ビスフェノールA欧州の不一致

No.10(2023.05.10)

イヌサフラン(イメージ)

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。欧州食品安全機関(EFSA)が食品に含まれるビスフェノールA(BPA)に関する再評価を行い、新しい耐容一日摂取量(TDI)と消費者の健康に懸念があるとの結論を発表した。EFSAのこの発表に対し、欧州医薬品庁(EMA)とドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)は、これらに同意しないとの見解を示している。

注目記事

【EFSA】食品中のビスフェノールAは健康リスク

 欧州食品安全機関(EFSA)は、食品に含まれるビスフェノールA(BPA)に関する再評価の結果を発表した。この評価では、脾臓中のTh17細胞の割合増加を重要な影響と判断して中間エンドポイントとして採用し、ヒト等価用量へ外挿した上で不確実係数50を適用して耐容一日摂取量(TDI)を0.2ng/kg体重/日と設定した。これは前回評価(2015年)で設定した暫定TDI(4μg/kg体重/日)の約20,000分の1である。新しいTDIに対して2015年の評価での推定暴露量は2〜3桁超えており、BPAへの食事暴露は健康への懸念があると結論した。

【EMA】ビスフェノールAに関するEFSAとEMAの意見相違についての報告書

【BfR】EFSAによるビスフェノールAの再評価に関するEFSAとBfRの意見相違についての報告書

 欧州医薬品庁(EMA)とドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)は、EFSAがBPAの再評価で提示した新しいTDIに同意しないとの見解を示し、それぞれEFSAの意見との相違点をまとめた合同報告書を公表した。

【BfR】ビスフェノールA:BfRは健康影響に基づく指標値を提案、完全リスク評価には現在の暴露データが必要である

 EFSAの再評価を受けて、BfRは独自にBPAの評価を行い、Wistarラットの成獣における亜慢性暴露による精子数の減少を示した2件の試験に基づき、より保守的なアプローチを適用して0.2μg/kg体重/日というTDIを導出した。

※ポイント:EFSAの新しいTDIと消費者の健康に懸念があるとの結論について、EMAとBfRが同意しないとの見解を示しています。その主な理由は、EFSAが中間エンドポイントとして採用したマウスの脾臓におけるTh17細胞の割合増加が、結果的にヒトでの有害影響につながるという因果関係を示す十分な科学的根拠がなく、TDIの導出に用いるのは正当化できないというものです。そのためBfRの評価では別のエンドポイントを用いてTDIを導出しています。EMAとBfRの見解の要点を英国毒性委員会(COT)が簡潔にまとめていたので、ご興味のある方は参考にしてください。

【ANSES】オータムクロッカス(イヌサフラン)とワイルドガーリック(ラムソン)の誤認は致命的な中毒を起こす可能性がある

 フランス食品・環境・労働衛生安全庁(ANSES)は、食用にできるワイルドガーリック(Allium ursinum)や多花ニンニク(Allium polyanthum)と、よく似ている有毒なオータムクロッカス(Colchicum autumnale)を間違えて採取・摂取したことによる中毒について警告する。中毒管理センターには2020-2022年に中毒事例が28件報告されている。

※ポイント:日本では毎年4-5月にギョウジャニンニクとイヌサフランを間違えた中毒事例が発生しています。採る時は、思い込まず、よく確認し、確実に食べられるものだけを選んで食べるように気をつけましょう。

(安全情報部第三室)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.10(2023.05.10)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2023/foodinfo202310c.pdf

今号の目次

【WHO】
1. 国際がん研究機関(IARC)

【FAO】
1. 肉、卵、ミルクは必須の栄養源である、特に最も脆弱な集団にとって、新しい FAO の報告書は言う
2. Codex

【EC】
1. 消費者の安全に関する科学委員会(SCCS)
2. FAQ: ワンヘルスアプローチで AMR と戦う EU の行動を強化する欧州理事会勧告
3. 農業水産評議会、2023年4月25日
4. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EMA】
1. ビスフェノール A に関する EFSA と EMA の意見相違についての報告書(最終採択版)

【EFSA】
1. 食品中のビスフェノール A は健康リスク
2. ポリ臭化ジフェニルエーテル類(PBDEs)、テトラブロモビスフェノール A(TBBPA)、臭素化フェノールの毒性に関する関連科学文献の特定と収集
3. ビタミン D の耐容上限摂取量の更新のための準備作業
4. 食品中の農薬:最新データ発表
5. 食品添加物関連
6. 食品酵素関連
7. 新規食品関連
8. 遺伝子組換え関連
9. 食品接触物質関連
10. 農薬関連
11. 飼料添加物関連

【COT】
1.2023年5月16日の会合(EFSA の BPA 再評価について)

【FSAI】
1. 食品組成変更

【BfR】
1. EFSA によるビスフェノール A の再評価に関する EFSA と BfR の意見相違についての報告書
2. ビスフェノール A:BfR は健康影響に基づく指標値を提案、完全リスク評価には現在の暴露データが必要である

【RIVM】
1. オランダで私たちが食べているもの(2012–2016):動物由来と植物由来の食品の比、タンパク質及び環境影響
2. 地表水のリチウムの環境リスク限度指針
3. 淡水及び海洋表層水中遊離のシアン化物の環境リスク限度。水枠組み指令の方法論による水質基準の提案

【ANSES】
1. オータムクロッカス(イヌサフラン)とワイルドガーリック(ラムソン)の誤認は致命的な中毒を起こす可能性がある
2. 自家製の除草剤:漂白剤と酢を混ぜないこと
3. 食品安全と品質に関する国際会議 IMEKOFOODS を開催する

【FDA】
1. 乳児用調製乳の成分と包装要件に関する2つのウェビナーを開催2. 環境防衛基金らによる色素添加物請願について:食品への二酸化チタンの使用について色素添加物リストの取り消しを要望
3. 植物ベースの乳代替品のラベル表示に関するガイダンス案について意見募集を再開
4. 警告文書
5. リコール情報
6. 消費者向け情報

【EPA】
1. ウエストバージニア州 Parkersburg 市近傍の Washington Works 施設での PFAS 放出に対応するために初めて連邦水質浄化法を執行

【CFIA】
1. リコール情報

【FSANZ】
1. 食品基準通知

【APVMA】
1. マイナー使用を決めるガイドラインの見直し

【MPI】
1. 食品安全への有意な貢献賞

【香港政府ニュース】
1. CFS は包装済みポテトチップスとエビクラッカーの栄養表示に関するターゲット調査の結果を発表する
2. 違反情報
3. リコール情報

【MFDS】
1.日本産輸入食品の放射能検査の結果
2. 福島第一原子力発電所の汚染水放出について
3. 汎政府レベルの食品栄養成分情報の標準化、国民の栄養管理やフードテックなど産業発展に貢献
4. ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の不当広告に惑わされないでください!
5. オンライン販売製品、「消費者の目」で監視を強化
6. オンライン販売、農・水産物の収去検査を実施
7. 輸入「ミニカステラ」食薬処、再検査の結果は適合
8. リコール情報
9. ズッキーニカボチャ更新情報

【SFA】
1. 有効なライセンスなしで営業したとして14の食品施設に対して執行措置が講じられた

【FSSAI】
1. 茶に使われている農薬の MRL の運用可能化に関する食品安全基準法2006による指令

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・ProMED-mail1件