INFOSAN対応例過去最多

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。2021年第3四半期に国際食品安全当局ネットワーク事務局が対応した食品安全事例は計65件であった。米国で2021年2月〜7月に発生した冷凍加熱済みエビに関連のサルモネラ感染アウトブレイクの感染源は、輸入検査のため採取されたエビ1検体で確認された。

注目記事

【WHO】第3四半期にINFOSANが対応した事例件数は過去最多

 2021年の第3四半期に国際食品安全当局ネットワーク(INFOSAN)事務局が対応した食品安全事例は、世界保健機関(WHO)加盟の延べ63の国・領土が関連した計65件であった。

 その内訳は、以下のとおりであった。

生物的ハザード関連の事例 46件
サルモネラ属菌 20件
リステリア(Listeria monocytogenes) 11件
大腸菌 4件
セレウス菌 2件
A型肝炎ウイルス 2件
ノロウイルス 2件
腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus) 2件
ボツリヌス菌(Clostridium botulinum) 1件
黄色ブドウ球菌 1件
生物的ハザードが不明 1件
物理的ハザード関連の事例 9件
ガラス 4件
プラスチック 2件
缶の不良 1件
異物 1件
ナイフ 1件
非表示のアレルゲン/成分に関連した事例 7件
乳 3件
大豆 2件
ゴマ種子 1件
グルテン 1件
化学的ハザード関連の事例 3件
ヒスタミン 2件
クロルピリホス 1件

 上記65件の事例に関連した食品カテゴリーは以下のとおりであった。

  • 魚・水産食品 13件
  • ハーブ・香辛料・調味料 8件
  • 食肉・食肉製品 8件
  • 野菜・野菜加工品 8件
  • 乳・乳製品 6件
  • スナック・デザート・その他の食品 5件
  • 果物・果物製品 4件
  • 複合食品 3件
  • シリアル・シリアルベース製品 2件
  • 果物・野菜ジュース 1件
  • 豆類 1件
  • ノンアルコール飲料 1件
  • ナッツ・油糧種子 1件
  • 栄養補助食品 1件
  • 原因食品が不明 3件

 INFOSAN 事務局が対応した食品安全事例の件数は2021年の第1〜2四半期に大幅な増加を記録した。この増加傾向は持続しており、本四半期に対応した事例件数は過去最多の65件に達した。

【米国】冷凍加熱済みエビに関連のサルモネラ

 米国疾病予防管理センター(US CDC: Centers for Disease Control and Prevention)、複数州の公衆衛生・食品規制当局および米国食品医薬品局(US FDA)は、複数州にわたるサルモネラ(Salmonella Weltevreden)感染アウトブレイクを調査するため2021年5月にさまざまなデータの収集を開始した。

 本アウトブレイクの患者の発症日は2021年2月26日~7月17日で、2021年9月21日時点で本アウトブレイクは終息している。

 疫学・追跡調査および検査機関での検査によるデータは、Avanti Frozen Foods 社が供給した冷凍加熱済みエビがサルモネラに汚染されており、本アウトブレイクの感染源になったことを示した。

 本アウトブレイクは、輸入検査のため採取されたAvanti Frozen Foods社のエビ1検体でS. Weltevreden汚染が確認されたことにより、FDAが最初に検出した。PulseNetシステムを介し、本アウトブレイクの複数の患者がWGS解析により特定された。WGS解析の結果、当該エビから分離されたサルモネラ株が本アウトブレイクの患者由来株と近縁であることが示された。

 FDAは、患者6人がエビを購入した複数の店舗の購入記録を用いて追跡調査を行った。購入店舗および購入日をもとに、FDAは、当該冷凍加熱済みエビの共通の供給業者が
Avanti Frozen Foods 社であることを特定した。

【オランダ】食品関連病原体による疾患の実被害

オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM: Rijksinstituut voor Volksgezondheid en
Milieu)は、胃腸感染症による健康被害および死亡に起因する損失年数(疾患実被害)の概算値を分析している。これらの胃腸感染症の原因となる14種類の病原体は主として食品に由来(60%)する。ヒトは、地表水などの環境、動物、他者などを介してこれらの病原体と接触する可能性もある。

 2020年は、これらの14種類の病原体による疾患の実被害が2019年より大幅に減少した。この原因として最も可能性が高いのは、オランダで2020年3月以降に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の伝播を阻止するための対策が講じられたことである。これらの対策には、飲食店や喫茶店の営業停止、対面会議の禁止、国外旅行の規制、衛生習慣(手洗い等)の強化などがある。また何よりも、検査機関での診断を必要とし登録義務がある疾患の診療のために医療機関を利用する患者が減った可能性が考えられた。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.26(2021.12.22)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2021/foodinfo202126m.pdf

今号の目次

【世界保健機関(WHO)】
1. 国際食品安全当局ネットワーク(INFOSAN)2021年第3四半期報告(2021年7〜9月)

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. 冷凍加熱済みエビに関連して複数州にわたり発生したサルモネラ(Salmonella
Weltevreden)感染アウトブレイク(2021年9月21日付最終更新)

【カナダ公衆衛生局(PHAC)】
1. 公衆衛生通知:カナダの複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella
Enteritidis)感染アウトブレイク(2021年12月9日付更新情報)

【欧州疾病予防管理センター(ECDC)】
1. レジオネラ症 -2019年次疫学報告書

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and
Feed)

【ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)】
1. 食品安全に関するリスクアナリシス向上のための中南米シンポジウムを開催

【オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)】
1. 食品関連病原体による疾患の実被害(オランダ、2020年)

【ProMED-mail】
1. コレラ、下痢、赤痢最新情報(45)(44)