声はすれども姿は見えない――通販番組の観覧客のナゾ

通販番組を盛り上げる、観覧客のおばちゃんたちのことを書いております。名人芸のリアクションのおかげで、通販番組は盛り上がり、タレントさんもニコニコ。と、おばちゃんパワーはとってもありがたいものなんですが、なんと、そのおばちゃんたちを画面に映せない! ということがあるのです。

「通販番組だから観覧客はNGなんですよ」

 さて、通販番組を見ていると、「ワァアア」「エェエエ!」「ウンウン」「ウソー」などと盛り上がる声は聞こえるのに、姿が見えない! ということが多いものです。ということは、前回お話したように「効果音集」のCDを使っているのでは? と思いますよね。でも、通販番組の場合は、やはり前回お話したように、実際にスタジオに観覧客がいることが多いんです(効果音の場合もあるにはあります)。

 第32回で、私が担当した通販番組で、スタジオには実際に“おばちゃんのお客さん”が多数いて、その相づちの素晴らしさに感激したというお話をしました。しかし、放送ではそのおばちゃんたちの声は聞こえるんですが、誰も姿は映っていなかったのです。

 なぜでしょうか。そこを打ち明けますと、ナント「映してはダメ!」とされたから、映せなかったのです!

 誰がそんなこと言ったのか? それは、その番組を流す放送局からの指示なんです。そして、実は、その放送局も、公的機関から「客席を映してはいけないよ」という指導を受けているらしい(「らしい」というのは、あくまで筆者は伝聞の形で聞いてるためです。だけど、「森畑さ~ん、客席映すと局の審査が降りないのよ~」と、プロデューサーが言ってました)。

 ではなぜ客席を映しちゃいけないのか、みなさんわかりますか?……お客さんそれぞれに肖像権があるから? プライバシーを保護しなきゃいけないから? 万が一奥さんに内緒の不倫カップルが見に来ていて、後で文句を言われたら大変なことになるから?……イヤイヤ違います。番組の観覧にOKをいただく時点で、それぞれのお客さんからは、そのあたりの了承は取り付けています。そして、これが一般の番組だと客席を映すことに何の問題もないのです。

 つまーり!“通販だから”ダメ! とされる理由があるんです。

「スタジオの反応はNG。道行く人の反応はOKって、どう思います?」

 客席を映しちゃいけないという、通販番組だからこその理由、何だと思います? 答えは……「過度な購買心をあおる演出をしちゃいけないから」なんです。

 意味わかります? つまり、ある商品がとっても便利だとPRされていたとして、それをスタジオにいる観覧客が「スゴイー! ほしいー!」など騒いでいる映像を映すのは、「過度に購買心をあおる」とされるそうな。だから映しちゃダメなのだそうです。

 このあたりの事情、局によって変わるようです。キー局ではダメだったけど、地方局だったら一部OKだった、CSテレビ局だったらもっとOKだった、とか(これも私が聞いた例ですから、いつもそうだとは受け取らないでください)。

 ほしがる客を見せる=過度に購買心をあおる演出→なのでNG、というこのルール、最初に聞いたときは驚くよりも「はぁ!?」と思ってしまいました。その理屈でいくと、通販番組そのものがNGだろうと。また、CMを流すことで収入を得るテレビどころか、広告のあるマスコミ全部NGでは? もっと言えば資本主義社会ってダメよと言ってるようなもんじゃないか、とまで感じたんですねぇ。

 それに、「客の姿が“映ったら”過度な演出でNG、でも声だけならOK」という線引きも、全くもって意味不明すぎる……。しかもですよ、スタジオで観覧客がリアクションする姿はダメでも、「商品を街角で試してもらいました」という形の街頭ロケで道行く人に体験してもらい、その人が便利さのあまり「コレほしい!」って言っちゃった映像はOKなんです。

 どこかで歯止めはかけなきゃいけないとは言え、うーん、コレは納得いかないルールですねぇ……。

「ところで最近のバラエティ番組ってヘンでしょ?」

 番組の観覧客というのは、言わば“視聴者代表”の役割を担っていますから、このルールは現場の者からするともどかしく感じます。とくに、本当に商品力が強い、画期的と思われる商品を紹介するときは、歯がゆく感じます。

 やはり声だけだと、驚きがどうしてもウソくさいですもんねぇ。まあ、バラエティ番組でも、V(VTR)を流している最中に「へぇ~」みたいな声はしょっちゅう足されているのはみなさんご承知の通りです。

 先に書いたとおり、一般のバラエティ番組などでは、客席を映しちゃダメなんてことはないわけです。それなのに声“だけ”聞こえて、コストをかけてわざわざ呼んだはずの観覧客が映らないというのは、明らかに効果音を使っているわけです。実際、バラエティ番組など見ていると、「エェ~」とか「ワァ~」とかの声が、どの局のどの番組でも同じ声だと気付くことがありませんか? これ、「効果音集」といったCDとして流通している既成品の声なんですねぇ。

 最近は、オールナレーション&屋外ロケの番組でも、平気で“お客のリアクション声”が足されていることもありますからねー。「その声を出しているお客はどこでそれを見てるんだ!」とツッコミたくなります。

「テレビはできないことが増えてきてます」

 さて、この「通販だから、スタジオ観覧のお客の反応を映すのはダメ」といった指導(?)は、数年前まではありませんでした。通販番組が増えるに伴い、いつしかそんなルールが出来たようです。

 なので筆者は、客席の映像を映した通販番組も制作したことがありますが、割とリアルでよかったんですよ……。とくに、一度「公開録画通販」を行ったときはよかったなぁ。ショッピングモール内のイベントスペース――よく休日に大道芸とか、地元の高校生楽団が演奏していたりなどする、誰でもいつでも入って来て、いつでも立ち去れる場所で行ったんです。だからお客は、すべて一般人! そのリアクションや歓声って、本当に新鮮だったですねぇ。

 この「屋外公開録画通販」は10年以上前のことですが、一般の方の肖像権とかの議論もそんなに盛んでなかった時代だったからできたのでしょう。「できるのに規制でできない」ことって、意外と多いなあと感じます。

 筆者も何十年もテレビ業界にいるわけではないですが、改めて考えてみると、テレビっていろんなことを可能にしてきたけど、いろんなことを不可能にもしてきたように思います。

About 森畑たけし 65 Articles
通販番組制作担当者 もりはた・たけし 1975年生まれ。通常のテレビ番組と通販番組を手がけて12年。ひと昔前、一段下に見られていた感のある通販番組とその市場の成長に驚くばかり。同時に「やっててよかった~」とありがたい食い扶持があることにホッ……。しかし、膨大なグルメ情報、健康情報、お得情報などを発信し続けていながら、本人は全く活用できていない。自分が通販アイテムを買って続けるなら髪関係だろうかと、毛根と〆切が気になる人。