冷凍野菜に関連のリステリア

国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(微生物)No.15(2018.07.18)を発表した。

注目記事

【EU】冷凍野菜との関連の可能性が高いリステリア

 欧州疾病予防管理センター(ECDC: European Centre for Disease Prevention and Control)発。2015年以降、欧州連合(EU)加盟5カ国(オーストリア、デンマーク、フィンランド、スウェーデン、英国)において、冷凍コーンおよびその他の冷凍野菜との関連の可能性がある侵襲性リステリア(Listeria monocytogenes)感染アウトブレイクが発生している。

 2018年6月15日までに患者47人が報告され、このうち9人がリステリア感染が原因で、もしくはリステリア感染中に他の疾患が原因で死亡した。

 デンマーク、フィンランド、スウェーデンおよび英国での聞き取り調査に回答した患者計26人のうち、11人が冷凍または冷凍ではないコーンの喫食を報告した。コーンの喫食を報告しなかった15人のうち、2人は冷凍ではないミックスベジタブルの喫食を回答し、3人はコーンもミックスベジタブルも喫食しなかったと報告し、6人はコーンおよびミックスベジタブルの喫食の有無を覚えておらず、4人はコーンを喫食しなかった可能性があり、このうちの1人は冷凍ミックスベジタブルを喫食した可能性があった。

 WGS解析(全ゲノムシークエンシング)により、ヒト由来分離株とヒト以外に由来する分離株との間に強い微生物学的関連が示され、冷凍コーンと冷凍ミックスベジタブル(コーンを含む)に関連した共通感染源がフードチェーンに継続して存在していることが示唆される。

 汚染食品の追跡調査の結果は、ハンガリーの1カ所の冷凍工場(A社)に汚染源が存在することを示している。この工場で採取された冷凍ホウレンソウおよび冷凍サヤインゲン検体からアウトブレイク株と同一のL. monocytogenes IVb ST6株が分離されたことから、この工場で加工されたコーン以外の冷凍野菜も本アウトブレイクの原因食品である可能性がある。

 2016、2017および2018年の製造期にハンガリーのA社の工場で製造された冷凍コーンおよびその他の冷凍野菜から、アウトブレイク株と同一のL. monocytogenes IVb ST6が検出されたことは、A社の工場で非稼働時および加工製品の変更時に標準的な洗浄および消毒が行われた後も、工場の環境中にこの株が存在し続けていることを示唆している。

【ドイツ】家庭での食品由来感染の予防

 ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR: Bundesinstitut für Risikobewertung)による助言。

 多くの人は食品中に残留する農薬やその他の化学物質に関心を持っている。しかし、食品の誤った取扱いも食品由来感染症や食中毒につながる健康被害の原因になる可能性がある。ドイツでは、細菌、ウイルス、寄生虫などの微生物に汚染された食品が原因と推定される患者が毎年およそ10万人報告されており、実際の患者数はこれよりはるかに多い可能性がある。

 このような被害を確実に防ぐために、以下のような対策をとるべきである。

  • 食品の病原体汚染を防ぐ。
  • 食品中の病原体の増殖を抑える。
  • 食品中の病原体の生残を防ぐ。

 ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)は、さらに以下の項目のそれぞれについて詳細な助言を提供している。

  • 病原菌はどのようにして台所に侵入するか。
  • 食品の病原体汚染はどのようにすれば防ぐことができるか。
  • 食品を選択する際に注意すべきことは何か。
  • 食品を運搬する際に注意すべきことは何か。
  • 食品を保存する際に注意すべきことは何か。
  • 食品を調理する際に注意すべきことは何か。
  • 食品を加熱、加温および冷却する際に注意すべきことは何か。
  • 卵を調理する際に注意すべきことは何か。
  • 食肉、家禽肉、魚および水産食品を調理する際に注意すべきことは何か。
  • 手を洗う際に注意すべきことは何か。
  • 台所の清掃をする際に注意すべきことは何か。
  • 皿や刃物類を洗浄する際に追加的に注意すべきことは何か。
  • 廃棄物を処理する際に注意すべきことは何か。
  • 感染症患者に関して考慮すべきことは何か。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.15(2018.07.18)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2018/foodinfo201815m.pdf

今号の目次

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. 小規模飼育の生きた家禽類との接触に関連して複数州にわたり発生している2018年のサルモネラ感染アウトブレイク
2. ロメインレタスに関連して複数州にわたり発生した大腸菌O157:H7感染アウトブレイク(最終更新)
3. クラトム(kratom)の摂取に関連して複数州にわたり発生したサルモネラ(Salmonella I 4,[5],12:b:-、S. Javiana、S. Okatie、S. Heidelberg、S. Weltevreden、S. Thompson)感染アウトブレイク(最終更新)

【欧州疾病予防管理センター(ECDC)、欧州食品安全機関(EFSA)】
1. 複数国にわたり発生し冷凍コーンおよびその他の冷凍野菜との関連の可能性が高いリステリア(Listeria monocytogenes IVb ST6)感染アウトブレイク(更新情報)

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and Feed)

【ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)】
1. 家庭での食品由来感染の予防

【オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)】
1. 欧州連合サルモネラリファレンス検査機関(EURL-Salmonella)主催の第22回年次ワークショップ(2017年5月29~30日、オランダZaandam)

【デンマーク国立血清学研究所(SSI)】
1. ユトランド半島南部で発生したボツリヌス症アウトブレイク