2013年食の10大ニュース[4]

2013年食の10大ニュース

【1】食品中のヒ素の含有量調査が実施される
【2】牛肉製品へのウマ肉混入について
【3】EUでネオニコチノイド類の農薬3種の使用制限が決定される
【4】オレゴンで遺伝子組換えグリホサート耐性小麦が検出される
【5】台湾産の澱粉加工製品からマレイン酸が検出される
【6】「OxyElite Pro」の使用後の急性肝炎および肝障害
【7】米国FDAが加工食品のトランス脂肪の低減化のために対応
【8】英国で新しいカラーコード食品栄養表示が開始される
【9】コーデックス委員会設立50周年
【10】EFSAがアスパルテームの完全リスク評価を完了

2013年食の10大ニュース

 海外の食品安全関連情報を紹介する「食品安全情報(化学物質)」の記事のなかからピックアップしました。番号を付けていますが順不同です(国立医薬品食品衛生研究所安全情報部第三室 畝山智香子・登田美桜)。

【1】食品中のヒ素の含有量調査が実施される

 現在注目されている食品中汚染物質の中でリスクが高いものの1つがヒ素である。

 オーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ)がオーストラリアで販売されていた海藻および海藻製品38検体について無機ヒ素の含有量調査を実施した。FSANZは、食事由来の無機ヒ素の摂取について、通常の食事では問題にならないが、ひじきを定期的に多量に摂取する場合には健康リスクが高くなると注意を喚起している。オーストラリア農林水産省(DAFF)はひじきをリスク食品と分類しており、100%検査対象にしている。

 また、米国食品医薬品局(FDA)は1000検体以上のコメおよびコメ製品についてヒ素(有機および無機)の含有量調査を実施した。

【2】牛肉製品へのウマ肉混入について

 欧州での今年1番の事件は、牛肉製品へのウマ肉混入であろう。

 リスクという観点では全く問題なかったが、アイルランドと英国を中心に欧州では食品製造への信頼を揺るがす大スキャンダルになった。この事件は、アイルランド国内の小売店で販売されていたビーフバーガーなどの牛肉製品からウマのDNAが検出されたことが発端であったが、その後は欧州全体の問題へと拡大し、現在はEU食品詐欺部門を設立しようとしている。

【3】EUでネオニコチノイド類の農薬3種の使用制限が決定される

 ミツバチのコロニー減少が数年前から世界中で問題になっている。原因は、ネオニコチノイド類などの農薬、寄生虫、ウイルスといったさまざまな要因が単独又は複合的に作用するためではないかと疑われているが、現時点では確実な原因は分かっていない。EUでは、1つの予防の可能性として、ネオニコチノイド類の3種の農薬(クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム)の使用制限を決定した。使用制限は2013年12月1日から発効し、新しい情報を得られた場合にはただちに、また少なくとも2年以内には、見直しを行う予定である。

【4】オレゴンで遺伝子組換えグリホサート耐性小麦が検出される

 オレゴンの農場で遺伝子組換えグリホサート耐性小麦が自生していることが発見され、我が国でも一部の米国産小麦の販売が停止されたという問題である(現在は販売再開)。

 自生していた小麦は、モンサント社が1998年から2005年に16の州で野外試験を認められたGEグリホサート耐性小麦と同じ品種であることが判明している。ただし、自生が確認されたのはこの一地域のみで、他の地域や流通上では確認されなかった。なぜ自生していたかの原因はわかっていない。

【5】台湾産の澱粉加工製品からマレイン酸が検出される

 台湾産の一部の澱粉加工製品から食品添加物として認可されていないマレイン酸が検出され、アジア各国で関連製品の販売禁止や検査が行われた。マレイン酸が検出されたのは、食感をよくするために澱粉に「無水マレイン酸」が違法に添加されたことが原因であった。添加された澱粉が加工食品の原料に使用されたため、影響が拡大した。

