中国は大豆原産地で大輸入国

ダイズの原産地は中国であり、その加工食品も多様である。また、新しい用途にも注目が集まっている。そんな大豆の現在と将来を考えてみたい。

ダイズの原産地は中国と日本

 ダイズの原種と考えられているのはツルマメ(ノマメ)である。ツルマメの茎はつる状で、他の植物に絡みついて生育する。人の手が入って生態系がいったん崩された(人為的攪乱という)ような環境を好む。日本をはじめ、東アジアから東シベリアにかけて広範囲に自生する。

 ツルマメの実はミニサイズの大豆のように見える。これをヒトが繰り返し利用する過程で大粒の品種が選抜され、ダイズになったとされる。栽培化されたのは、上記の地域内でのことで間違いないわけだが、いくつかの根拠により、4,000〜5,000年前の中国東北部が有力な原産地と考えられてきた。

 しかし近年、日本もダイズの原産地であることが確実視されるようになった。縄文土器の圧痕(文様以外に出来たくぼみ。粘土に含まれていた不純物等が脱落した痕跡)に、ツルマメの型が確認されている。現時点で最古とされるのは13,000年前(縄文草創期)の宮崎県の事例だが、縄文中期(5,000年前)の八ヶ岳山麓の事例は興味深い。26粒中75%が大粒で、形状にも差異が認められた。栽培化とともに品種化が進んでいた証拠と考えてよい。

大豆とその加工食品

広州イオンの納豆売り場。

 日本では、大豆を煮豆や枝豆などとして、その形のまま喫食しているが、これら以外に、多様な加工食品が存在する。豆乳、豆腐、凍り豆腐、油揚げ、湯葉、納豆、黄粉などが挙げられる。味噌、醤油などの調味料も大豆が主原料である。これらのほとんどが中国から伝わったものである。

 ただし、これら加工品のなかでも中途半端と感じるのが豆腐である。中国の豆腐は硬さや形状、加工方法などに関して、極めて多種・多彩である。加工方法に関しては、発酵豆腐がユニークである。これらについては以前の連載「大豆変身物語29:中国豆腐事情と腐乳」をご覧いただきたい。

 中国伝来の例外が納豆である。起源には諸説あるが、日本の納豆は日本各地で自然発生的に誕生した可能性が高いと考えている。とは言え、納豆が食品として一般化するのは案外新しく、江戸時代になってからである。食習慣に地域的な片寄りが大きく、主に東日本で消費されていた。それでも近年、西日本の消費が増加して、東西差は小さくなっている。西日本の消費が増えた大きな要因は健康志向にあることは間違いない。納豆の欠点とされる臭いと粘りは慣れるのである。

 中国でも、納豆の健康効果はかなり知られている。徐々にではあるが、確実に消費が増えている。中国での納豆の食べ方は日本と同様で、醤油やネギを混ぜることが多いようだ。また、家庭用の納豆製造器がネットで購入できる。価格は納豆菌とのセットで100元(約1,500円)程度である。

 青島市内の「はなまるうどん」ではトッピングコーナーに納豆が並ぶ。大規模超市に該当する広州イオンには納豆コーナーがある。ここでは日本製納豆の隣に中国製納豆が大量に陳列されている。

大豆食の普及と新しい可能性

 さて、ダイズの日本原産の可能性と、日本の納豆が日本生まれであることを紹介したが、ダイズの栽培化と多様な加工食品の誕生に関して、中国大陸が大きな役割を果たしてきたことは論を待たない。それでも、大豆食の国際的な普及に寄与したのは日本であろう。世界が大豆に注目するきっかけとなったのが、1873(明治6)年のウィーン万国博覧会である。この万博に日本は国として初めて公式参加したが、そこで出品した大豆の成分をドイツ人科学者が分析し、「畑の肉」と称賛したとされる。

 さて、世界三大穀物と言えばトウモロコシ、コムギ、コメであるが、これらはデンプン(炭水化物)が主成分である。一方、広義の穀物には豆類も含めるが、大豆の場合、タンパク質と脂質をより多く含んでいる点が重要である。世界三大穀物もタンパク質を含むが、その質(アミノ酸スコア=タンパク質を構成する窒素1g当たりの必須アミノ酸の量)は良好とは言えない。リジンやメチオニンといった必須アミノ酸含量が低いためである。ところが、大豆は食肉と同等の最高値100であり、これが「畑の肉」と言われるゆえんである。

 その大豆の利用で近年注目されているのがいわゆる代替肉である。

 食肉生産は大量の穀物を消費し、同時に大量の排泄物を生じる。また、牛などの反すう動物の場合、二酸化炭素の25倍(京都議定書の地球温暖化係数)と言われる温暖化ガスであるメタンを大量に発生する。食肉生産は環境負荷が極めて高い産業なのである。

 この対策として進められているのが、植物由来原料による代替肉の開発である。また、肉の細胞を組織培養する培養肉の研究も進んでいる。ほかに、食肉の代替にはならないが、優良なタンパク源となるのが昆虫の活用である。すでに、コオロギは商品化されている。

 そうしたなかでは最も商品化の例が多く、近年大流行の兆も見せているのが植物由来原料を利用した代替肉だ。実はこれ自体は新しい技術ではなく、その原料として最も長く多くの実績があるのが大豆である。環境面だけでなく、中性脂肪やコレステロールも低く、健康面でも優れている。そして、基本的にお財布にも優しいはずだ。一石三鳥の素晴らしい食材なのである。

生産高1位のブラジル・輸入国1位の中国

ブラジルのダイズ畑。
ブラジルのダイズ畑。

 現在(2019/20年)、世界の大豆生産量は3.4憶tである。国別の生産高では、数年前までトップはアメリカだったが、現在はブラジルにその席を譲っている。そのブラジルの大豆生産は日本が深く関与している。ブラジルの中央高原を占めるセラードと呼ばれるサバンナに注目し、資金・技術を投入して共同事業を立ち上げた。その成果が、現在につながっている。

 ただし、現状の日本の大豆輸入相手先別の輸入量トップはアメリカの232万t(2018年)であり、ブラジルは2位ではあるが56万t(同)とごくわずかでしかない。しかし、リスク分散のため、ブラジルからの輸入を増やすべきである。なにしろ、日本がブラジルの大豆生産に協力したきっかけは、アメリカが大豆不作による輸出禁止措置(1973年)を採ったことであったのである。

 なお、中国の大豆輸入は世界の流通量全体の6割を超えて久しい(2011年度以降)。中国は世界の大豆貿易に大きな影響を与えているのである。

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横山技術士事務所 所長 よこやま・つとむ 元ヒゲタ醤油品質保証室長。2010年、横山技術士事務所(https://yokoyama-food-enngineer.jimdosite.com/)を開設し、独立。食品技術士センター会員・元副会長(http://jafpec.com/)。休刊中の日経BP社「FoodScience」に食品技術士Yとして執筆。ブログ「食品技術士Yちょいワク『食ノート』」を執筆中(https://ameblo.jp/yk206)。