大人のお子様ランチ!「キッチンアオキ」(東京・飯田橋)

「キッチンアオキ」(東京・飯田橋)
飯田橋の“ザ・洋食!”「キッチンアオキ」
  • 「キッチンアオキ」(東京・飯田橋)
    飯田橋の“ザ・洋食!”「キッチンアオキ」
  • 店内
    なつかしの洋食店そのものの店内
  • 入梅しましたね。北海道出身の自分は、人生の半分以上を東京で暮らしても、厚く垂れ込める雲の憂鬱さには慣れません。そんなときに救いになるのが、雨の合間の自転車通勤。雨さえなければ、暑くもなく寒くもないこの気候は絶好の自転車通勤日和。会社に着いたときのあたまが真っ白になる気持ちよさがサイコーです。

    46年変わらぬ味の“ザ・洋食!”

     忙しさが高じてくると、“視野狭窄”に陥って仕事のことばかり思い詰めたりしますね。こういうとき、ふと自由にしていい時間ができると、それはそれは、とても貴重な“恵みの時間”のような気がします。

     先日の夕方も、そんな感じでぽっかりと時間が空きました。そこで、やっぱり、ガッツリ、たっぷり、しっかりのご飯に頭が働くのが、食いしん坊の証拠。

     今回は、学生時代から通い、今でも、わが愛しの店として折に触れ訪れている飯田橋駅前の「キッチンアオキ」さんに向かいます。

     こちらは、飯田橋駅前に昔からある、“ザ・洋食屋さん”とも言えるお店。店主の青木秀雄さん(71)によると、同じ土地でお菓子屋さんを営んでいたお父上から土地を譲り受けて開店して、46年とか。「その頃、飯田橋駅前も、食べ物屋はウチとおそば屋さんっきゃなかったんだから」とのこと。紀尾井町の都道府県会館の地下にあるレストランで修業し、奥さんと結婚してこちらのお店を開いた。

    「紀尾井町じゃ半年間タダ働きさ。そのかわり、店ぇ開きたいから、全部教えてくれって頼んで修業したんだ」

     以来、46年。変わらない味とメニューで、周辺の熱い男たちの人気を、静かに、そして確実に集めている。

     お店の看板のキャラクターは、20年前の店舗改修の際に思い切ってデザイン会社に頼んで作ってもらったもの。飯田橋の駅を降りて横丁へ入り、あのかわいいコックさんの絵を見た途端に、グーッ、とおなかが鳴るファンも多いことだろう。

     ずっとお店を手伝ってくれている妹の美枝さん、そして、6年前から厨房に立っている息子の真太郎さん(35)と3人で切り盛りしている。

    「洋食弁当」の鉄壁の布陣

     ハンバーグ、フライ、カレー、ナポリタンと、看板メニューは変わらず。ファンは圧倒的に大人の男たちで、みな自分の大好きなメニューを黙々と、そしてうれしそうに食べている。

     ある年配の方は、いかにも慣れた風情で「カツカレー」(900円)と注文。別の席では、「ハンバーグスパゲティ」(980円)=“スパゲティナポリタン ハンバーグ添え”という超変化球メニュー。

    お店の魅力が結集した「洋食弁当」(1300円)
    お店の魅力が結集した「洋食弁当」(1300円)

     どれもおいしそうで、注文は悩んだけど、やっぱり、こちらの超看板にして“大人のお子様ランチ”たる「洋食弁当」(1300円)を注文する。

     内容は、

    カニコロッケ
    海老フライ×2
    ヒレカツ×2
    ミニハンバーグ
    冷奴
    ライス
    みそ汁

     という鉄壁の布陣。

     こちらに、「ポテトサラダ」(250円)を合わせてみる。

     もちろん、こちらのポテトサラダにはソースをかける。そして、ヒレカツと海老フライの1本にもしっかりソース。もう1本の海老フライはタルタルソースで食べるつもり。

    至福の“洋食イーターズ・ハイ”

    「本当においしい揚げ物やハンバーグは、トッピングされているキャベツのみじん切りが、まずおいしい」――自分は、そんなことを日頃考えているのだが、この言葉は、「キッチンアオキ」でもじゅうぶん有効。まず一口目に食べるキャベツのみじん切りがシャキシャキでひたすら新鮮で、うれしくなる。

     そしておもむろに、ヒレカツをがぶり、とかじる。

     ヒレのお肉の肉汁とソースが口の中で相まってたまらないところへまたキャベツ!

     これがもう、ご飯に合って泣きたくなる。

    • これぞ“大人のお子様ランチ”
      これぞ“大人のお子様ランチ”
    • ヒレカツはまずキャベツから
      ヒレカツはまずキャベツから

     そして、海老フライ。まずソース付きの方を。

     ぷりぷりの海老フライが口の中で踊って、その確かな食感にまた泣きたくなる。

     で、ご飯を一口。

     おみそ汁を飲んで、おもむろに冷奴に手を付けてお口のなかをさっぱりと。

    • 海老フライ
      海老フライ。1本はタルタルソース
    • 海老フライ
      海老フライ。1本はソース

     そして、ポテトサラダに向かうわけだが、このポテトサラダがまた、“ザ・洋食!”の冠にふさわしい濃厚さ。

     かけたソースは下に敷いたキャベツにものすごくマッチして、たまらない。これだけでまたご飯がいける。

    • ポテトサラダ
      ポテトサラダ
    • ポテトサラダ
      ソースをかけると下のキャベツとマッチしまくり

     そしてそして、ついに、震える箸先が向かうのは、ミニハンバーグ。

     こちらは“ザ・洋食!”の冠に恥じず、ドミグラスソースの濃厚さが、もう、うっとりと舌にからまり、至福の気持ちに。そのまま食べるご飯の充実感と言ったら……。

     それからは目を三角にして、一気!

     ヒレカツ→キャベツ→海老フライ→ポテトフライ→ご飯→ハンバーグ→ご飯→みそ汁→ご飯→海老フライ……とお口のなかは、もうお祭り状態に。

    • ハンバーグ
      濃厚なドミグラスソースうっとりのハンバーグ
    • 冷奴
      冷奴でお口をさっぱりと

     山盛りのご飯がみるみるうちに消えていく。

     お腹はいっぱいになりつつあるのに、まだおかずがしっかりある幸福。うっとりする。

     おかずとご飯の割合は、おかずが優勢なので、ご飯をおかわりすることも。でも今日はこのあと自転車に乗ることを考えて、超満腹ではまずかろうと自分を抑えつつ調整の結果、ご飯とおかず、両方でフィニッシュ!

     無我夢中になる、“ザ・洋食!”の確かな味は、全速力で自転車を走らせたときに出るエンドルフィンより、もっと深い陶酔感をくれた。

    「おいしかった! また来ます!」の言葉を残し、自転車に乗るのだった。

     あー、おいしかった!!!


    ●「キッチンアオキ」

    東京都千代田区飯田橋4-8-11
    Tel.03-3264-0869
    営業時間:月~金・11:00~21:00、土・11:00~14:00
    定休日:日曜・祝日

上荻吾朗
About 上荻吾朗 40 Articles
編集者 かみおぎ・ごろう 1964年生まれ。北海道出身。週刊誌記者、漫画編集者を経て、WEB製作会社で勤務。震災後、通勤困難を経験して、メタボ対策のためにも、自転車通勤をするようになる。おいしいものを食べることが何より好きな健康チューネン。いかにも飲めそうなヒゲ面のくせに下戸。