検証・渥美俊一氏のチェーンストア理論(8)業態分類の異常

渥美式チェーンストア理論では、業態を価格レンジで分類する方法がとられる。その個々の価格レンジ分類は実際にはあいまいな形で表現されている。その上で、チェーンをそれぞれの価格レンジに収めてとらえて業態を分類する。この場合、異なる業態を同じ業態に、同じ業態を異なる業態に、認識してしまう誤りを犯す危険がある。

業態を価格レンジで分類する方法

 渥美式チェーンストア理論のユニークな点は、価格レンジで業態を分類するという考え方にもあります。システマチックに分類され、しばしばマトリクスで示されるものですが、私はこれにも違和感を感じます。

 というのは、すべてをやはり価格で分けている点です。価格レンジを低い方から、アフォーダブルプライス、ロワープライス、ミドルプライス、アッパープライス、ベタープライス/モデレートプライス、ベストプライスのように分けて、どの価格レンジのものが多い売場であるか、外食産業であれば客単価がどの価格レンジに収まっているかで業態を分けることが、渥美式チェーンストア理論の基礎の一つになっています。

 これらロワー、ミドル、アッパー、ベストなどは、資料によって具体的な価格が数字で示される場合もありますが、通常は数字ではなく言葉で説明されます。たとえばアフォーダブルプライスは「財布から躊躇なく出せる価格。週刊誌1冊、タバコ1箱の価格に相当」のようにです。ただし、たとえば週刊誌やタバコの価格を誰がどのように決めたかについては、あまり関心をお持ちではなかったようです。これはその上の価格レンジについてもそうです。

 渥美式チェーンストア理論では、このそれぞれの価格レンジに、それぞれ複数の業態を対応させています。たとえば、ロワープライスに対応する業態は「ディスカウント・ハウス」「メンバーシップ・ホールセール・クラブ」などというようにです。

異なる業態を同じ業態にくくっている

 ここで感じる違和感の例ですが、ミドルプライスに対しては「スーパーマーケット」と同時に「スーパー・スーパーマーケット」も対応させています。異なる業態名を示しているということは、異なる販売のあり方の異なるビジネスであるという認識はお持ちなのですが、これを同じ価格レンジにある業態だから同種のものと見たい衝動が、渥美式チェーンストア理論による分類法には隠されているのです。

 また、「コンビニエンス・ストア」はアッパープライスに対応させています。つまり、「商品の値段がスーパーよりも高い店」と認識せよというわけです。しかし、コンビニエンスストアの利用のあり方は、人によっても、そのときどきの事情によっても異なります。富裕な人もそうでない人も、「ちょっと足りないものを買いに来た」という使い方でも「夕食で食べるもの、使うものをいろいろ買おう」という時間をかける使い方でも利用できます。レジで支払う金額もさまざまです。

価格だけで業態を理解するのは無理

 私は、本来、価格だけで顧客像やショッピングの目的や様子などを分類することはできないと考えています。もちろん、それぞれの商品の価格設定に頭を使うことは大切ですが、価格を業態分類の軸としてしまうと、分けられないものを分け、分けるべきものを一緒に考えるようになってしまうのです。商品の価格も、平均的なレジ単価・客単価も、ある業態が持つ特徴の一つにすぎません。

 たとえば、「ユニクロ」を「安い服の店」という認識で、「無印良品」を「いろいろなオリジナル商品をいい値段で売っている店」と認識するのに留まれば、全く本質を見誤ることは明らかです。

 また、後日別の項で述べますが、日本の外食産業の場合、渥美式チェーンストア理論に忠実なのか、客単価が収まるべき価格レンジにこだわりすぎるきらいがあるように感じています。客単価が同じレベルのチェーン同士は似たような店になってしまったり、オリジナリティのあるチェーン、店、売場が多彩な形で現れにくいのも、これと関係があるかもしれません。

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アンクル・アウル コンサルティング主宰 おくい・としふみ 1942年大阪府生まれ。65年大阪外国語大学中国語科卒業。同年トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)入社。中国、中近東、アフリカ諸国への輸出に携わる。80年初代北京事務所所長。90年ハーレーダビッドソンジャパン入社。91年~2008年同社社長。2009年アンクルアウルコンサルティングを立ち上げ、経営実績と経験を生かしたコンサルティング活動を展開中。著書に「アメリカ車はなぜ日本で売れないのか」(光文社)、「巨象に勝ったハーレーダビッドソンジャパンの信念」(丸善)、「ハーレーダビッドソン ジャパン実践営業革新」「日本発ハーレダビッドソンがめざした顧客との『絆』づくり」(ともにファーストプレス)などがある。 ●アンクル・アウル コンサルティング http://uncle-owl.jp/