牛のと畜の新HACCPモデル

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。米国農務省食品安全検査局は牛のと畜に関するHACCPモデルを更新した。米国疾病予防管理センターほか当局はタマネギに関連して発生しているサルモネラ感染アウトブレイクを調査している。欧州食品安全機関の栄養・新開発食品・食品アレルゲンに関する科学パネルはイエローミールワーム製品についての意見を発表した。

注目記事

【米国】牛のと畜のための新しいHACCPモデル

 米国農務省食品安全検査局(USDA FSIS: Department of Agriculture, Food Safety and Inspection Service)は、ウシのと畜を対象とした包括的なHACCPモデルを更新し、改訂版を発表した。今回の更新により、1996年版のHACCPモデルは改訂版に切り替えられる。

HACCP Model for Beef Slaughter
https://www.fsis.usda.gov/guidelines/2021-0009

 改訂版のガイダンスおよびモデルには、FSISの方針の変更およびHACCPの施行以降に得られた知見が反映されている。参照資料として、最新の科学文献および説明ガイドを含む補足情報が収載されており、これらの補足情報はそれぞれの情報源にリンクしている。従来のモデルと同様に、各モデルには製品説明、成分リスト、生産工程表、危害分析および HACCP プランが収載されている。

 この改訂版はウシのと畜に関するモデルであるが、他種の家畜のと畜を対象としたHACCPプランを作成する際にも基準として使用される可能性がある。

【米国】タマネギに関連のサルモネラ感染アウトブレイク

 米国疾病予防管理センター(US CDC: Centers for Disease Control and Prevention)、米国食品医薬品局(US FDA)および複数州の公衆衛生・食品規制当局は、タマネギに関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Oranienburg)感染アウトブレイクを調査するため、さまざまなデータを収集している。

 疫学調査および追跡調査によるデータは、メキシコのChihuahua州から輸入されProSource Produce社およびKeeler Family Farms社が供給したレッドオニオン、ホワイトオニオンおよびイエローオニオン(いずれもホール)が本アウトブレイクの患者に関連していることを示している。他のタマネギや供給業者が本アウトブレイクに関連しているかどうかを特定するため調査が行われている。

 患者の年齢範囲は1歳未満〜97歳。情報が得られた患者417人のうち129人が入院した。死亡者は報告されていない。

 患者に対し、発症前1週間の食品喫食歴およびその他の曝露歴に関する聞き取り調査が行われた。情報が得られた患者193人のうち145人が、生のタマネギの喫食またはその可能性、および生のタマネギを使用した可能性が高い料理の喫食を報告した。患者数人は同一飲食店での食事を報告しており、患者クラスターの一部である可能性が示されている。

 FDAは追跡調査を実施し、患者が食事をした飲食店の多くに輸入タマネギを供給した共通の業者としてProSource社を特定した。本アウトブレイクの患者クラスターのうちの1つは1飲食店で発生しており、当該飲食店の調査において、ライムやシラントロ(コリアンダー)の残りが入った香味食品の容器からS. Oranienburg アウトブレイク株が検出された。患者は当該香味食品にタマネギも含まれていたことを報告したが、検査時には容器内に何も残っていなかった。FDA は、他のタマネギ供給業者が本アウトブレイクに関連している可能性があるか、また共通するタマネギ供給業者がメキシコのChihuahua に存在するかどうか特定するため調査を行っている。

【欧州】イエローミールワームの冷凍製品および乾燥製品の安全性

 欧州食品安全機関(EFSA: European Food Safety Authority)の栄養・新開発食品・食品アレルゲンに関する科学パネル(Panel on Nutrition, Novel Foods and Food Allergens、NDA パネル)は、欧州連合(EU)規則 Regulation(EU)2015/2283にもとづいて新開発食品(NF:Novel Food)に指定されたイエローミールワーム(Tenebrio molitor larva:チャイロコメノゴミムシダマシの幼虫)の冷凍・乾燥製品について、欧州委員会(EC)から意見を要請された。

 当該ミールワーム製品は、幼虫体のまま(whole)または粉末の形態で冷凍およびフリーズドライの製法が適用されている。冷凍製品の主要成分は水分、粗タンパク質および脂肪で、フリーズドライ製品では粗タンパク質、脂肪、可消化炭水化物および繊維(キチン)である。

 NDAパネルは、当該製品の汚染濃度は昆虫用餌の汚染レベルに依存すると指摘している。また、設定された保存可能期間中の基準値を満たしている当該製品について、製品の安定性に関する安全上の懸念はないとしている。

 NDAパネルは、当該製品が唯一の食事タンパク質にはなりそうもないことと、成分および提案されている使用条件を考慮すると、その喫食に栄養上のデメリットはないとしている。提出された文献の毒性試験の結果からは、安全上の懸念は認められなかった。NDAパネルは、喫食により当該製品のタンパク質に対する一次感作およびアレルギー反応が誘発され、これが甲殻類やダニに対するアレルギー反応の原因となる可能性はあると考えている。また、飼料由来のアレルゲンが含まれている可能性もある。

 NDAパネルは、提案されている使用法および使用レベルにおいて当該ミールワーム製品は安全であると結論付けている。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.22(2021.10.27)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2021/foodinfo202122m.pdf

今号の目次

【世界保健機関(WHO)】
1.2021年(第3回)世界食品安全デーの報告書 ― 全ての人のために食品安全の向上および維持を目指す通年の取り組みを紹介

【米国農務省食品安全検査局(USDA FSIS)】
1. 米国農務省食品安全検査局(USDA FSIS)がウシのとさつのための新しい HACCP モデルを発表

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. タマネギに関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella
Oranienburg)感染アウトブレイク(2021年10月21日、20日、14日付更新情報)
2. 七面鳥ひき肉に関連して複数州にわたり発生したサルモネラ(Salmonella Hadar)感染アウトブレイク(最終更新)

【欧州疾病予防管理センター(ECDC)】
1. 世界実地疫学デー:実地での公衆衛生保護に携わる人々を称える

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and
Feed)

【欧州食品安全機関(EFSA)】
1. 欧州連合(EU)規則 Regulation(EU)2015/2283にもとづいて新開発食品(NF:Novel
Food)に指定されたイエローミールワーム(Tenebrio molitor larva:チャイロコメノゴミムシダマシの幼虫)の冷凍製品および乾燥製品の安全性

【ProMED-mail】
1. コレラ、下痢、赤痢最新情報(38)(37)(36)