2014年食の10大ニュース[3]

  1. 価格アップ続々で外食デフレ脱却か
  2. 人手不足克服に向け雇用対策に新展開
  3. チキン問題でマクドナルドが大苦境
  4. “ブラック対策”が重要なテーマに
  5. コンビ二に蚕食されたコーヒー市場
  6. 肉ブームの次のトレンドは「ジビエ」
  7. 日本にも到来した「サードウェーブ」
  8. 日本料理のコースは5000円が新基準
  9. 勢いを増す和の専門店チェーン
  10. すかいらーく再上場。課題は成長性

1. 価格アップ続々で外食デフレ脱却か

「吉野家」が牛丼並を80円アップ、「すき家」の牛すき鍋定食は150円以上アップして再登場と、外食デフレを牽引していた牛丼チェーンは大胆な価格引き上げを実施。円安による仕入コスト増や人手不足に伴う人件費負担増などが大きな要因だが、消費増税時に続く短期間での価格引き上げに消費者の反応はどう出るか。来年以降が正念場だ。

2. 人手不足克服に向け雇用対策に新展開

 業界として慢性的に人手不足であったところに、アベノミクスによる雇用増加の余波を受けてさらに採用難に。「スターバックスコーヒー」がパートタイマー800人の正社員化に踏み切ったり、エリア限定社員の積極採用(すかいらーく、壱番屋、リンガーハットなど)の動きが出るなど、外食はより踏み込んだ雇用対策に迫られている。

3. チキン問題でマクドナルドが大苦境

 上海福喜食品の食品消費期限切れ問題の発覚以降、日本マクドナルドは既存店売上げが2ケタの大幅ダウンで今期の赤字転落が確実に。サラ・カサノバ社長がファミリー回帰の方針を打ち出していただけに、店舗イメージの悪化はより深刻。中国のトンデモサプライヤーがしでかしたこととは言え、安全対策の重要性を再認識させられることになった。

4. “ブラック対策”が重要なテーマに

 苛烈な労働環境が問題になったゼンショーの「すき家」は人員不足で営業時間短縮へ。同じくブラック批判にさらされたワタミも居酒屋業態100店の大量閉店に追い込まれた。ゼンショー、ワタミはいずれも赤字転落の見込みだが、2社だけの問題で片付けてはいけない。労務問題に正面から取り組んでこなかった外食業界全体の課題と捉えたい。

5. コンビ二に蚕食されたコーヒー市場

「セブン-イレブン」が年間4億杯を売った「セブンカフェ」に代表されるコンビニエンスストアの淹れたてコーヒーが大ヒット。「ドトールコーヒーショップ」などセルフのコーヒーショップ業態の市場を蚕食している。「セブン-イレブン」はさらに1個100円前後のドーナツの販売を開始。コンビ二の“軽食ニーズ攻略作戦”からは目が離せない。

6. 肉ブームの次のトレンドは「ジビエ」

 ジビエ(野生獣肉)を核商品に据えた新しいレストランが次々に台頭。国産ジビエの普及もあって、これまで好事家向けのマニアックな料理であったジビエのイメージが変わってきた。独特のクセを抑えて幅広い客層に受け入れられるメニューを開発したり、ジビエを売り物にした新しい業態も誕生。熟成肉に続いて日本の肉食文化を変える動きに。

7. 日本にも到来した「サードウェーブ」

 米国発祥のコーヒー文化である「サードウェーブ」が日本にも到来。コーヒー豆それぞれが持つ香りや味わいなどの個性を重視した、いわゆる“シングルオリジン”に特化したコーヒー専門店が支持を集めた。品ぞろえや売り方に各店各様の独自性を打ち出す事例が次々に登場し、コーヒーのマーケットに新しい流れをつくりつつある。

8. 日本料理のコースは5000円が新基準

 世界文化遺産登録で活気づく和食の世界に、新勢力が台頭している。それが、コースで5000円前後と低価格ながらしっかりした内容の料理を提供する日本料理店。多くは10~20席の個人店だが、仕入れ努力やロスを出さない献立の工夫で低価格を実現。これまで日本料理とは無縁だった若い客層も吸収し、和食市場の裾野を拡大している。

9. 勢いを増す和の専門店チェーン

 実に3年近くも既存店売上げが伸びている天丼の「てんや」、2014年の新規出店が50店という勢いのとんかつの「かつや」など和の専門店チェーンが急成長。定食の「大戸屋」も300店を超えてなお既存店は堅調。高齢化で和食のニーズが高まっていることに加え、気軽に「WASHOKU」を楽しめる店として訪日外国人客に支持されている側面も。

10. すかいらーく再上場。課題は成長性

 すかいらーくが2014年10月に東証第一部に再上場。大株主のファンドを儲けさせただけ、という見方もあるが、テーブルサービス業態で最大の店数を持つ企業が「社会の公器」として再スタートしたことには意義がある。課題は、かつて同社が生み出した消費者のライフスタイルを変えるような新しい業態、ビジネスモデルを創れるかだ。

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About 土肥大介 6 Articles
柴田書店代表取締役 とひ・だいすけ 1987年明治大学卒業。柴田書店入社。「月刊食堂」編集長を経て、2005年代表取締役就任。