欧州チキンのサルモネラリスク

No.11(2023.05.24)

チキンのケバブ(イメージ)

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。欧州と米国で2017年6月以降に発生し現在も継続しているサルモネラ感染アウトブレイクの調査で、EUの家禽肉生産チェーンにおいて関連株のクローンが蔓延していることが示された。ドイツ当局の調査によると、肥育動物への抗生物質の使用は次第に減少している。

注目記事

【欧州】鶏肉を含むケバブ肉製品に関連のサルモネラ感染アウトブレイク

 欧州疾病予防管理センター(ECDC: European Centre for Disease Prevention and Control)と欧州食品安全機関(EFSA: European Food Safety Authority)の合同迅速アウトブレイク評価「鶏肉を含む食肉製品の喫食に関連して複数国にわたり発生しているサルモネラ」が発表されている。

 欧州連合/欧州経済領域(EU/EEA)加盟5カ国と英国および米国において、2017年6月以降に1件のサルモネラ(Salmonella Virchow シークエンスタイプ(ST)16)感染アウトブレイクが発生し、現在も継続している。患者は計210人が報告されており、国別の内訳は、デンマーク2人、フランス111人、ドイツ26人、アイルランド4人、オランダ34人、英国32人、米国1人である。死亡者は報告されていない。

 患者の大多数はケバブ肉を提供する地元の飲食店に関連している。患者への聞き取り調査、追跡調査および全ゲノムシークエンシング(WGS)法によるクラスター解析で得られた情報から、汚染された鶏肉を含むケバブ肉製品が原因食品である可能性が高いこと、および少なくともフランス、ドイツ、オランダを含むEUの家禽肉生産チェーンにおいて関連株のクローンが蔓延していることが示された。汚染ケバブ製品のバッチ番号および関連するサルモネラ検査に関する情報がないため、感染源は確定できなかった。

 さらなる調査が実施され、一次生産ラインの初期段階を含む鶏肉生産チェーンにおいて感染源および汚染源が特定されるまで、EU/EEA域内のすべての年齢層で新たな患者が発生する可能性が高い。感染源および汚染源の特定により、適切な対策の実施が可能となる。

【ドイツ】肥育動物への抗生物質の使用は減少傾向

 ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR: Bundesinstitut für Risikobewertung)は、抗生物質の使用頻度および使用量に関するデータの評価を行っている。その結果について、BfRは報告書「2018〜2021年の抗生物質の使用頻度および使用量:食肉生産用に飼育されるウシ、ブタ、鶏および七面鳥における動向」を発表し、肥育動物への抗生物質の使用が次第に減少していることを示した。

 BfRは、抗生物質使用について連邦各州から毎年報告されるデータの評価および抗生物質耐性のリスク評価を担っている。今回は2018〜2021年のデータについて考察し、2017年のデータとの比較も行っている。

 屠畜・食鳥処理される動物からの抗生物質耐性菌の検出も減少している。本報告書を作成した疫学・人獣共通感染症・抗菌剤耐性部長のAnnemarie Käsbohrer博士は「しかし、耐性菌検出の減少は動物カテゴリーによって異なり、使用量の減少を反映していない。耐性率を長期的に低下させていくためには、菌の耐性獲得に関する理解を深め抗生物質の使用削減対策を強化する必要がある」と述べている。

 抗生物質の使用量については、2017〜2021年の期間中に必ずしも均等ではないが、すべての動物カテゴリーで減少傾向が認められる。使用量が最も多い動物は依然として肥育ブタであり、次いで子豚、七面鳥、鶏、子牛の順であった。肥育肉牛では極めて少量であった。ヒトの治療に特に重要な抗生物質グループの使用量が全動物カテゴリーで減少し、これはとくに歓迎すべき結果である。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.11(2023.05.24)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2023/foodinfo202311m.pdf

今号の目次

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. 小規模飼育の家禽類との接触に関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ
(Salmonella Braenderup、S. Enteritidis、S. Infantis)感染アウトブレイク(2023年
5月19日付初発情報)
2. 冷凍の有機栽培イチゴに関連して複数州にわたり発生している A型肝炎アウトブレイク(2023年5月5日付情報)

【欧州疾病予防管理センター(ECDC)/欧州食品安全機関(EFSA)】
1. ECDC-EFSA 合同迅速アウトブレイク評価:鶏肉を含む食肉製品の喫食に関連して複数国にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Virchow シークエンスタイプ(ST)
16)感染アウトブレイク

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and
Feed)

【ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)】
1. 肥育動物への抗生物質の使用は減少傾向

【ProMED-mail】
1. コレラ、下痢、赤痢最新情報(11)