ウコン摂取のリスクと注意喚起

No.15(2022.07.20)

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。英仏の3つの機関が、ターメリック(ウコン)とそのサプリメントに関する記事を報告した。欧州各国ではターメリック摂取に関する注意が喚起されている。ロシアによるウクライナ侵攻の結果起こり得る食品や飼料供給不足に対処するための、国家リスク管理対策に関する議論を支援するための資料を提供している。

注目記事

【FSA/COT/ANSES】ターメリック含有サプリメントについて

 3機関が、ターメリック(別称:ウコン)およびそのサプリメントに関する記事を報告。

▶英国食品基準庁(FSA):市販のターメリックおよびそのサプリメントに含まれるクルクミンとピペリンの分析法開発と濃度調査の結果を報告した。

▶英国毒性委員会(COT):ターメリックサプリメントによる健康リスクに関して、今年3月に開催された前回会合以降の最新情報を対象に、FSAの調査結果も含めてレビューを行った。COTは以前と同様に、ターメリックをサプリメントとして多量摂取した場合には許容一日摂取量(ADI)を超過する可能性があり、ADIの大幅な超過はヒトへの健康リスクとなり得ること、とくに、他の医薬品を併用している場合と、肝胆道機能が変化している人ではリスクとなる可能性が高いと述べている。

▶フランス食品・環境・労働衛生安全庁(ANSES):ANSESのニュートリビジランス計画では、ターメリックやクルクミンを含むフードサプリメントの摂取に関連する可能性がある100件以上の有害事象報告(15件の肝炎報告を含む)を受け取っている。最近の製品は従来品に比べて、ピペリンなどの他の成分との混合や、形状の変更などによって生物学的利用能を高めるよう製造されていることが多く、そのために有害影響が誘発される可能性があると注意を呼び掛けている。

※ポイント:イタリアで2018年12月から2019年6月の間にターメリック含有サプリメントの摂取に関連した肝臓毒性が27件報告されたことを理由に、EFSAが2019年の新興リスク問題の一つに同定していました。その後、欧州各国ではさまざまな取組を行うとともに、摂取に関する注意が喚起されています。

参考:食品安全情報(化学物質)No.20/2020(2020.09.30)

【EFSA】2019年の新興リスクに関するEFSAの活動

http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2020/foodinfo202020c.pdf

【EFSA】ロシアによるウクライナ侵攻の結果起こりうる食品や飼料供給不足に対処するための、国家リスク管理対策に関する議論を支援するための技術的援助

 ロシアのウクライナ侵攻によりサプライチェーンが遮断されたため、飼料用の小麦や大麦等が不足する可能性あり、EUでは代替の輸入先を見つけるための措置を講じることになった。しかし、EUが設定している農薬の最大残留基準(MRLs)が厳しく、輸入先の変更により問題が生じる可能性がある。そのため、関連規則の特例規定のもと加盟国が国の暫定MRLsを設定することが想定される。欧州委員会の依頼を受けて、欧州食品安全機関(EFSA)が、Codex MRLs(CXL)を国の暫定MRLsとして導入する加盟国を支援するために、とくに問題となる品目についてEU MRLsとCXLの比較表を提供した。

※ポイント:国際基準となるCodex MRLsとの比較表を作成したということが一番のポイントでしょう。さらにEFSAは、MRLを比較するだけでなく、農薬/品目の各組み合わせについてCodex MRLsの利用を検討する際の注意点を細かく書いており、検討時にどのような視点を持つべきなのか、またEUのMRLs設定の経緯や現状も知ることができるので、我々にとっても参考になります。

(安全情報部第三室)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.15(2022.07.20)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2022/foodinfo202215c.pdf

今号の目次

【WHO】
1. 非砂糖甘味料の使用に関する WHO ガイドライン案にパブリックコメント募集を開始するイベント
2. 第10回国際鉛中毒予防週間の準備
3. 世界化学物質及び健康ネットワークバーチャル会合-WHO 化学物質ロードマップ履行の進捗

