ぎゅぎゅっと詰まった洋食の宝箱!「IKOBU」(東京・飯田橋)

「洋食弁当」(1260円)
ずっと食べたかった「洋食弁当」(1260円)
東京大神宮に上る道
東京大神宮に上る道の脇に、かつて見慣れた看板を発見

梅雨に入って、雨よりどんどん暑さが増してきた感があります。夏に近づいているのでしょうね。こういう日が続くと、自転車に乗っていても歩いていても、日射病対策は欠かせません。小まめに水分を取り、自転車通勤は、朝早く出るなど工夫しながら、乗り切りましょう。

失われた名店が目の前に……

 社会人になって初めて入った会社は神楽坂の小さな出版社で、会社の周りに歴史を感じさせる店や、古くからの食べ物屋さんが点在していた。そのお店の一つ一つに出入りし、顔を覚えてもらい、少しずつ馴染になっていくのが、大人になっていくような気がした。

「IKOBU」もそんなお店の一つで、名うての編集者や作家が、秘かに愛し、通い続けてきた洋食店だった。昼には近所の勤め人用のセットを中心にしたランチ、夜にはその日のオススメを中心としたアラカルト。名物店長の独特のやわらかい接客と相まって、ファンが多かった。

 某作家や、文章が達者で雑誌連載をしていたミュージシャンは、打ち合せが終って「IKOBU」へ行くのを楽しみにしていて、彼らがアラカルトを並べながらゆっくりワインを傾ける様子をよく垣間見ていた。

  • 「IKOBU」外観
    それは間違いなく、あの「IKOBU」だった
  • 「IKOBU」店内
    通った店とは違ってもやはり懐かしい店内

 そんな優良店も年月には勝てなかったのか、2年前に突如、閉店してしまい、木の温かみのある建物も取り壊されてしまった。

 以前取り上げた「キッチンアオキ」さんなど、好きな洋食屋は少なくないけれど、たまに「ああ、「IKOBU」の洋食弁当食べたいなぁ……」などと考えるときがあった。

 そんなある日のこと、ランチをとろうと飯田橋界隈を歩いていたら、東京大神宮に上る道の脇に、見慣れたロゴが……そんなバカな、と思ってまじまじと見ると、それは、まさしく「IKOBU」だった!

 びっくりして入店し、注文しながら話を聞くと、そこには、驚くべき事情があったのだった。

 話を聞かせてくれた佐藤英樹店長によると、「『IKOBU』は神楽坂にあった天神町店だけでなく、この飯田橋の富士見店、そして水道橋駅の近くにある三崎町店があるんですよ。一番多い時には、江戸川橋や山吹町などにも、合計5軒あったんです」とのこと。

 いやー、びっくり。「IKOBU」って一店舗じゃなかったのだ。

 考えてみれば、姉妹店がある、という話もずいぶん前に聞いたような……。それでも、神楽坂のお店がなくなって、もう「IKOBU」はなくなったのだ、と勝手に思い込んでいた。

「IKOBU」富士見店の佐藤英樹店長
「IKOBU」富士見店の佐藤英樹店長

「すべての店舗共通の統一メニューがあったんですよ。それでも各店舗で、料理人の工夫次第でいろいろなバリエーションが出ますので……。天神町店は店長もユニークでしたからね(笑)」

 そもそも「IKOBU」は水道橋のお店から始まったらしい。そこから近隣の地域へと出店していったという。

「この飯田橋の富士見店も、出来てからもう40年以上経過してます。みんなそれぞれのお店で創意工夫しているんです」

 他の洋食屋もあるのに「IKOBU」の味は独特。一度食べたら、忘れられない。

「もともと、『IKOBU』の味を決めていたのは常務だった古手の社員で、その味のベースがフレンチなんです。だから、ほかの洋食洋食してるお店とは、ちょっと違うと思います」

 なるほど、納得。

食べたかったこの洋食弁当

「洋食弁当」(1260円)
ずっと食べたかった「洋食弁当」(1260円)

 早速、ずっと食べたかった「洋食弁当」(1260円)をお願いする。

 これは、ランチのラインナップにおいて、日替わりではなく、常に提供している“ぎゅぎゅっと詰まった洋食の宝箱”なのだ。

 まず、器がいいではないか。

 つやつやの白いお米に梅干しがニクい。そして、そろえられているおかずの豪華さといったら……。ただただうれしくなってしまう。

 ジューシーでデミグラスソースがステキなハンバーグ、唐揚げ、ものすごくクリーミーなカニクリームコロッケ、手が込んだ生姜焼き、大きなエビフライなど、もう大好きなものが満載。いつも、どれから食べようか迷ったものだった……。この内容で1000円ちょいというのは、相当にCP(コストパフォーマンス)が高いと思うのだが。

 さて、意を決して「いっただっきまーす!」の掛け声とともに、箸を伸ばす。

  • ハンバーグ
    ハンバーグ
  • カニクリームコロッケ
    カニクリームコロッケ
  • 生姜焼き
    生姜焼き
  • エビフライ
    エビフライ

 まずは、ハンバーグ。ジューシーなお肉の焼き上がりのステキさとデミグラスソースの濃厚さ。それだけでご飯が何倍でも食べられそうなくらい夢中にさせてしまう。

 からりと揚げた鶏の唐揚げ、カニクリームコロッケの絶妙さ。箸で割るととろりと溶けて、それでいてすべて流れ出るような薄さではなく、しっかりした衣と相まって、素晴らしいごはんのお供に。

 そこへたくあんで口を休めつつ、生姜焼きへ。

 これ、単なる生姜焼きではなく、絡み合う具材を吟味して、食べた時にじんわりと旨みが溢れてくる生姜焼き。

 実に、実に、ご飯に合う!

 そしておもむろに、エビフライへ向かう。中身がぶりぶりで、コロモがカリリとほどよい薄さ。洋食のフライの底力を思い知ることに!これがまたご飯に合うのだ。

「うめ! うめ! 昔通りの味!」と感激しながら、がつがつ食らい込んでいくと、あっという間に食べ終わってしまった。

 これからも「IKOBU」に幸あれ!


●「IKOBU」富士見店

東京都千代田区飯田橋4-4-16
Tel.03-3237-0847
営業時間:11:00~14:45(L.O.)、17:00~22:00(L.O.)
定休日:日曜・祝日
ホームページ
http://ikobu.com/

上荻吾朗
About 上荻吾朗 40 Articles
編集者 かみおぎ・ごろう 1964年生まれ。北海道出身。週刊誌記者、漫画編集者を経て、WEB製作会社で勤務。震災後、通勤困難を経験して、メタボ対策のためにも、自転車通勤をするようになる。おいしいものを食べることが何より好きな健康チューネン。いかにも飲めそうなヒゲ面のくせに下戸。