2011年食の10大ニュース[6]

  1. 畜産業界の東日本大震災からの奇跡的復興
  2. 福島第一原子力発電所からの避難と被害
  3. 放射性物質基準値の科学的根拠と検査、検査、検査……
  4. 震災後の被災地で日本の食品流通の底力発揮
  5. 遺伝子組換えレインボーパパイヤの承認
  6. TPPの協議に日本も参加の意思を表明
  7. 牛肉の生食を厚労省が禁止
  8. 米国で大干ばつも、穀物生産量減は最小に収まる
  9. 米国産非遺伝子組換えトウモロコシの供給システムを全農が構築
  10. 宮城大学の三石誠司教授による「空飛ぶ豚と海を渡るトウモロコシ」の発刊

1. 畜産業界の東日本大震災からの奇跡的復興

 東北地方太平洋沖地震とその後の津波で犠牲になられた方のご冥福をお祈りするとともに、今もまだ復興に汗を流していらっしゃる方々を応援いたします。

 東日本大震災は、東日本の飼料業界と畜産業界に大きな打撃を与えましたが、その復興には目を見張るものがありました。利益や利害を脇に置いた「オールジャパン」の対応によって、可能な限り畜産業への影響を抑えようとフル稼働した飼料業界。西日本からの配合飼料の供給や石油などの必需品の輸送で助け合った畜産業界。米国の農家も感嘆のまなざしで見守っていました。

2. 福島第一原子力発電所からの避難と被害

 まだご自宅に戻れない避難区域に住まわれていた方にお見舞い申し上げます。

 直接に被害や避難にかかわっていらっしゃらない方も、風評被害に苦しんでいます。

 稲わらから検出された基準値を超える放射性物質は、全国的にその被害を広めてしまいました。個人的には福島産、東北産、茨城産の卵や豚肉などの畜産物、桃や白菜などの野菜・果物などを積極的に購入してきました。

3. 放射性物質基準値の科学的根拠と検査、検査、検査……

 科学的に根拠のわかりにくい放射性物質の基準値。「基準は満たさないが健康には影響ない」という言葉がまた繰り返されています。そして、過剰反応とも思われるほどの検査、検査。CMにまで、検査をしっかりしています……というフレーズが。

4. 震災後の被災地で日本の食品流通の底力発揮

 被災地での地元商店の迅速な開店、移動コンビニ、宅配便の速やかな復旧など、日本という国の国民の団結力が図らずも現れた震災後でした。米国人もこれには感嘆。

5. 遺伝子組換えレインボーパパイヤの承認

 暮れも迫った12月、遺伝子組換えレインボーパパイヤの承認が下りました。消費者庁による表示システムの決定にもかなり時間がかかりました。それでもやっと日本で口にすることができます。ハワイでおいしいパパイヤを満喫した方はぜひ、日本でも食べてみてください。一部量販店で購入できるという話です。

6. TPPの協議に日本も参加の意思を表明

 野田総理大臣が11月にホノルルでのAPECの会議で表明しました。国内では主に農業関連団体からの反対の声が強いTPPへの参加。「木を見て森を見ず」とならないように、TPPの多面的な理解を進める必要がありそうです。

7. 牛肉の生食を厚労省が禁止

 食中毒発生を受け、ユッケなど、牛肉の生食を禁止する規制が発効。

 日本は生食文化の国。これ以外にも海産物の刺身はもちろん、生牡蠣や鶏刺しなど、加熱しない食品をこれだけ食べる民族はいないのでは。

 食肉の生食は禁止したほうがよいのでは……と個人的には思います。

8. 米国で大干ばつも、穀物生産量減は最小に収まる

 米国の穀物生産地では今年夏は異常高温と大干ばつ。収量減が予想され、一時は緊張が走りました。しかしふたを開けてみると収量減は最小に抑えられ、供給量に問題はありませんでした。

 その理由は、異常ともいえる気象条件下でも収量を落とさない品種改良や農業技術の改良でしょう。遺伝子組換え技術も、虫害の防止や強風や高温による倒伏などの被害の軽減に役立っています。

9. 米国産非遺伝子組換えトウモロコシの供給システムを全農が構築

 年々増える遺伝子組換えトウモロコシ。その安全性は問題ないが、非遺伝子組換えトウモロコシにも一定の需要が。生産のコスト、害虫被害の阻止のノウハウを含め、次第にその供給が難しくなってきています。全農は米国の種子会社やトウモロコシ生産者、米国内流通業者とタイアップし、非遺伝子組換えトウモロコシの一定量の供給確保のシステムを構築しました。

 もちろん、米国の生産者は遺伝子組換えトウモロコシの安全性には自信を持っていますし、環境へのメリットも肌で感じています。しかし、需要があればそれにも応えていきたいと考えています。

10. 宮城大学の三石誠司教授による「空飛ぶ豚と海を渡るトウモロコシ」の発刊

 日経BPコンサルティングより三石先生著の「空飛ぶ豚と海を渡るトウモロコシ」が発刊されました。私も帯にコメントをさせていただきました。

――日本は年間1600万トンという世界最大量のトウモロコシを100%輸入する国。そこには国や企業の都合ではなく、米国の生産者の「日本に届けたい」という思いが込められていました。私たちの食料、世界の食料、未来の食料について考えるヒントとなる書です――

 定価1600円です、ぜひご一読を。


2011年の10大ニュース
《特別企画》2011年食の10大ニュース[一覧]
これまでの「10大ニュース」
《特別企画》2010年食の10大ニュース[一覧]

About 浜本哲郎 2 Articles
アメリカ穀物協会日本代表ディレクター はまもと・てつお 在日米国大使館海外農務局(貿易政策とバイオテクノロジーを担当)、日本モンサント(バイオテクノロジーに関する情報提供プログラムを担当)を経て、2008年8月より現職。