果糖ぶどう糖液糖とぶどう糖果糖液糖はどう違う?

調味料の原材料表示にある「糖類」
調味料の原材料表示にある「糖類」

異性化糖とは何かについて話し始めたリョウとタクヤ。異性化糖には「ぶどう糖果糖液糖」「果糖ぶどう糖液糖」があると聞いたリョウは、語順を変えただけの名称が別々にあることに引っかかったが。

ぶどう糖が多けりゃぶどう糖果糖液糖

リョウ 「来たか。ごくろう」

タクヤ 「今日は『はやぶさの日』ですね」

リョウ 「何だ。一式戦闘機か?」

タクヤ 「何言ってんですか。小惑星探査機の『はやぶさ』ですよ。3年前の今日の夜、あれが帰って来てくれたんですよ」

リョウ 「オレにとっちゃあ、ハヤブサと言ったら加藤隼戦闘隊だよ」

タクヤ 「と言うわけで、果糖ぶどう糖液糖のお話を」

リョウ 「うまい」

タクヤ 「お後がよろしいようで。さようなら~」

リョウ 「おいおい。先週の続きは、『果糖ぶどう糖液糖』と『ぶどう糖果糖液糖』は何がどう違うのか、その話だ」

タクヤ 「簡単ですよ。含有量、比率の違いで名称を分けてるんですよ」

リョウ 「と言うことは、果糖が多けりゃ『果糖ぶどう糖液糖』で、ぶどう糖が多けりゃ『ぶどう糖果糖液糖』ってことか?」

タクヤ 「ご名答でございます。これ、JASで決まってましてね」

リョウ 「日本農林規格、だな」

タクヤ 「異性化糖と言って説明してましたが、これに当たるものは、JASでは異性化液糖と言います。それの規格でいきますと、異性化液糖は3種類に分かれます」

リョウ 「ほう」

タクヤ 「糖のうち果糖が50%未満のものは『ぶどう糖果糖液糖』で、50%以上90%未満のものは『果糖ぶどう糖液糖』で、90%以上のものは『高果糖液糖』と言います」

リョウ 「果糖の比率で名前を違えてたんだ」

タクヤ 「で、ここで大事なことはですね、これらはいずれにせよ『果糖』と『ぶどう糖』と『液糖』の3種類の糖を混ぜたものではなくて、もともと『ぶどう糖』が多い『液糖』を異性化して一部が『果糖』になってますよ、ということです」

リョウ 「ははあ。この3つの糖には仲間はずれが一つあるな」

タクヤ 「と言うと?」

リョウ 「『液糖』は仲間はずれだね。『果糖ぶどう糖液糖』のうちの『液糖』は『これ全体は液糖ですよー』という意味の『液糖』で、その中に入ってるものとして『果糖』と『ぶどう糖』が頭にくっついてるわけだよ」

タクヤ 「わかったような、わからないような」

リョウ 「ウチのばあちゃんがさ、いつも『のりたま』のことを『のりたまふりかけ』って呼んでたんだよ。『のりたま』だけでいいって言ってるのに。その『のりたまふりかけ』って言ったときにね、中身には『のり』と『たま』は入ってるんだけど、『ふりかけ』は入ってないわな。『ふりかけ』だけ分類名、『のり』と『たま』は成分だよ」

タクヤ 「ああ、なるほど。私も今気がつきました。『果糖』と『ぶどう糖』が入ってる『液糖』ですと、そういうことですね」

リョウ 「まいったか」

タクヤ 「そういうことにしておきましょう」

デンプンから糖を作るのはどうやるか

リョウ 「しかし、『高果糖液糖』なんてものもあるんだな」

タクヤ 「いちおう、果糖含有率が高いほど高級ってことになっていますが、どれを使うかは用途と価格と相談ということですね」

リョウ 「前回の話だと、果糖が多いほうがより甘いんだから、高級って扱いになるだろうな」

タクヤ 「それだけじゃなくて、コストもかかってるわけですよ」

リョウ 「と言うと?」

タクヤ 「繰り返しになりますが、ほとんど『ぶどう糖』であったものを異性化して『果糖』の比率を上げていくわけです。ちょっと変えるよりもたくさん変えるほうが、時間とか材料とか燃料とか管理の手間とかがかかるだろうなと想像がつくじゃないですか」

リョウ 「そういうことか。で、その異性化って、どうやるんだ? いや、だいたいデンプンからぶどう糖作るのだって、どうやるのかわからんな」

タクヤ 「デンプンからぶどう糖は、小学校で実験やったでしょう。ご飯粒にヨウ素液をかけると紫色になるけれど、口に含んでくちゃくちゃやった後のご飯にはヨウ素をかけても紫色にならないって」

リョウ 「やったやった。唾液でデンプンが分解されてぶどう糖になるんだった」

タクヤ 「その唾液に含まれる酵素が、アミラーゼというやつです。工業的にデンプンをぶどう糖に変えるときも、そのアミラーゼを使います」

リョウ 「まさか工場で唾吐いてるわけじゃないだろうな」

タクヤ 「昔のお酒の作り方にはそういうのがあるんですよね。穀物を人が噛んで糖化して、それを酵母でアルコール発酵させるという」

リョウ 「飲みたくないな、それ」

タクヤ 「今はもちろんそんなことはしないで、工業的に作ったアミラーゼを使います。三共の創業者の高峰譲吉という人が明治時代に発明したタカジアスターゼというのがそれで、麹菌からアミラーゼを抽出したものだったそうです」

リョウ 「そうか。日本酒とかも米を酵母で発酵させる前に麹を使って糖化させるんだよな」

タクヤ 「それと、他にシュウ酸などの酸を使う酸糖化法というやり方もあります。これは糖化した後で酸を中和してろ過するという工程が必要です。昔はこっちが主流というか、工業的にはこれしか手がなかったようですね」

リョウ 「今はやらないのか?」

タクヤ 「なくはないんでしょうけど、高温高圧の釜が必要なのと、苦味が出たり、色がついたりという欠点があります」

リョウ 「それで酵素で、と」

タクヤ 「でもこれも簡単じゃなかったようですね。技術が確立されたのは戦後のことです」

リョウ 「で、ぶどう糖が出来たとして、それを異性化して果糖を得るというのはどうやるんだ?」

タクヤ 「これも酵素を使う方法と、アルカリを使って異性化する方法とがあります」

リョウ 「今度はアルカリか」

タクヤ 「ここから先は、また話が長くなるので、今日はこの辺で」

リョウ 「しょうがねえな」

北遥
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もの書き稼業 きた・はるか 理科好きの理科オンチ。