シンポジウム「有機農業と遺伝子組換え作物」報告(1)

“Tomorrow’s Table: Organic Farming, Genetics, and the Future of Food” Pamela C. Ronald, Raoul W. Adamchak
「有機農業と遺伝子組換え食品 明日の食卓」(椎名隆、石崎陽子 訳)

2011年12月、シンポジウム「有機農業と遺伝子組換え作物~将来の90億人を養うために今考えること」が開催された。出席したNPOくらしとバイオプラザ21の佐々義子氏に、その報告を記してもらった。

「明日の食卓」から企画

 2011年12月17日、京都府立大学大学会館ホールにて、第22回植物バイテクシンポジウム「有機農業と遺伝子組換え作物~将来の90億人を養うために今考えること」が開かれ、100名を超える学生、研究者、企業、生産者が集まりました。植物バイテクシンポジウムは同大で継続して行われてきたものですが、今回は「有機農業と遺伝子組換え食品 明日の食卓」(Pamela C. Ronald・Raoul W. Adamchak著、椎名隆・石崎陽子・奥西紀子・増村威宏訳、丸善出版)を翻訳した研究者が中心になって企画されました。

 原著‘Tomorrow’s Table: Organic Farming, Genetics, and the Future of Food’はカリフォルニア大学デイビス校の著名な植物病理学者であるパメラ・ロナルド、有機農業を教え、農園も運営しているラウル・アダムチャック夫妻の共著。遺伝子組換え作物を有機栽培※1するのが、最も環境への負荷の少ない持続型農業であると提案しているものです。

 NPO法人くらしとバイオプラザ21では2005年にパネラ・ロナルド博士を招いて講演会を行っており、「離乳食は有機栽培された遺伝子組換え作物で作る」という同氏に主張に驚かされたものです。

 参考:ミニ講演会「遺伝子組換え農作物について」開催報告
http://www.life-bio.or.jp/topics/topics54.html

有機農業と遺伝子組換えの組み合わせに活路見る

 今回のシンポジウムの冒頭、前掲書の翻訳と企画をされた椎名隆氏(京都府立大学生命環境科学)より、「人間は地球環境に最も大きなインパクトを与える生物である。その食料を得るときに、慣行農業に比べて有機農業は環境負荷を減らすことができるが、単収が下がる。今日は有機農業と遺伝子組換え作物をつなげることで、新しい農業を創り出せないかを考えるシンポです」という開会の挨拶がありました。

 各パネリストのお話をまとめましたので、続いてご紹介していきます。

「遺伝子組換え農業の現状」
小泉望氏(大阪府立大学生命環境科学研究科)

 世界人口の増加に対しては単収増加にかかわる技術で対応できてきたが、これからは効率よく品種改良ができる遺伝子組換え技術が重要。この技術に不安を抱く人もいるが、品種を改良すれば、(遺伝子組換えに限らず)どんな手法を使っても遺伝子は変化する。

 偶然にも携帯電話の普及と世界の遺伝子組換え作物の耕地面積の増加は重なっている。(電線の設置を要さずコストや環境負荷の少ない)携帯電話のように、遺伝子組換え作物には栽培コストの削減、環境への負荷が小さいなどのメリットがあったから、普及したのだろう。発展途上国では、農薬を散布する作業者の安全も大きなメリットで、2003年ごろからは発展途上国での栽培面積増加が著しい。

 昨年12月1日に解禁になった遺伝子組換えウイルス耐性パパイヤに消費者がどのように対するのか、注目している。

※1 日本の有機JAS規格およびこれが参照したコーデックス委員会(Codex Alimentarius)等の有機農法・オーガニックの規格・ガイドラインは遺伝子組換え作物の使用を認めていない。したがって、ここで言う「有機農業」とは、今日国内および諸外国の多くで行われている有機農業とは異なるコンセプトないしは現行の規格・ガイドラインの見直しを促す意味を含むコンセプトである。これについて新しい呼称は提案されていないため、本稿中では便宜的に「有機農業」「有機栽培」「オーガニック」という言葉をそのまま使用している点に注意されたい。

〈続く→シンポジウム「有機農業と遺伝子組換え作物」報告(2)〉

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About 佐々義子 42 Articles
くらしとバイオプラザ21常務理事 さっさ・よしこ 1978年立教大学理学部物理学科卒業。1997年東京農工大学工学部物質生物工学科卒業、1998年同修士課程修了。2008年筑波大学大学院博士課程修了。博士(生物科学)。1997年からバイオインダストリー協会で「バイオテクノロジーの安全性」「市民とのコミュニケーション」の事業を担当。2002年NPO法人くらしとバイオプラザ21主席研究員、2011年同常務理事。科学技術ジャーナリスト会議理事。食の安全安心財団評議員。神奈川工科大学客員教授。