生きた動物を扱う食品市場のリスク

国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(微生物)No.09(2013.05.01)を発表した。

注目記事

【WHO】生きた動物を扱う食品市場でのインフルエンザウイルス伝播のリスク

 世界保健機関(WHO: World Health Organization)の文書から。

 鳥インフルエンザウイルスは、適切な調理と十分な加熱が施された食品を介して伝播することはないが、生きた動物を扱う食品マーケットでの食鳥処理や取扱いの際に感染動物からヒトへの伝播が起こり得る。したがって、当該マーケットでは動物とヒトとの接触を可能な限り制限することが重要である。

 最近、中国東部においてヒトへの鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスの感染が発生したことが報告され、生きた動物を扱う食品マーケットでは、動物ケージの適切なメンテナンスや糞便の適切な処理などの適正衛生規範の施行が求められている。

http://www.who.int/foodsafety/fs_management/live_markets/en/index.html

【CFIA】家禽生産業者はバイオセキュリティの厳守を

 カナダ食品検査庁(CFIA: Canadian Food Inspection Agency)は、鳥インフルエンザH7N9の発生状況を監視する一方、家禽生産業者にバイオセキュリティの厳守を要請している。

 鳥インフルエンザウイルスは野生の鳥の間で伝播することが知られており、飼育家禽類にも感染する可能性がある。カナダ食品検査庁(CFIA)は、家禽生産業者および個人の小規模飼育者に対し、各自の飼育群を保護するバイオセキュリティ対策の重要性について再認識を促している。

 家禽類の健康の保護に役立つ重要なバイオセキュリティ対策は以下の通りである。

・ 飼育家禽類、その飼料および飲料水に野鳥を接触させないようにする。とくにアヒルやその他の野生の水鳥は、鳥インフルエンザウイルスを保有することが明らかになっているため注意が必要である。

・ 農場でヒト、動物、備品および輸送車両などの移動を管理する。

・ 飼育家禽の疾患の徴候を毎日観察する。

【EFSA】機械分離肉の公衆衛生リスクおよび検出法に関する提言

 欧州食品安全機関(EFSA: European Food Safety Authority)の科学的意見。

 機械分離肉は、屠体から主要な肉を切り取った後の残り肉を機械で分離したもので、他の食品に使用される。主なものとして、高圧機械分離肉(ペースト状でホットドッグなどに使用)および低圧機械分離肉(外見はミンチ肉に似ている)の2種類がある。

 EFSAは、機械分離肉の微生物学的リスクは、機械分離ではない肉(生肉、ミンチ肉または加工肉)のリスクと同程度であると結論づけた。微生物学的リスクや化学的リスクは、素材の汚染や、食肉加工中の不十分な衛生管理から発生する。

 しかし、高圧処理を行った場合には微生物が増殖するリスクが高まると考えられる。高圧処理によって筋繊維の崩壊が進み、細菌の増殖に好都合な環境となる栄養素が放出されるためである。

 また、BIOHAZパネルは、機械分離肉と機械分離ではない肉を識別するための種々のパラメータを検討した。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html

食品安全情報(微生物)No.09(2013.05.01)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2013/foodinfo201309m.pdf

今号の目次

【世界保健機関(WHO)】
1. 生きた動物を扱う食品マーケット――動物からのインフルエンザウイルス伝播のリスクの低減

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. 輸入キュウリに関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Saintpaul)感染症アウトブレイク
2. Farm Richブランドの冷凍食品に関連して複数州にわたり発生している志賀毒素産生性大腸菌O121感染アウトブレイク(2013年4月26日付更新情報)

【カナダ食品検査庁(CFIA)】
1. カナダ食品検査庁(CFIA)は鳥インフルエンザH7N9の発生状況を監視する一方、家禽生産業者にバイオセキュリティの厳守を要請

【欧州委員会健康・消費者保護総局(EC DG-SANCO)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and Feed)

【欧州疾病予防管理センター(ECDC)】
1. 北欧4カ国で発生中のA型肝炎アウトブレイク

【欧州食品安全機関(EFSA)】
1. 機械分離肉――公衆衛生リスクおよび検出法に関する提言

【Eurosurveillance】
1. 国内事例から国際事例へ――複数の媒介食品によって複数国で発生する食品由来アウトブレイクの調査における課題
1.1. 2009年にハンガリーで著しく増加したサルモネラ(Salmonella Goldcoast)感染患者に関する調査
1.2. 2009年6月~2010年3月に複数国にわたり発生したサルモネラ(Salmonella Goldcoast)感染アウトブレイク――イタリアにおける調査

【デンマーク国立血清学研究所(SSI)】
1. デンマークの人獣共通胃腸感染症(2012年)

【ProMed mail】
1. コレラ、下痢、赤痢最新情報