ここ一軒でリトル・タイ「J’s Store」(横浜・黄金町)

「ソムタムタイ」(800円)
「ソムタムタイ」(800円)
J's Store
J’s Store外観。黄金町から大岡川の橋を渡って伊勢佐木町へ進む途中のエリアにある。

まだまだ寒い時期が続きますね。体調を崩しがちになるので、防寒にはご注意ください!

異国の入り口に座る不思議感覚

 黄金町と日ノ出町の中間、まさに昔は「ちょんの間通り」と言われた繁華街からもほど近い一角。ご婦人とお子様はその言葉の意味は考えずにスルーしてくだされ。

 小さなマンションの1階に、その店はある。

 エントランスにも冷蔵庫が置かれ、「24時間営業」と表示されたメニューを眺めながら扉を開けると……そこには、ここが日本とは思えない光景がある。

 ショーウインドーを兼ねた冷蔵庫に満載された異国の飲み物や食材、ぎっしりと陳列された雑貨、インスタントラーメン、お菓子、調味料……すべてが、本場タイのもの。

J's Store店頭
店頭にも食材満載の冷蔵庫が。

 商店の真ん中には椅子とテーブルがある。それら食料雑貨に囲まれながら、椅子に腰を下ろしてメニューを選ぶシュールさと言ったら……。

 そのテーブルの一角には、タイ風の弁当が積まれている。それを買いに来るタイ人たちは引きも切らず、タイ語が飛び交う店内は異国情緒たっぷり、と言うよりも、異国の入り口に座っているような気になってくる。

 それでいて、落ち着かないということがない。メニューを眺めていると、何ともしれずリラックスした気持ちになってくる。

 不思議な、不思議~なお店。

 メニュー表は日本語表示もされているけれど、ところどころ外国語風味で。「えびの辛い和え」何て、意味はわかるけど、ちょっと現地っぽくていいでしょ?

 100種類ぐらいあるその品々が、夜ともなく、昼ともなく、朝ともなく、いつでも食べられるのだから、うれしいやら、びっくりするやら。

 うれしいのは、飲み物も現地のものだから。

 タイで飲める豆乳ドリンクが瓶であること。ちょっと甘くて、濃くて、おいしい。ちょっと辛いものをつまむ際に、これを飲みながら食べると、実に、いいんである。

 そんなうれしさを感じながら、メニューを選び始めると、少ない人数で来ても、ついつい多めに注文しちゃう。

 ソムタムでしょ、プラークンでしょ、グリーンカレーでしょ、ソフトシェルの炒め物でしょ――あれもこれも、しっかり食べたくなる。

  • 店内
    店内のリーチイン冷蔵庫の中にはタイ産の食品や飲料がたくさん。
  • 店内
    店内どこを向いてもタイ産食料雑貨が山のように。
  • 弁当
    J’s Storeが料理を提供するきっかけとなり名物でもあるお弁当。

タイ人コミュニティのお弁当ステーション

  • 店内
    店内中央、食料雑貨に囲まれた食事スペース。
  • アロムさん
    アロムさん。お店を開いて7年。

 こんな風変りなお店がどうしてできたのか、ママのアロムさんのお話を聞くと、それは、偶然に近いことから始まったようだ。

 タイにいたアロムさん、日本人のご主人と29歳のときに現地で結婚。その後3~4年してから夫婦そろって日本に移り住むことになった。縁あって、現在の場所へ「J’s Store」を開くことになったのは7年前。

 その頃には、黄金町や日ノ出町の“ちょんの間”も一掃され、お店の付近のあちこちには、タイ式マッサージのお店があったりして、タイ人のコミュニティが出来ていたた。そこで商売を始めたという。

 当初は、タイの雑貨や食料品を扱う商店としてのみの営業だった。ところが、お客の求めに応じてタイの人が好きなお弁当を作り始めたところ、これが評判になっていった。

「うちは(お弁当が)150(食)以上は軽く出るからネ。仕込みからナニからずっと、24時間作り続けてるワケ。そのうちに、じゃあ、ここで注文受けても同じか、ッテ。テーブル置いたらここで食べる人も出てキテ……」

 本場の材料と腕で、本場の味。瞬く間にファンが増えていった。

 現在、アロムさん含め8名のスタッフが、24時間営業のこの店を回している。

「ここらヘン、タイ式マッサージのお店、40軒以上あるカラ。日本のお客さんも来るしね」

 お弁当は、すべて500円。タイで見かけるようにビニール袋に入れて直接しばって置いておいたり、その場で食べていく人もいたり。常連さんが慣れた様子で買いに来て、ひとしきりおしゃべりを楽しんだあと、帰っていく。

