2019年食の10大ニュース[1]

 Gゼロ世界の歩き方。

  1. 働き方改革と新リストラ時代
  2. コンビニ・ビジネス曲り角
  3. 自然は強く怒っている
  4. クジラは口に入るか
  5. 貿易自由化を推進すべき
  6. 消費税10%に統一したい
  7. 飲食店倒産が過去最多
  8. ゲノム編集食品は無表示でよいか
  9. 食品ロス削減法成立
  10. 豚コレラ拡散

     多くの国民に祝福され、新天皇が即位された。「令和」時代のスタートである。ラグビーWカップが開催され、日本はベスト8の素晴らしい成績だった。日本中が盛上がり、「ONE TEAM」(ワンチーム)が2019年の新語・流行語大賞に選ばれた。今年の漢字「令」とともに納得したものである。

     昨年の本庶佑氏のノーベル生理学・医学賞受賞に続き、今年は吉野彰氏(旭化成名誉フェロー)がノーベル化学賞を受賞され、そのニュースをうれしく受止めた。

     訪日客増による弊害を緩和して、来年のオリンピック・パラリンピックを成功させたい。

     働き方改革関連法と食品ロス削減法成立にも触れておこう。

     国際情勢は難しい状況が継続している。中西輝政氏(京都大学名誉教授)はこの状態を「競争的多極化」と呼んだ。日本は現状変更勢力への対応に「協調的な多極世界」を目指す外交的努力を図りつつ、日米同盟と自力の強化が必要と説く。正論と考える。

     一方、国際政治学者イアン・ブレマー氏は現状を「G7」ならぬ「Gゼロ」と表現した。筆者はこの言葉から「0G」→「ゼロ・グラビティ」という映画を思い出した。「G7」ならぬ「Gゼロ」のGはgroupのGだが、「0G」のGはgravity(重力)である。映画では宇宙空間での船外活動中の事故によって宇宙に放り出された宇宙飛行士が地球に帰還するまでを描いている。宇宙飛行士は絶望的な状況であっても、冷静沈着に行動できるよう訓練されている。各国トップには、国民のために同じことが求められると思う。ただし、どれだけの方が合格レベルに達しているだろうか。

     上記動向に配慮して、食関連ニュースを選択した。

    1. 働き方改革と新リストラ時代

     働き方改革関連法の適用が始まった。これに関連して、業績良好なのに40〜50代を対象にリストラを行う会社が増えた。食品関連では、キリンHDを筆頭に、ファミリーマート、セブン&アイHD、味の素(管理職)等だ。

     業態の構造変化が予想される。社員には、普段から、自身のキャリアは自分が作る姿勢(キャリアオーナーシップ)が求められる。筆者は何とかやれて来たと言えることをありがたく思う。

    2. コンビニ・ビジネス曲り角

     人手不足を背景に、コンビニ業界は従来のビジネスモデルの再構築が求められている。外食同様に外国人店員が増えたが、覚えなければならない店舗業務は膨大である。心の中で「ガンバレ」と彼らを応援している。多頻度少量配送は限界であり、共同配送の効果も限定的だろう。

     棚の欠品を認めるべきで、消費者もその状態を許容したい。また、業界の雄・セブン-イレブンの不手際が目立ち残念だ。加盟店とのトラブル、セブンペイ失敗、残業代未払い等がある。

    3. 自然は強く怒っている

     夏季の天候不順に、豪雨や台風襲来が重なった。農作物を含め大きな被害が発生した。想像以上のマイクロプラスチック汚染が明らかになったが、レジ袋有料化は延期された。

     欧州では40℃超の猛暑が続き、ヴェニスが水没した。食肉を避ける動きが加速し、人工肉が外食で採用された。環境ヒロインのグレタ・トゥンベリ氏が活躍したが、COP25はルール作りの合意に至らず。最新の石炭火力発電は高効率で、CO2回収・貯留システムが完成間近だ。安易に否定できない。

