無機ヒ素の神経発達影響を考慮

国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(化学物質)No.17(2020.08.19)を発表した。

注目記事

【FDA】FDAは乳児用コメシリアル中の無機ヒ素に関するアクションレベルについて企業向け最終ガイダンスを発表

 米国食品医薬品局(FDA)は、2016年に公表した乳児用コメシリアル中の無機ヒ素に関するガイダンス案を最終版にしたと発表した。このガイダンスでは、アクションレベル100μg/kg(100ppb)を特定している。

 FDAは、無機ヒ素への暴露が神経発達影響に関連があると判断し、今回の対応を行った。直近10年間における乳児用コメシリアルの検査結果から、製造業者の適正な製造管理(優良適正規範:CGMP)によって、すでにこのアクションレベルが達成されていることが示されている。

※ポイント:無機ヒ素の暴露については発がん性が重視されがちですが、このガイダンスのもとになったリスク評価では非発がん影響として神経発達影響も考慮されたところが注目すべき点でしょう。

 FDAのアクションレベルは、それを超過しないよう推奨されている値なので法的拘束力はありません。もし超過が確認された場合には、それが法律上の異物混入(adulterated)に該当するのかをケースバイケースで検討した上で執行措置を講じるとしています。

【FSA】COVID-19第3回および4回の消費者調査報告を発表

【FSS】FSSは都市封鎖中のスコットランド人の食生活を明らかにする

 英国食品基準庁(FSA)とFSスコットランド(FSS)がそれぞれ、COVID-19パンデミックによる消費者の食品に対する行動や考え方の変化に関する調査結果を報告した。

※ポイント:消費者の食品に関連した行動調査は、今後の食品安全行政(リスク管理)において焦点を当てるべき事案の選定や、優先度を検討するのに必要なことだと思います。以前にご紹介した米国FDAの今後10年間の将来計画でもCOVID-19パンデミックによる影響が考慮されていました。

 FSAとFDAで共通していたのは、家庭での調理が増えていることや、デリバリーやテイクアウトなどの食品事業スタイルの多様化に合わせた行政対応が必要だとしている点です。

【ANSES】家庭菜園の有毒ヨウシュチョウセンアサガオの葉を摂取して重症食中毒

 フランス食品・環境・労働衛生安全庁(ANSES)と中毒管理センターは、ヨウシュチョウセンアサガオの葉を食べたことによる家族4名の重症な中毒事例の発生を受けて、家庭菜園も含め、食用と間違って有毒な野生植物を食べることのリスクについて注意喚起した。

 その家族は、食用となるニュージーランドホウレンソウ(ツルナ)の種を庭に播いて、初年は育たず、その一年後に新芽が出ていることに気付き移植した。しかし、実際はたまたま同じ場所に育ったヨウシュチョウセンアサガオであった。

※ポイント:チョウセンアサガオについては、日本だと根をゴボウと間違えるという事例が多いのですが、葉の誤認については、プランターで育てていたチョウセンアサガオの葉をバジルと思い込んだ事例や、知人からアシタバとして貰い受けたものがチョウセンアサガオの葉だったという事例などが報告されています。

(安全情報部第三室)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.17(2020.08.19)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2020/foodinfo202017c.pdf

今号の目次

【WHO】
1. Q&A: COVID-19に関連する食品安全と栄養

【FAO】
1. COVID-19パンデミックの食品と農業への影響についてのQ & A
2. Codex

【EC】
1. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. 食用糖類-安全性評価の2021年の新たな日程
2. 成人と高齢者のフィンランド国民食事調査(FinDiet2017)
3. 文献調査―食品及び飼料のリスク評価を支援するためのin silicoタンパク質毒性予測方法の調査
4. ジャガイモのグリコアルカロイド:公衆衛生リスクが評価された
5. 食品添加物関連
6. 遺伝子組換え関連
7. 新規食品関連
8. 飼料添加物関連

【FSA】
1. FSAはDNP販売業者への判決を歓迎する
2. COVID-19第3回及び4回の消費者調査報告を発表
3.「変革の時」と食品関連の行動の迅速レビュー

【FSS】
1. FSSは都市封鎖中のスコットランド人の食生活を明らかにする

【COC】
1.2020年に更新されたCOCのガイダンスや声明

【BfR】
1. 国は科学者? Cologne地方裁判所はBfRの科学的仕事への著作権保護を確認-BfRは差し止めによる救済を得た
2. 食品中1,2-不飽和ピロリジジンアルカロイドの量についての更新リスク評価

【ANSES】
1. イミテーションフード(食べ物に似せた消費者製品):事故リスク予防のため注意が必要
2. ANSESは食用海藻の摂取によるカドミウム暴露を制限することを推奨
3. 家庭菜園の有毒ヨウシュチョウセンアサガオの葉を摂取して重症食中毒

【FSAI】
1. FSAIはビタミンやミネラルの安全な摂取に関する業界向けガイダンスを発表
2. リコール情報

【FDA】
1. FDAは乳児用コメシリアル中の無機ヒ素に関するアクションレベルについて企業向け最終ガイダンスを発表
2. FDAは滅多に生では消費されない農産物リストの拡大について情報請求する
3. FDAは発酵及び加水分解食品のグルテンフリー表示に関する最終規則を発表
4. コロナウイルス(COVID-19)更新(一部のみ抜粋)
5. 警告文書

【NTP】
1. データ表公開

【CDC】
1. ノートカトンがEPAに登録された

【FTC】
1. FTCは根拠のないCOVID-19治療宣伝を止めるよう20以上の業者に警告文書を送付

【CFIA】
1. CFIAの種子を勝手に送り付けてくる包装物に関する情報更新
2.2020-08-12食品安全検査報告:穀類製品のオクラトキシンA

【FSANZ】
1. 食品基準通知

【TGA】
1. リコール情報

【MPI】
1. 生のアプリコットカーネルに関連した中毒リスク管理のためリコール
2. 貝のバイオトキシン警告

【香港政府ニュース】
1. 食品安全センターは卵のサンプルに抗生物質を検出する
2. 食品安全センターはグリーングルーパーのサンプルに微量のマラカイトグリーンを検出する
3. 包装済みキヌガサタケのサンプルに超過保存料が検出され、食品表示規則に違反している
4. 台湾政府より:日本から台湾に輸入された「竹內朝倉山椒粉(SANSHO KONA)」に、台湾の基準に違反する残留農薬のクロルフェナピル、クレソキシムメチル、メチダチオンが検出された報告

【SFA】
1. 食品中の水銀、臭素酸塩及びカビ毒の最大残留値基準の設定
2. ドリアンの安全性

【HSA】
1. 警告:「Coco Curv」と「Choco Fit」に禁止物質が含まれる;「Hamer Candy」は勃起不全薬の類似成分が検出された

【FSSAI】
1. メディアコーナー

【その他】
・(ProMED-mail)スコンブロイド魚中毒-欧州(第2報):ベトナムからスウェーデン
・(ProMED-mail)アルコール中毒-米国:ハンドサニタイザー
・(ProMED-mail)有毒藻類-英国:イヌ、警告
・(EurekAlert)世界の死亡率の増加は米食によるヒ素暴露と関連