シャケ弁当はマス弁当だった

 24日、ファミリーマートが予定していたフォアグラ使用商品の発売を中止したというニュースに続き、キリンビールがカエルのキャラクターを用いたアルコール飲料のCMを中止するというニュースが入ってきました。前者はフォアグラ生産過程についての苦情、後者は親しみやすいキャラクターが未成年の飲酒を誘発するという苦情に対応するものであったということです。

 食品に関するクレーム等は、これまで安全性や安心のイメージに関するものが取り上げられることが多かったのに対し、これらはいずれも物理的・生物学的被害に関するものというよりは信条・心情・印象に関するものです。こうしたものによって企業の活動が大きく変わるということが一般的になっていくと、食ビジネスはどのような変化を強いられるのか、ここはよく考えておきたいところです。

 一方、消費者庁が昨年発表した「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について(案)」に関する意見募集が昨日締め切られましたが、同日この案に関する意見交換会が開催されました。この中で、たとえば「サーモントラウト」(ニジマス)を使った「シャケ弁当」や回転寿司等での「サーモン」の表示ができなくなることが問題となっています。

 また、同案には過去すでに排除命令が出た例のある「ステーキ」という言葉について、「一般消費者は、『一枚の牛肉の切り身』を焼いた料理と認識すると考えられます」という説明が記されています。

 表示は正確であるべきですが、もともと消費者があいまいにとらえていたものを詳しく分類して規制しようとする場合には、さまざまな混乱や過剰・急激なイメージの低下が起こることが予想されます。

 ここで、「どうせ区別がつかないのだからそのまま提供してもいいではないか」という意見を筆者は支持しません。消費者も、提供者も、同じ知識をベースに、価値観を共有できるようにする努力が、今後ますます重要になっていくでしょう。

 たとえば「シャケ弁当」については、昔から北海道・東北・新潟等“サケ文化圏”の人は「あれはサケじゃないよな」と笑っていたものです。食ビジネスのプロも、多くの人がそう見ていたでしょう。それを自分たちだけの“ネタ”にせず、なるべく多くの人に知ってもらうこと、その上で、ある商品をそれでも選ぶ理由は何であるのか、さまざまな立場の人が考えること、できればその悩み方を楽しめること、そのような場がたくさん出来ることを願います。

※参考:

販売中止「ファミマプレミアム黒毛和牛入りハンバーグ弁当~フォアグラパテ添え」
https://www.foodwatch.jp/tertiary_inds/38434
JF・安部修仁会長の言葉が飲食業の価値を問い直す
https://www.foodwatch.jp/tertiary_inds/38447
隠すのではなく、自慢することを考える
https://www.foodwatch.jp/strategy/resnandemtn/8985

※このコラムはメールマガジンで公開したものです。

齋藤訓之
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Food Watch Japan編集長 さいとう・さとし 1988年中央大学卒業。柴田書店「月刊食堂」編集者、日経BP社「日経レストラン」記者、農業技術通信社取締役「農業経営者」副編集長兼出版部長等を経て独立。2010年10月株式会社香雪社を設立。公益財団法人流通経済研究所客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。日本フードサービス学会会員。戸板女子短期大学食物栄養科非常勤講師。東京栄養食糧専門学校非常勤講師。亜細亜大学経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科非常勤講師。著書に「有機野菜はウソをつく」(SBクリエイティブ)、「食品業界のしくみ」「外食業界のしくみ」(ともにナツメ社)、「農業成功マニュアル―『農家になる!』夢を現実に」(翔泳社)、共著・監修に「創発する営業」(上原征彦編著ほか、丸善出版)、「創発するマーケティング」(井関利明・上原征彦著ほか、日経BPコンサルティング)、「農業をはじめたい人の本―作物別にわかる就農完全ガイド」(監修、成美堂出版)など。※amazon著者ページ →