    4. クジラは口に入るか

     日本はIWC脱退という道を選択。捕鯨に無関係な国が多いなか、理解できる。商業捕鯨の再開により、安価にクジラを食べたいものだ。それ以上に、クジラ資源が増えており、適切な捕鯨が漁獲資源保護になることを国際社会に科学的データでアピールしたい。

     日本発の水産管理規格が国際機関で承認される見込みである。従来の水産エコラベルも活用して持続的な資源確保を図りたい。今年は記録的なサンマ不漁で悲しかった。

    5. 貿易自由化を推進すべき

     自国優先の保護主義的な傾向が強まるなか、昨年TPP11・日欧EPAが発効し、関税の引下げが始まった。ワインやチーズの値下げで消費者は恩恵を受けたはずだ。今年は日米貿易交渉が最終合意に至った。貿易立国のわが国は自由化を推進すべきである。

     国内農業には逆風となるが、体力をつけて立ち向かいたい。シンガポール等で日本産農水産物の禁輸が解けたことは朗報で、和牛等の輸出増につなげたい。

    6. 消費税10%に統一したい

     10月、消費税がUPされた。これを機にカード決済普及が進んでいる。問題は一部商品が8%に止められたことにある。これにより、イートイン脱税等の大きな混乱が発生している。レジの構造や経理処理等の社会全体における負担は少なくない。10%に統一したい。

     増税の影響が出ている。コンビニはおおむね好調で、外食は不調と聞く。後者は、残業削減で早期帰宅が関係している。財布の紐が堅くなっているのは確かである。

    7. 飲食店倒産が過去最多

     外食チェーン店は体力があるが、零細な飲食店の倒産が過去最多になるという。消費税UPによる中食・内食増加による影響に加え、人手不足、従業員の高齢化、後継者問題、キャッシュレス対応、喫煙対策(改正健康増進法施行)等の課題が山積しているからだ。

     業態別では居酒屋、ビヤホール、西洋料理店、中華料理店の倒産が多く、すし、天ぷら等の日本料理店は少ないという。チェーン店だが、「いきなり!ステーキ」は大丈夫かな。

    8. ゲノム編集食品は無表示でよいか

     ゲノム編集食品の流通が始まる。遺伝子を破壊するゲノム編集は通常の突然変異と区別できないため、表示不要が決定した。ただし、表示を行うべきと考える。

     多くのリスコミが進行中である。研究者は積極的に情報を公開し、遺伝子組換え食品との違いと消費者のメリットを丁寧にアピールしたい。有機JASでは認めない方向で検討中というが、含有を客観的に確認できないのに規制は無理である。

    9. 食品ロス削減法成立

     食品ロスの半分は家庭で発生している。本法の効果を挙げるには市民へのアピールが極めて重要で、教育も同様である。食べる行為は他の生物の命を「いただきます」という意味を子供たちに伝えたい。期限間近商品のポイント還元がコンビニで試験されている。

     今後、農薬等の基準値超の食品も大部分が問題なく、各国では流通可能なことを市民に周知したい。デパ地下は閉店前でも最低陳列量の強制があり、食品ロスになっている。

    10. 豚コレラ拡散

     昨年、岐阜県で発生した豚コレラが中部・関東地方に拡散した。最初の養豚場の対応に遅れがあった模様だ。農林水産省は呼称を、豚コレラはCSFに、侵入懸念のアフリカ豚コレラはASFに変更した。

     養豚向けワクチン接種を進めており、野生イノシシにも経口ワクチンを散布している。清浄化を達成した北米・オーストラリア・スウェーデンの事例を参考にしたのだろう。他の病原菌がいつ侵入してもおかしくない。畜産農家は備えを確かにしてほしい。


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    About 横山勉 99 Articles
    横山技術士事務所 所長 よこやま・つとむ 元ヒゲタ醤油品質保証室長。2010年、横山技術士事務所(https://yokoyama-food-enngineer.jimdosite.com/)を開設し、独立。食品技術士センター会員・元副会長(http://jafpec.com/)。休刊中の日経BP社「FoodScience」に食品技術士Yとして執筆。ブログ「食品技術士Yちょいワク『食ノート』」を執筆中(https://ameblo.jp/yk206)。