鶏関連の多剤耐性サルモネラ

国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(微生物)No.22(2018.10.24)を発表した。

注目記事

【米国】鶏生肉製品関連の多剤耐性サルモネラ

 米国疾病予防管理センター(US CDC: Centers for Disease Control and Prevention)および複数州の公衆衛生・食品規制当局は、鶏生肉製品に関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Infantis)感染アウトブレイクを調査している。

 2018年10月15日までに、サルモネラ(S. Infantis)アウトブレイク株感染患者が29州から計92人報告されている。患者の発症日は2018年1月19日~9月9日である。患者の年齢範囲は1歳未満~105歳、年齢中央値は36歳で、69%が女性である。情報が得られた患者62人のうち21人が入院したが、死亡者は報告されていない。

 患者に対し、発症前1週間の食品喫食歴およびその他の曝露歴に関する聞き取り調査が実施された。すでに聞き取りが行われた患者54人のうち48人が、鶏生肉(ひき肉、カット肉、丸鶏など)を購入し、調理または料理の喫食をしたことを報告した。患者が購入した鶏生肉のブランド名や購入店舗はさまざまであった。

 患者43人および食品・環境68検体由来の分離株のWGS解析により、アンピシリン、セフトリアキソン、クロラムフェニコール、シプロフロキサシン、ホスホマイシン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、カナマイシン、ナリジクス酸、ストレプトマイシン、スルファメトキサゾール、テトラサイクリン、およびトリメトプリム-スルファメトキサゾールのうちの一部もしくはすべてに対する耐性が予測された。食品・環境検体由来の2株については抗生物質耐性の存在が予測されなかった。これらの結果は、患者由来5株についてCDCの全米抗菌剤耐性モニタリングシステム(NARMS)検査部門が標準的な抗生物質感受性試験法を用いて行った試験の結果により確認された(ホスホマイシン、ハイグロマイシン、およびカナマイシンは試験対象外)。これらの抗生物質耐性菌による感染症は、一般的に推奨される抗生物質による治療が困難になり、別の抗生物質が必要となる可能性がある。

 消費者は、鶏生肉には細菌汚染の可能性があることを認識し、これらの製品からのサルモネラ感染を防ぐため食品安全手順に常に従うべきである。

【ドイツ】アフリカ豚コレラ/消費者へのリスクなし

 欧州でも流行しているアフリカ豚コレラ(ASF)について。ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR: Bundesinstitut für Risikobewertung)のAndreas Hensel長官は、「ASFの病原体はヒトには感染しない。発症した動物との直接的な接触、または感染した飼育ブタやイノシシ由来の食品の喫食によって健康リスクが生じることはない」と述べている。

 ASFVはヒトに対しハザードでもリスクでもないが、飼育ブタおよびイノシシの肉は他の病原体による汚染の可能性もあるため、他のあらゆる生肉の場合と同様の衛生条件下で調理すべきである。加熱前は冷蔵保存し、調理は他の食品とは別にすべきである。加熱する際は、食肉の中心温度が70℃以上に達するまで加熱し、その状態を2分以上保つべきである。

 ASFの病原体はウイルスの1種であり、飼育ブタおよびイノシシに感染して重度の疾患を引き起こし、致死率が高い。感染した動物またはその排泄物との接触、もしくはダニの媒介によって感染する。ASFウイルス(ASFV)はアフリカの野生動物に定着しているが、南欧でもアウトブレイクが繰り返し発生している。

 ASFVは非常に安定したウイルスで、飼料中で数カ月間にわたって感染力を維持する。非加熱の飼料または感染動物の残飯が非感染動物に給餌されると、これまでASFが発生していなかった地域にウイルスが拡散し、飼育ブタ群にも感染する可能性がある。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.22(2018.10.24)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2018/foodinfo201822m.pdf

今号の目次

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. 鶏生肉製品に関連して複数州にわたり発生している多剤耐性サルモネラ(Salmonella Infantis)感染アウトブレイク(初発情報)
2. デリハム(調理済みハム)に関連して複数州にわたり発生しているリステリア(Listeria monocytogenes)感染アウトブレイク(初発情報)
3. 牛ひき肉に関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ感染アウトブレイク(初発情報)

【カナダ公衆衛生局(PHAC)】
1. 公衆衛生通知:サルモネラ感染アウトブレイクを調査中(初発情報)

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and Feed)

【ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)】
1. 食品を介して野兎病菌に感染する可能性は低い
2. アフリカ豚コレラ:消費者へのリスクはない

【オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)】
1. オランダでの感染症の発生状況(2017年)

【ProMed mail】
1. コレラ、下痢、赤痢最新情報