バーテンダー諸兄に贈るFOODEX JAPAN 2013洋酒レポート(1)

「FOODEX JAPAN 2013」が3月5日(火)~3月8日(金)の4日間、幕張メッセで開催された。今年は66以上の国・地域から食品・飲料メーカー・商社など2544社が出展した。来場者は7万5000人(開会時見込み)。昨年に続いて、今回もバーテンダー視点に立ち、2日間に渡って広大な会場を駆け巡った筆者が見つけたアイテムをご紹介する。

海外のリキュールとスピリッツを視察

「FOODEX JAPAN 2013」には66以上の国・地域から2544社が出展した。
「FOODEX JAPAN 2013」には66以上の国・地域から2544社が出展した。

 ことウイスキーに関しては、FOODEXに出展されている数は決して多くない。来月開催される「Tokyoインターナショナル・バーショー」を初めとするウイスキーイベントの方が、国内・海外を問わずウイスキーメーカーの力の入り方が違うことは、今年4月に開催されるバーショーが100種類近いラインナップを予定しているのに対し、幕張の広い会場内で筆者が見つけたウイスキーがわずか2社と言うことからもおわかりいただけるだろう。

 にもかかわらず、春めいてくると筆者が住む私鉄沿線の小さな街でさえ、飲食業に携わっている方々の間では「今年のFOODEX」のことが話題になる。筆者が自宅から会場まで1時間半近くかかる幕張まで足を運ぶ理由も、ウイスキー以外のスピリッツやリキュールなどに関してFOODEXが圧倒的なラインナップをそろえるからに他ならない。

 さて、これまでの拙稿各種レポートでもお伝えしていることだが、展示会もこれだけ大規模になってくると歩き方のコツというものがある。

 今回もしかり。受付を済ませてそのまま直近の入口から会場に入ると国内出展エリアになるのだが、こちらは試供品の数も多く、焼酎や日本酒も充実している。バーテンダーの方がこの辺で足を止めてしまうと、もういけない。

 そこでツマミ替わりのローストビーフから豚肉の味噌漬けまでそろうから、それで口直しをしつつビールをお代りして唐揚げなんぞをもらっていると他の酒も気になってくる。食後のデザートのソフトクリームの行列に並んで、コーヒーを飲む頃には、せっかく都内から1時間以上かかってたどり着いた会場の閉会時間が迫ってくるなどということにもなり兼ねない。

「わざわざ時間を作ってFOODEXに行ったのに、会場の半分も周れなかった」という声を聞くのももっともなのである。

 おいしそうな湯気を立てて筆者の前に立ちはだかる食材の試供品の誘惑を断ち切って海外エリアにたどり着いても、油断は禁物だ。そこには広大なワインとビールの森が待ち受けている。ここで森に迷い込んでワインやビールの泉に溺れていては、控えめな展示が多いスピリッツやリキュールには到達できない。

 今回、筆者は2日間取材し、初日にあらかたの位置を把握していたため、探したり迷ったりする時間のロスはなくせたと安心して、翌日は海外出展社のブースを丹念に話をうかがいながら周り始めた。ところが、そうしていると海外エリアの1/3も行かないうちに2時間を超えてしまい、以降は昨年同様小走りで回らざるを得なかった。最初からワインとビールは除外と決め、国内エリアを散歩程度に留める覚悟で海外エリアからスタートしてもこのような状態だった。さらに最終日だったこともあって、国によっては視察し切るまえにもう片付けが始まってしまう。韓国に至っては外周を見るくらいしかできなかった。FOODEXの規模は、かくも巨大であり、展示品の種類が膨大であることを改めて感じさせられた――ということで、そろそろ本題に入ることにしよう。

アプリコット・シュナップス「BAILONI」

オーストリアのアプリコットリキュール。
オーストリアのアプリコットリキュール。

 民族衣装の女性が目を引いた「BAILONI」。去年のレポートで採り上げたアプリコット・リキュールはドイツだった(バーテンダー諸兄に贈るFOODEX JAPAN 2012洋酒レポート10(4)参照)が、今回はオーストリアのものが出展していた。

 写真の透明な方が40度のアプリコット・シュナップス(※1)で、色付きが30度のリキュール。去年見たドイツの「Wachauer Marrillenbrando」が戦後間もなくの創業であるのに対し、こちらは1872年創業というから、アプリコットの酒はどちらかというとドイツよりはオーストリアの特産品のようだ。香りは杏の缶詰を開けたときの香りで、日本人にはなじみがありそうなのだが、この種の酒は日本への参入に苦戦しているようだ。