【6】「OxyElite Pro」の使用後の急性肝炎および肝障害

 今年最悪の食品による健康被害は、痩身または筋肉増強用として販売されたサプリメント「OxyElite Pro」の使用による急性肝炎および肝障害であろう。米国を中心に、死亡や肝移植を要する重篤事例を含む数十人の症例が報告され、現在も調査が行われている。

【7】米国FDAが加工食品のトランス脂肪の低減化のために対応

 FDAは、部分水素添加油(PHO:partially hydrogenated oil)が食品に使用できるGRAS(一般的に安全だと認識される:generally recognized as safe)ではないとする予備的決定を発表した。これは、PHOに含まれるトランス脂肪の摂取が冠動脈心疾患のリスク増加と関連するという懸念を受けての決定である。

 この決定について、「トランス脂肪が米国では禁止になる」という解釈が間違った報道記事をいくつか目にしたが、トランス脂肪は天然にも存在するもので食品中から完全に除去することができず禁止にはできない。今回の決定で対象にしているのはあくまでも「部分水素添加油」のGRAS認定である。

【8】英国で新しいカラーコード食品栄養表示が開始される

 食品の包装前面(FOP:Front of Package)に表示される栄養情報の記載内容について、抜本的な見直しが発表された。消費者が購入・喫食するものについて健康的な選択をしやすいようにするためである。標準化FOP表示には、総エネルギー、脂肪、飽和脂肪、糖、塩の各含有量、1日栄養摂取量ガイドライン値に占める割合とその高低を信号色で示すカラーコード、並びに高低の文字表示(高・中・低)などが採用されている。

 我が国でも食品表示の見直しが行われているが、食品のリスク低減化の基本はバランスよく、栄養摂取基準に添うような食事をすることであり、そのための取り組みとして英国での栄養表示の見直しは参考にできる点が多い。

【9】コーデックス委員会設立50周年

 コーデックス委員会は、国連食糧農業機関(FAO)および世界保健機関(WHO)が設置した政府間組織であり、現在は186カ国(うち1つはEU)が加盟している。1963年以降、加盟国および世界全体の食品安全および栄養を改善するための多数の規格基準を設定し、ガイダンスを提供してきた、コーデックス規格はときには“貿易の基準”としての見方もあるが、その主要目的は国際的に取引される食品の安全および栄養学的品質を確保することによる消費者の健康保護である。1995年にWTO/SPS協定(Application of Sanitary and Phytosanitary Measures:衛生と植物防疫のための措置)が、加盟国に対し、自国の規制をコーデックス規格にハーモナイズするよう呼びかけたため、その後はコーデックス規格が食品安全の国際基準となっている。

 我が国の規制も例外ではなく、特別な理由がない限り国際基準を自国の基準に適用することが求められる。そのため、コーデックス委員会においてどのような決定がなされるのか今後も注視すべきである。

【10】EFSAがアスパルテームの完全リスク評価を完了

 欧州食品安全機関(EFSA)は、甘味料であるアスパルテームの完全リスク評価を完了した。使用されている食品の範囲が広いためか非常に関心が高く、2011年にECから要請されて評価案が報告されてからも最終版になるまで度重なる延長が必要となり、ようやく完了した。当初の評価案と同様に、現在の一日摂取許容量(ADI)は一般の人々にとって保護的であるという結論であった。


《特別企画》2013年食の10大ニュース[一覧]

●これまでの「10大ニュース」
《特別企画》2012年食の10大ニュース[一覧]
《特別企画》2011年食の10大ニュース[一覧]
《特別企画》2010年食の10大ニュース[一覧]

登田美桜
About 登田美桜 37 Articles
国立医薬品食品衛生研究所安全情報部第三室主任研究官 とだ・みおう 農学博士。国立医薬品食品衛生研究所は、医薬品、食品、その他生活環境中に存在する物質について、品質、安全性、有効性を評価するための試験、研究、調査を行う機関。 安全情報部の「食品安全情報」は、食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報を伝える。