現すれば、武闘派のコメ農家の出現を招くことは火を見るよりも明らかだ」

経産省職員T氏「農水省には地域振興について地方局時代からインフォーマルにタッグを組んできた仲間がいる。彼らといっしょに大手を振って仕事ができるのは楽しみだ」

農水省職員U氏「農地が宅地で高く売れるチャンスが増えるとかって喜ぶ人がいそうだなぁ。それが心配。でも、どうせこれ、ウソなんでしょ?」

《この記事はエイプリルフールの“ネタ”でした》

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