 昨年の「Wachauer Marrillenbrando」も独フランケン・ワインのずんぐりしたボックスボイテル瓶に似ていたことを思い出してアプリコット・シュナップスに共通なルールでもあるのかと瓶型の由来を聞くと「アプリコットの形を模しているため」とのことだった。会場でいただいたミニチュアボトルを地元のバーで見せると女性客から「かわいい!」と声が飛んで思わぬ人気に驚かされた。

 日本人の“杏体験”が駄菓子屋から始まっているせいなのか、味についてはインパクトが弱いものの、レトロチックなラベルと愛嬌のある形が他のミニチュア瓶と並べても目を引くデザインなので、アクセサリー的な打ち出し方をすると日本でも人気が出そうだ。

●「Eugen BAILONI GmbH」(オイゲン・バイローニ社)
http://bailoni.at/

※1 シュナップス:ここで言うシュナップスは、キルシュヴァッサー同様に甘みがないフルーツブランデーにイメージは近い。シュナップスをアクアヴィットの別名としている日本語の辞書もあるが、定義は甚だあいまいで、フランス産の18度のピーチリキュールが「ピーチシュナップス」の商品名で販売されているかと思えば、セリやリンドウ等の薬草系からヘーゼルナッツ、さらにはビールの合間に飲まれるシュタインヘーガーまでが「シュナップス」の総称で呼ばれている。

白ブドウの花の香りを生かしたグレープ・ジン「ジーヴァイン」

グレープ・ジン ジーヴァイン。
グレープ・ジン ジーヴァイン。花の香りの有無でキャップの色が違う。

 90年代に日本でも流通していたグレープ・ウォッカ「シルヴァラード」を覚えている方は少ないだろうが、近年、グレープ・ウォッカ「シロック」がバーで人気であることはご存知のバーテンダーの方も多いだろう。

 こちらはコニャック地方の白ワインを使ったフランス製のジンで、ジュニパーの他にジントニックの拙稿でも触れたクベバやライム、コリアンダーなど9種類のボタニカルで香味を付けたジン。ベースの素材も目新しいが香りも斬新で、あえてジュニパー香は抑えて白ワインの花香という面白い特徴づけをしている。

 会場で試飲したところ、「サラッとした上品な香りのジン」という感じだったので、マティーニにするとどうなるか興味を惹かれ、入手したサンプル瓶を持って行った地元のバーで試作してもらった。スタンダードのマティーニでもヴェルモットに使われているさまざまなハーブが隠し味となっているが、ベースのジンに花の香りがついているわけだからしっかり個性が際立ってくる。イメージとしては「クラシカル・フレンチ・マティーニ」という印象で、口当たりのよさもあいまって、スタンダードと比して女性的な柔らかい味に仕上がる。5760円(参考価格)とちょっと勇気のいる価格だが、試してみる価値はありそうだ。

 また今年で4年目を迎える「GIN CONNOISSEUR PROGRAM 2013」(ジン カノッサ― プログラム)というジーヴァインを使った国際カクテルコンクールの東京大会が来る4月22日に開催される予定で、まだ募集を行っている。日本では大々的に宣伝をしていないこともあって、ある意味狙い目と言っていいだろう。1位を獲得すると5月にフランスで行われる世界大会へのエントリーができる。優勝すると3000ドルの賞金のほかに、ヨーロッパ各地で行われるカクテル大会への航空券という賞品もさることながら、「日本大会で優勝して世界大会に出場」のキャリアはバーテンダー諸兄にとっては得難い経験になるに違いない。

 締め切りは3月いっぱいとのことで、希望者は英文の応募サイトに記入する方式となっている。所属団体などの規制はないので、我こそはと思う方は下記に問い合わせてみてはいかがだろう。

●KOTO CORPORATION(「ジーヴァイン」輸入元)
http://www.kotobiz.com/2012/S_france.html

●GIN CONNOISSEUR PROGRAM 2013
http://www.legcp.fr/

About 石倉一雄 129 Articles
Absinthe 研究/洋酒ライター いしくら・かずお 1961年北海道生まれ。周囲の誰も興味を持たないものを丹念に調べる楽しさに魅入られ、学生時代はロシアの文物にのめり込む。その後、幻に包まれた戦前の洋酒文化の調査に没頭し、大正、明治、さらに江戸時代と史料をあたり、行動は図書館にバーにと神出鬼没。これまでにダイナースクラブ会員誌「Signature」、「男の隠れ家」(朝日新聞出版)に誰も知らない洋酒の話を連載。研究は幻の酒アブサン(Absinthe)にも及び、「日経MJ」に寄稿したほか、J-WAVE、FM静岡にも出演。こよなく愛する酒は「Moskovskaya」。