食品中の水分の状態には2通りがある

自由水
自由水。コップを倒さないように。

自由水
自由水。コップを倒さないように。
するめ、せんべいが腐らない理由を説明する前に水を飲んで帰ってしまったタクヤ。ポイントはその水にあるということから、話は食品中の水の状態の話になる。

ぶっちゃけ、乾いてるからですよ

リョウ 「来たか。ごくろう」

タクヤ 「木曜日に来る予定でしたが、北遥が「『マクドナルド』の話はさっさと決着つけて」って言うので、このネタ終わるまでは火曜日も来ることにしました。

リョウ 「ごくろう、ごくろう」

タクヤ 「いやあ、喉渇いちゃって。水ください」

リョウ 「よく喉渇くやつだな。お前、この前も水飲んで帰ったな。糖尿とか大丈夫なのか」

タクヤ 「健診では大丈夫でした」

リョウ 「ほらよ。あ、ところで編集長から『干し飯(糒)のでん粉はα化されていないのでα化米とは違います』と指摘されたぞ」

タクヤ 「たいへん失礼いたしました(スルーして掲載したくせに)。ご指摘ありがとうございます(ぺこり)」

リョウ 「以後気をつけるように。ほんじゃ、さっそく、ほっといても腐らない食べ物が腐らない理由を説明してもらおうじゃないか」

タクヤ 「“循環定義”の例文みたいにヘンな言い方ですね。ドライフルーツ、米、小麦、トウモロコシ、豆類、するめや干物、あられ・せんべい、乾パン、煮干し、干し飯(糒)、そういうものが腐らない理由ですね。説明しましょう」

リョウ 「待ってました」

タクヤ 「理由はいろいろあります」

リョウ 「(ガクッ)殴られたいか」

タクヤ 「まあ、まあ。そのいろいろある理由の中で、いちばん決定的で、どれにも共通することを説明しましょう」

リョウ 「よし」

タクヤ 「乾いてるからですよ」

リョウ 「オイ! そんな話かよ。でもな、あられ・せんべいはかなり乾いてるけど、ドライフルーツはけっこうしっとりしてるぞ。炊く前の米だって、13~16%程度の水分を持っているものだ」

タクヤ 「米の含水率、詳しいですね」

リョウ 「日本は米を高含水率の状態で流通する仕組みを持っていて、だから米がうまくて、でもアメリカではもっとカラカラの状態で収穫・流通する仕組みしかなくて、だからTPPでもアメリカから飯米がどっと流れ込むことはないと、農業技術通信社の昆吉則社長が説明してた」

タクヤ 「セミナー行ったんですか」

リョウ 「うん」

タクヤ 「TPPの話をするとこんがらかるし、この連載と関係のないツッコミも来るのでやめときましょう」

リョウ 「わかった」

自由な水と不自由な水がある?

タクヤ 「水分を割と多く含んだもので腐らないものっていうのは、確かにあります。だから、乾いているから、というのは説明としては正確じゃないかもしれませんね。自由水と結合水の話をしましょう」

リョウ 「何? 自由のために団結?」

タクヤ 「いやいや。水の入ったコップを倒すと、どうなりますか?」

リョウ 「こぼれるよ」

タクヤ 「さてお立ち会い。その同じ量のコップの水に、ゼラチンを溶かして固めたとしましょう。これを倒すと、どうなりますか?」

リョウ 「こぼれないよ」

タクヤ 「その、こぼれる水を自由水と呼びます。遊離水とも言います。で、こぼれない方の水を、結合水と呼びます」

リョウ 「ふーん。結合水というのは、何かとくっついてる水、ってことだな?」

タクヤ 「ま、そういうことです。系と言いますが、何かまとまったものの中で、同じように水があっても、それがコップに汲んだままの水のように自由に動き回ることができる自由水と、そうではない結合水があるわけです。結合水は、自由水よりも蒸発しにくかったり、凍りにくかったりという特徴があります」

リョウ 「なるほど。蒸発しにくいから、ドライフルーツや穀物が、ある一定レベルよりもカラカラにはなりにくいっていうことでもあるのかな」

タクヤ 「周りの湿度や温度にもよりますがね。干し柿1個に含まれる量の水を小皿に注いで放置しているときよりは、蒸発しにくいでしょう」

リョウ 「ははあ。そうか。ドライフルーツとか穀物とか干物とかせんべいとかに含まれる水は、結合水だというわけか」

タクヤ 「そうです。そして、結合水には、食品衛生上興味深い、もう一つの特徴があります」

リョウ 「ほう」

タクヤ 「それはまた次回お話します」

リョウ 「ほう」

●このシリーズの第1話
「マクドナルド」ハッピーセットが腐らない話について

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もの書き稼業 きた・はるか 理科好きの理科オンチ。