野菜がうまい絶品タイ料理

  • 「プラークン」(1000円)
    「プラークン」(1000円)
  • 「ソムタムタイ」(800円)
    「ソムタムタイ」(800円)
  • 「ケンキョウワーン」(800円)
    「ケンキョウワーン」(800円)

 そんな、タイにいるかのような感覚を味わいながら食べる料理は、実に、クセになるほどのお味なのだ。

 とくに、「エビの辛い和え」と書かれたプラークンや、パパイヤで作るサラダのソムタム、そしてグリーンカレーは絶品だ。

 まず、プラークンは、各種香草とスパイスが絡み合い、実に深い味に。辛いことは辛いのだが、幾層ものうま味が奥に潜んでいて、ぷりぷりのエビと一緒に食べると、「たまらない!」と声を上げたくなる。

 そして、ソムタム。

 細切りのパパイヤのシャキシャキと香辛料が、またステキにマッチして、そこにあるちょっと強めの辛みでさえ、刺激だけじゃなく、味の深みにつながっていく。そこにニョクマム(魚醤)ベースの味付けとオキアミが絡み合って……甘じょっぱく辛くて後を引く引く! 食べ進めるはしが止まらなくなるのだ!

 そして、そして、グリーンカレーはと言うと……。

 このタイを代表するような料理も、こちらにかかると、そのさらに上を感じさせるお味になる。

 こちらのグリーンカレーの特徴は、何と言っても野菜の味のよさ。仕込みや調理法が素晴らしいからなのだろう、ナスがこんなにゴロゴロして、キュキュっと音を立てながら、歯ごたえよく、味よく食べられるカレーはないだろう。タケノコも歯ごたえや味をしっかり残しつつ、お肉やカレーとよく合って……。

 またこちらのグリーンカレーの汁の部分が辛くて辛くて、それでいてうま味がぎゅっと詰まっているようなまろやかさと味の深さで……まさに、「たまらない!」

 その他にも、定番のカオマンガイやガバオライス、そして、忘れちゃいけないタイ風さつま揚げの素晴らしさ! ぎっしり詰まっている具にしっかり味がついていて、揚げたり、焼いたりするには、もってこいのさつま揚げなのである。

  • 「カオマンガイ」(800円)
    「カオマンガイ」(800円)
  • 「ガパオライス」(800円)
    「ガパオライス」(800円)

帰らないで、とつい思ってしまう

 朝でも昼でも、夜でも、こちらに来ると、ついついどれもこれもおいしそうで、やっぱり今日も頼みすぎてしまう。

 そして、つい、お弁当をお土産に持って帰りたくなる。

 そんな魔力というか、魅力をもった人気店なのだ。

 ただ、アロムさん、悩みがないわけではない。

「お父さん、2年前に死んじゃったノヨ。子供もいないし、ずっと日本にいるかどうか……タイ帰るかもしれない」

 確かに、もともとの故郷ではない日本。こういう極上のタイ料理を作るぐらいだもの。故郷のタイに帰りたくなるのもわかる。

キッチン
アロムさんのほかにスタッフは7名。

「ただ、ワタシ帰ったら、せっかくきちんと仕事してるウチのコたちに悪いでショ? だから、まだしばらくは続けようと思ってるケド……」

 そんな話を聞くと、胸の奥が熱くなってしまう。

 まさに、「J’s Store」のママにふさわしい言葉だ。

 そして、そうすると、まだしばらくは、こちらの絶品の料理の数々を食べることができる、ということになるわけで。喜びと共に、きっとまた、来ようと思う。

 それにしても、24時間営業で、定休日も決まっていないこちらのお店。休息の時間はあるのだろうか?

「そんなことナイ。ちょーっと休むヨ。お正月休むでショ。それから人が休んで、入る人がいないときも、チョット休憩って、休んだりしてるヨ」

 ああ、願わくば、素晴らしいママさんと、従業員・常連さんのみなさんに、幸、多からんことを。


●「J’s Store」(ジェイズストア)

神奈川県横浜市中区末吉町1-23 ボナールイセザキ1F
Tel.045-241-1709
営業時間:24時間
定休日:ほぼ無休
Webサイト:http://www.waiwaithailand.com/jsstore/

About 上荻吾朗 40 Articles
編集者 かみおぎ・ごろう 1964年生まれ。北海道出身。週刊誌記者、漫画編集者を経て、WEB製作会社で勤務。震災後、通勤困難を経験して、メタボ対策のためにも、自転車通勤をするようになる。おいしいものを食べることが何より好きな健康チューネン。いかにも飲めそうなヒゲ面のくせに下戸。