映画の中のチョコレート(その1)「フォレスト・ガンプ/一期一会」

バス停のフォレスト(絵・筆者)
バス停のフォレスト(絵・筆者)
バス停のフォレスト(絵・筆者)
バス停のフォレスト(絵・筆者)

今回は10日後に迫るバレンタインデーにちなんで、チョコレートにかかわりのある作品を取り上げる。

人生はチョコレートの箱

 チョコレートはその甘さと食感ゆえに映画の中では人生を豊かに彩る菓子として描かれることが多い。「フォレスト・ガンプ/一期一会」
(1994)はそんな作品の代表格である。

 守護天使の落し物と思しき白い羽根が上空から風に乗って主人公フォレスト・ガンプ(トム・ハンクス)の足元に舞い降りるまでをワンカットで捉えたシーンで始まる本作は、彼がバスを待つベンチで居合わせた人々にこれまでの半生を語り聞かせる回想形式で進行する。その最初の一人である黒人女性にチョコレートを薦めていうのが次のセリフである。

“Life is like a box of chocolates. You never know what you’re gonna get.”

(人生はチョコレートの箱のようなもの、開けてみるまで中身はわからない)

 フォレストは生まれつき知能指数が低く、背骨が歪んでいるため脚装具を付けないとまともに歩けなかったが、母(サリー・フィールド)はそんな彼を特別扱いせずに女手ひとつで育て上げた。チョコレートのセリフは、その母の息子への励ましの言葉の一つである。

 アメリカではミルク、ナッツ、ヌガーなどいろいろな味のチョコレートのランダムな詰め合わせが売られていることが多い。ここで言うチョコレートの箱とはそれのことで、開けて食べてみないと中身がわからないことを先読みのできない人生のたとえとして、ハンディキャップを背負ったフォレストにも希望があることを教えていた。

 彼の人生はこのセリフに象徴される波乱万丈の軌跡をたどる。

 母の愛情を受けて天真爛漫に育ったフォレストは、ある日いじめっ子に追いかけられていると、突然脚装具が外れて信じられないスピードで疾走し始める。走りながら脚装具が外れていく様子をスローモーションでとらえた映像は、彼を拘束し束縛していたものから解放されて眼前に拡がる自由な世界に跳躍して行くかのように見える。

 彼はその俊足を生かして大学ではフットボール選手として活躍し、従軍したベトナム戦争では銃弾飛び交う戦場を駆け抜けて命拾いし、復員後にビジネスで成功した後はアメリカ大陸を走って何往復も横断して一躍時の人となるのである。

豆とニンジン

 そんな彼とは対照的な人生を送るのが彼の幼馴染で運命の人であるジェニー(ロビン・ライト)である。

 フォレストと小学校のスクールバスで出会った彼女は、母以外に彼をバカにしなかった唯一の味方として、フォレスト曰く「豆とニンジンのようにいつも一緒」の関係になる。これはアメリカの家庭料理ではシチューなどを煮込む時に豆とニンジンは必ず入る定番の食材であることから、切っても切れない関係を示す諺である。

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映画ウォッチャー 埼玉県出身。子供のころからSF映画が好きで、高校時代にキューブリックの「2001年宇宙の旅」を観たところ、モノリスに遭遇したサルの如く芸術映画に目覚め、国・ジャンルを問わない“雑食系映画ファン”となる。20~30代の一般に“青春”と呼ばれる貴重な時をTV・映画撮影現場の小道具係として捧げるが、「映画は見ているうちが天国、作るのは地獄」という現実を嫌というほど思い知らされ、食関連分野の月刊誌の編集者に転向。現在は各種出版物やITメディアを制作する会社で働きながら年間鑑賞本数1,000本以上という“映画中毒生活”を続ける“ダメ中年”である。第5回・第7回・第8回の計3回、キネマ旬報社主催の映画検定1級試験に合格。第5回・第6回の田辺・弁慶映画祭の映画検定審査員も務めた。