アニメーション映画の中の食べ物

「ルパン三世 カリオストロの城」(1979)。これがルパンの「ジェット機食い」
「ルパン三世 カリオストロの城」(1979)。これがルパンの「ジェット機食い」

セルアニメからCG、切り絵、人形を使った作品まで、アニメーション映画の中でも食べ物が印象的に使われている作品は数多い。今回はその中から3本の作品を選んで紹介する。

「白雪姫」のリンゴ

「白雪姫」(1937)。老婆に変身した継母にリンゴを勧められる白雪姫
「白雪姫」(1937)。老婆に変身した継母にリンゴを勧められる白雪姫

「白雪姫」(1937)は、ディズニーの長編アニメーション第1作であり、世界初のカラーアニメーション作品である。グリム兄弟の有名な童話を原作に、ディズニーが4年の歳月と170万ドルの製作費をかけた大作で、俳優の演技を実写で撮影したフィルムを1枚1枚トレースするロトスコープと呼ばれる手法の採用により、リアルな動きを実現している。

 ストーリーは説明するまでもないが、老婆に変身した継母の女王が、テクニカラーの色彩も鮮やかな真っ赤な毒リンゴを携えて森に住む7人の小人たちと暮らしていた白雪姫のもとを訪れるくだりは凝っている。言葉巧みに白雪姫に接近しリンゴを食べさせようとする老婆、動物たちから白雪姫の危機を知らされて仕事場から駆け付ける小人たち、これらの場面を交互にモンタージュ(編集)したクロス・カッティングと、リンゴを口にして床に倒れるまでの白雪姫をあえて写さないオフの手法が緊張感を盛り上げている。

 なお、同じ原作で今年「スノーホワイト」「白雪姫と鏡の女王」という2本の実写映画が相次いで公開されたが、前者はシャーリーズ・セロン、後者はジュリア・ロバーツが演じた継母に焦点を当てた内容となっている。

「霧につつまれたハリネズミ」の木イチゴの砂糖漬け

「霧につつまれたハリネズミ」(1975)。お茶を飲みながら星空を眺めるコグマとハリネズミ
「霧につつまれたハリネズミ」(1975)。お茶を飲みながら星空を眺めるコグマとハリネズミ

「霧につつまれたハリネズミ」は、ソビエト連邦時代のロシアで1975年に製作されたユーリ・ノルシュテイン監督による切り絵アニメーションで、ハリネズミのヨージックが親友のコグマの元へと向かう森の中での小さな冒険を描いている。

 ヨージックは小さな風呂敷包みを抱えていて、その中には木イチゴの砂糖漬けが入っている。それはコグマと一緒に星を数えながらお茶を飲む時に出そうと思って持ってきたのだが、フクロウやコウモリといった敵に襲われているうちに落としてしまい、森の中を探し回ることになる。

 森に立ち込める深い霧は、非常に細かく千切った紙片を動かしながら1コマ1コマ撮影することで表現されていて、映像に深みを与えている。たった10分の短編であるが、霧の中にたたずむ白馬などファンタジックなイメージで構成された映像詩とでも形容すべき傑作である。

「ルパン三世 カリオストロの城」のジェット機食い

「ルパン三世 カリオストロの城」(1979)。これがルパンの「ジェット機食い」
「ルパン三世 カリオストロの城」(1979)。これがルパンの「ジェット機食い」

「ルパン三世 カリオストロの城」は、モンキー・パンチ原作のTVアニメの劇場版第2弾として1979年に公開され、その年の大藤信郎賞(大藤賞)を受賞した他、雑誌「キネマ旬報」のオールタイムアニメーション映画の邦画部門で1位になるなど非常に評価の高い作品である。

 本作では舞台をヨーロッパの架空の小国カリオストロ公国に設定。TV第1シリーズ(1971~1972年)の一部のエピソードなどを下敷きに、ルパンたちが城に囚われたクラリス姫(過去にルパンは彼女に助けられたことがある)の救出作戦を通じて、国家ぐるみの偽札製造の陰謀や秘められた財宝などの謎を明らかにしていく過程を、アニメーションならではの動きの面白さで見せる第一級のエンターテイメント活劇である。

 TV第1シリーズからのスタッフである監督の宮崎駿は、この前年にNHKの連続テレビアニメ「未来少年コナン」を手がけており、そこでの経験が大いに生かされている。その一端が、ルパンの人間離れした運動能力である。愛車フィアット500を駆ったカーチェイスでのドライビングテクニックや、潜入した城塞の塔から塔へと三段跳びで飛び移る信じられないジャンプ力は、野生児コナンのそれに通じるものがある。

