輸入メロンに関連のサルモネラ

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。欧州疾病予防管理センターの報告書によると、2021年3月〜7月にEU12カ国および英国からサルモネラ感染確定患者が348人報告された。原因は輸入メロンと推定され、ホンジュラスの生産業者が輸出したバッチ由来のガリアメロンが原因食品である可能性が高いとされている。

注目記事

【欧州】輸入メロンに関連のサルモネラ

 欧州疾病予防管理センター(ECDC: European Centre for Disease Prevention and Control)の報告書によると、2021年3月15日〜7月6日に、サルモネラ感染確定患者が欧州連合/欧州経済領域(EU/EEA)加盟12カ国および英国から計348人報告された。計68人の患者が入院した。死亡者は報告されなかった。

 患者への聞き取り調査および分析疫学調査の結果、可能性のある原因食品として小型のメロン(とくにガリアメロン)が示唆された。英国でホンジュラスから輸入された1バッチ由来のガリアメロン2個、およびオーストリアでガリアメロンを含む混合メロン1検体(原産国不明)から、アウトブレイク株と一致するS. Braenderup ST22株が検出された。

 疫学調査、微生物学的調査および追跡調査の結果にもとづくと、原因食品は EU/EEA および英国以外から輸入されたメロンであると推定された。少なくともガリアメロンの喫食を報告した患者については、ホンジュラスの生産業者が輸出したバッチ由来のガリアメロンが原因食品である可能性が高い。生産チェーンにおける汚染源を特定するためにはさらなる調査が必要である。

 当該メロンは、現在は市場に流通していない。12月に次の収穫シーズンが始まるまでは、ホンジュラスから新たにメロンは輸入されないと予測されている。これらの措置により、新規患者の発生リスクは低減している。患者報告の遅れおよび二次感染の可能性を考慮すると、新規患者はまだ報告される可能性があるが、減少傾向にあると考えられる。

【英国】抗生物質耐性菌による感染症減少も依然高水準

 2021年11月18〜24日開催の世界抗生物質啓発週間(WAAW:World Antibiotics Awareness Week)に先立ち、英国保健安全保障局(UK HSA: UK Health Security Agency)は、英国における抗生物質の使用および耐性に関するサーベイランスプログラムの報告書を発表した。

 今回発表された新たなデータによると、2020年に抗生物質耐性菌による血流感染症が2016年以降で初めて減少(2019年の65,583件から55,384件へ)したが、6年前と比べると依然として高水準であることが明らかになった。重要な点は、今回の減少が主に血流感染症全体の報告数が減少したことに起因しており、その要因として、社会的な交流機会の減少、手指の衛生の向上、医療の利用・提供形態の変化などが推定されることである。

 大腸菌など、血流感染症の原因として最も一般的な細菌の分析から、2020年に血流感染症の全体数は2016年より減少したものの、抗生物質耐性菌による感染症が全体に占める割合は当該期間に上昇したことが明らかになった。この結果は、2020年の人々の行動・薬剤の処方・医療提供形態の変化に起因する可能性が最も高く、2020年は血流感染症患者の5人に1人は抗生物質耐性菌による感染症であった。このことから、抗生物質耐性菌による感染症は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック以後に増加する可能性が高く、継続的な対策が必要になることが示唆される。

 抗微生物剤使用を監視するための数年間にわたる組織的な取り組みによって抗生物質の処方量の減少が続いている。

 一方、歯科分野での抗生物質の処方量は2020年に長年で初めて増加しており、当該分野
での抗生物質の処方量減少における“対面診療”の重要性を浮き彫りにしている。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.25(2021.12.08)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2021/foodinfo202125m.pdf

今号の目次

【米国食品医薬品局(US FDA)】
1. 米国食品医薬品局(US FDA)と「Stop Foodborne Illness」が食品安全文化に関するオンラインセミナーを共同開催

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. ベビーホウレンソウに関連して複数州にわたり発生している大腸菌 O157:H7感染アウトブレイク(2021年12月3日付更新情報)
2. ケーキミックスに関連して複数州にわたり発生した大腸菌 O121感染アウトブレイク
(2021年9月16日付最終更新)

【カナダ公衆衛生局(PHAC)】
1. 公衆衛生通知:カナダの複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella
Enteritidis)感染アウトブレイク(2021年11月29日付更新情報)
【欧州疾病予防管理センター(ECDC)/欧州食品安全機関(EFSA)】
1. ECDC-EFSA 合同迅速アウトブレイク評価:輸入メロンに関連したと推定される複数国にわたるサルモネラ(Salmonella Braenderup シークエンスタイプ(ST)22)感染アウトブレイク

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and
Feed)

【英国保健安全保障局(UK HSA)】
1.2020年に抗生物質耐性菌による感染症が2016年以降で初めて減少 ― 英国保健安全保障局(UK HSA)は一時的な減少である可能性が高いと警告

【オーストラリア保健省(Australian Government Department of Health)】
1. 世界抗生物質啓発週間(WAAW:World Antimicrobial Awareness Week)―2021年
11月18〜24日に開催