【FAO】
1. Codex

【EC】
1. ACN年次報告書2021
2. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. セルビアの10–74歳の個人の全国食品摂取量調査
2. ロシアによるウクライナ侵攻の結果起こりうる食品や飼料供給不足に対処するための、国家リスク管理対策に関する議論を支援するための技術的援助
3. OpenFoodTox:化学的ハザードデータベース
4. YouTube 動画
5. 香料関連
6. 飼料添加物関連
7. 食品接触物質関連
8. 食品酵素関連

【FSA】
1. ターメリック調査
2. 食品表示に対する消費者の反応:迅速なエビデンスレビュー

【DEFRA】
1. 複数年グレート・ブリテン残留農薬管理計画
2. 食品中残留農薬:2021四半期モニタリング結果

【COT】
1.2022年7月12日の会合

【DWI】
1. 情報文書03/2022PFAS ガイダンス

【ASA】
1. HFSS 製品の広告規則について美味しい再確認
2. ASA 裁定

【BfR】
1. おもちゃのスライムと高弾性パテのホウ素化合物の健康リスクは低い
2.「スーパーフード」は実際どのくらいスーパー?
3. 細胞はマイクロプラスチック、ナノプラスチックにどう反応するのか?

【RIVM】
1.「食品安全シグナリング協議」2021年次報告書
2. 食品の亜鉛一般強化への助言
3. スーパーマーケットと屋外部門で5つの輪(Wheel of Five、食事ガイドライン)の販売にスポットライト。モニター設定の助言

【ANSES】
1. ターメリックを含むフードサプリメント摂取に関連する有害影響2. 大気汚染物質への暴露を測定するのにマイクロセンサーはどのくらい有用?
3. 学用品の有害物質の規制改善

【FSAI】
1. 食品組成変更タスクフォース、3つの新たな報告書を発行する
2. リコール情報

【Ruokavirasto】
1. フィンランドの食品安全2021

【FDA】
1. FDA は水産物の PFAS 検査結果を共有
2. FDA は米国の両親と介護者のための乳児用調製乳の選択肢を継続的かつ拡大的に提供するための新たな枠組みを開発する
3. FDA は動物用食品のハザード分析及び予防的管理に関する FSMA ガイダンスを最終化する
4. FDA は輸入乳児用調製乳製品に対する信頼性を高めるため、保護者向け教育資料を提供する
5. FDA は食品分析のための試験所認定プログラムにおいて認定された認定機関の公開登録を発表した:試験所は現在申請可能
6. 消費者情報:FDA は食品の腐敗と汚染を防止する
7. 有害事象報告の調査:French Lentil & Leek Crumbles(2022年6月)
8. 警告文書
9. リコール情報

【NTP】
1. ニュースレター

【NIH】
1. メラトニン:知っておくべきこと

【CFIA】
1. What we heard 報告書:カナダ政府の魚介類製品の船から皿までのトレーサビリティに関する協議
2. 刺された痛み:蜂蜜詐欺が養蜂家に与える影響
3. レッドパーム油中の認可されていない食品着色料―2020年4月1日〜2021年3月31日
4. 肉・魚介類の缶詰中のビスフェノール A 及び BPA 代替物―2017年4月1日〜2018年
3月31日

【FSANZ】
1. 食品基準通知

【NSW】
1. リコール情報

【MPI】
1. リコール情報
1. プレスリリース
2. 違反情報

【MFDS】
1.日本産輸入食品の放射能検査の結果
2. 食薬処、「夏季国民関心食品・医薬品」オンライン違法行為を摘発
3.「食品の点字表示などに関するガイドライン」を用意・配布
4. 栄養成分データを標準化して6月に46000件公開、デジタルヘルスなど多様な産業で活用拡散を期待
5.「タイ産氷菓、中国産昆虫加工食品」に対する輸入者検査命令を施行
6. ティラピアを鯛と偽り販売した行為に対する企画点検の結果発表
7.「認知症予防」など病気予防・治療に対する不当広告の点検結果
8. 夏の野生キノコ摂取による食中毒事故に注意が必要

【SFA】
1. リコール情報

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から3件