 そのエネルギーを支えているのが、彼の日々の食事である。それは携行食のカップうどんや、到着したカリオストロの町のレストランで相棒の次元大介と取り合いながら食べる大皿に盛られたミートボール入りのスパゲティ(絡まり合った謎の隠喩を超えた動きの面白さ!)であったりするのだが、とりわけ印象的なのが「ジェット機食い」だろう。

 最初のクラリス救出作戦で狙撃されて重傷を負い、3日後に目覚めたルパンが、再度の作戦に備えて腹ごしらえをする。骨付き肉やチーズの塊を大口を開けて胃袋に収めていくその豪快な食べっぷりは、「ジェット機も12時間もあれば直らあ!」というルパンのセリフから「ジェット機食い」としてファンに親しまれることになった。

 公開当時は興行成績の振るわなかった「カリ城」であるが、テレビ放映などを通じて徐々に人気が高まり、「風の谷のナウシカ」
(1984)や「天空の城ラピュタ」(1985)といった後の宮崎駿作品を生み出すスプリングボードとしての役割を果たした。

作品基本データ

【白雪姫】

「白雪姫」(1937)

原題:Snow White and Seven Dwarfs
製作国:アメリカ
製作年:1937年
日本公開年月日:1950年9月26日
製作会社:ウォルト・ディズニー・プロ
配給:RKO Radio Pictures、ブエナ・ビスタ
カラー/サイズ:カラー/スタンダード(1:1.37)
上映時間:83分

◆スタッフ
製作:ウォルト・ディズニー
原作:グリム兄弟
監督:デイヴィッド・ハンド
キャラクターデザイン:アルバート・ハーター、ジョー・グラント
音楽:フランク・チャーチル、レイ・ハーライン、ポール・スミス

【霧につつまれたハリネズミ】

ユーリ・ノルシュテイン作品集

原題:Ёжик в тумане
製作国:ソ連
製作年:1975年
公開年月日:2004年7月18日
製作会社:ソユーズムリト・フィルム
配給:ふゅーじょんぷろだくと、ラピュタ阿佐ヶ谷
カラー/サイズ:カラー/スタンダード
上映時間:10分

◆スタッフ
監督:ユーリー・ノルシュテイン
脚本:セルゲイ・コーズロフ
撮影:アレクサンドル・ジュコフスキー
音楽:M・メーロビッチ
その他:アレクセイ・バターロフ、マリヤ・ビノグラードワ

【ルパン三世 カリオストロの城】

「ルパン三世 カリオストロの城」(1979)

製作国:日本
製作年:1979年
公開年月日:1979年12月15日
製作会社:東京ムービー新社
配給:東宝
カラー/サイズ:カラー/スタンダード
上映時間:100分

◆スタッフ
監督:宮崎駿
原作:モンキー・パンチ
脚本:宮崎駿、山崎晴哉
製作:藤岡豊
作画監督:大塚康生
撮影:高橋宏固
美術:小林七郎
音楽:大野雄二
録音:加藤敏

◆キャスト(声の出演)
ルパン三世:山田康雄
峰不二子:増山江威子
次元大介:小林清志
石川五右エ門:井上真樹夫
銭形警部:納谷悟朗
クラリス:島本須美
カリオストロ伯爵:石田太郎
ジョドー:永井一郎

(参考文献:キネマ旬報映画データベース)

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映画ウォッチャー 埼玉県出身。子供のころからSF映画が好きで、高校時代にキューブリックの「2001年宇宙の旅」を観たところ、モノリスに遭遇したサルの如く芸術映画に目覚め、国・ジャンルを問わない“雑食系映画ファン”となる。20~30代の一般に“青春”と呼ばれる貴重な時をTV・映画撮影現場の小道具係として捧げるが、「映画は見ているうちが天国、作るのは地獄」という現実を嫌というほど思い知らされ、食関連分野の月刊誌の編集者に転向。現在は各種出版物やITメディアを制作する会社で働きながら年間鑑賞本数1,000本以上という“映画中毒生活”を続ける“ダメ中年”である。第5回・第7回・第8回の計3回、キネマ旬報社主催の映画検定1級試験に合格。第5回・第6回の田辺・弁慶映画祭の映画検定審査員も務めた。