グラパラが呼び覚ました古い記憶

先週、母が「友達にもらった」とグラパラを持ってきた。トゲのないアロエのような、細長いカネノナルキの葉のような、熱帯植物園で見たことがありそうな肉厚の葉。パンフレットではカルシウムの吸収のよさを強調している。


観葉植物の葉のようなグラパラ。
観葉植物の葉のようなグラパラ。

「うさんくさいなー」というのは正直な第一印象だが(なんら根拠はない)、パンフレットに映っている水耕栽培の施設がきれいで、ちょっとひかれる。

 グラパラを水洗いして、何もつけずに食べてみる。ウレタンのスポンジのように軟らかく、唇でポリッと音がするように折れる。断面の縁には、玉ネギの皮のようなセロファン状の薄膜が見える。はかないほど軟らかい葉で、微かな渋みと、ほんのりとした酸味で、葉ものというより、果実を思わせる風味。

 子供の頃、カンケリオニ(缶蹴り鬼)をしている最中、身を隠した隣家の軒下でグズベリーを摘んで口に入れたときのこと。友人の家のそばの、通称「裏山」で飛び上がって取ったヤマブドウを恐る恐る食べてみたときのこと。そんなことなどを思い出した。

 食べ物については、栄養よりも、味の良さよりも、そういう記憶をたぐり寄せるような機能のほうに、なぜか興味が行ってしまう。

グラパラの葉は、「ポリッ」と折れる。
グラパラの葉は、「ポリッ」と折れる。

※このコラムは個人ブログで公開していたものです。

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About 齋藤訓之 398 Articles
Food Watch Japan編集長 さいとう・さとし 1988年中央大学卒業。柴田書店「月刊食堂」編集者、日経BP社「日経レストラン」記者、農業技術通信社取締役「農業経営者」副編集長兼出版部長等を経て独立。2010年10月株式会社香雪社を設立。公益財団法人流通経済研究所特任研究員。戸板女子短期大学食物栄養科非常勤講師。亜細亜大学経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科非常勤講師。日本フードサービス学会、日本マーケティング学会会員。著書に「有機野菜はウソをつく」(SBクリエイティブ)、「食品業界のしくみ」「外食業界のしくみ」(ともにナツメ社)、「農業成功マニュアル―『農家になる!』夢を現実に」(翔泳社)、共著・監修に「創発する営業」(上原征彦編著ほか、丸善出版)、「創発するマーケティング」(井関利明・上原征彦著ほか、日経BPコンサルティング)、「農業をはじめたい人の本―作物別にわかる就農完全ガイド」(監修、成美堂出版)など。※amazon著者ページ →