2012年食の10大ニュース[6]

  1. 牛レバ刺・牛肉生食規制改正(強化)
  2. BSE対策の国内措置・米国等からの輸入規制の変更
  3. 総選挙で民主党政権から自公政権へ
  4. iPS細胞治療の捏造発表と記事
  5. 放射能の農林水産分野への影響
  6. 農林水産物や食料品の輸出額落ち込み
  7. 福島原発事故の各報告書出る
  8. 尖閣諸島・竹島
  9. 中国への農産物輸出
  10. 酒井法子さん復帰

1. 牛レバ刺・牛肉生食規制改正(強化)

 個人的には、レバ刺とユッケが大好物なので、食べることが難しくなるこの改正は残念でした。

 ただ、食品安全関係者から、他の分野の規制の厳しさを考えると従来の規制程度だったのはアンバランスだとはされていました。ですからやむを得ないという気もしますが、何かよい方法があればと思います。

2. BSE対策の国内措置・米国等からの輸入規制の変更

 日本および米国等の国については、BSEの検査が不要なのは、従来20カ月齢未満が基準とされていましたが、30カ月齢未満が基準に変更になりました。

 それはいいのですが、存じ上げている全国紙論説委員がこれを支持する論説を書かれた際、ほぼ同時に同じ新聞に変更を批判する記事が載りました。当方が「矛盾する記事を同時に載せるのはなぜか?」と批判的に問い合わせたところ、「難しい問題があるが、報道というのはこういうものなのだ」とのこと。

 なお、同委員によると、「食の安全行政は、マスコミも世論も関心を持たなくなったときに初めてまともに行われる」とのことです。

3. 総選挙で民主党政権から自公政権へ

 民主党政権成立の頃までは、与野党間の農林水産分野の考え方の差異は実は少なく、福祉分野などの差異が大きかったのです。

 ところが、民主党政権獲得後、戸別所得補償が推進されました。今後はどうなるか、現時点では、霞ヶ関全体が今後どうなるかわからないとしています。

4. iPS細胞治療の捏造発表と記事

 個人的には、iPS細胞研究のノーベル賞受賞よりも、iPS細胞治療の捏造発表とそれをそのまま報道した問題が、はるかに面白かったです。

 ただ、惹起した人物の(元)東京大学特任教授という肩書きは正しいもので、特任(任期付き)教官だから発表の信用度が低いとは言えません。

 捏造を見抜けない記者への批判もありますが、専門の研究者でもない者には、見抜くことは簡単ではないでしょう。

 今回の事件は相当高いレベルの捏造の例ですが、「○○大学の研究によると××だ」という報道は、健康分野については結構あります。これらには、捏造と言えないものであっても信頼性が怪しいものがあることを、消費者教育で伝えたいところです。

5. 放射能の農林水産分野への影響

 放射能被爆による“健康”被害は、おそらくゼロに近いとされています(避難プロセスや避難環境による健康被害は別)。すなわち、被爆によるがん患者の増加は見出すことはできないだろうということです。

 ただし、それを実現するために農林水産物の出荷制限や検査は相当厳しく行わざるを得ないところです。いつまでこれが続くのでしょうか。

6. 農林水産物や食料品の輸出額落ち込み

 原発事故の影響で、農林水産物や食料品の輸出額が前年から1割近く落ち込みました。輸出増大はなかなか難しいようです。

 しかし、地震前に原発事故の影響で輸出が減少すると予想した方は皆無でしょう。

 農林水産行政については、急進的に競争的政策を持ち込むことで強化できるという主張は以前からあります。ところが結局いつもうまくいかず、論者は否定されるわけではないのですが、その都度消えていきます。そしてまた、代わりに新しい論者が現れ、同じようなことを主張して、同様に消えていくということが続いています。

 ちなみに、福祉分野の担当者も、同じことを感じているとのことです。

7. 福島原発事故の各報告書出る

 福島原発事故の民間、国会、政府の報告書が出そろいました。

 ところが、内容や考え方がお互いに相当違っているのです。

 原発事故時に官邸で専門家がお互いに違うことを主張して困ったという手記を読みますが、専門家が違うことを主張することは、言論としては面白いでしょうが、行政としては「専門家の意見はない」と扱われかねません。

 このようなことを防ぐためには、1つの情報だけを示す必要性があります(ワンボイスの原則)。

 なお、政府報告書についてさえ、ある関係大臣は、「好き勝手なことを書いて!」と憤慨していました。このことから、政府のコントロール下で書かれたわけではないことがわかりますが。

8. 尖閣諸島・竹島

 農林水産行政の中でも、貿易交渉において日本は韓国と条件が類似していますが、水産分野は韓国との間で難しい問題があります。

 李承晩韓国初代大統領が日本に対し友好的とは言えず、両国に国交がないこともあり、日本の漁業者が韓国当局に拿捕される事件がかつて頻発したことが水産関係で複雑な感情を生んだとされています。

 官庁OBによると、戦後しばらくは日韓両国政府に学校の同級生や元同僚といった関係が深い者同士がいたため、実は現場レベルの仲は悪くなかったようです。しかし、そういうものがなくなってきた後にどのような関係を作るかが課題です。

9. 中国への農産物輸出

 中国への農産物輸出事業への支援を農林水産省が行っていましたが、その事業に関係して、農水省の機密文書が中国側に漏れていたとの報道がありました。

10. 酒井法子さん復帰

 芸能コーナーではなく、まじめな話です。

 裁判員の広報のために、行政が酒井法子さん主演の短編映画を作り、DVD化して配付したのですが、その彼女が覚醒剤事件を起こしてしまいました。

 国民年金の広報のために起用したタレントさんが、実は保険料が未納だったという事件も起きました。

 行政が起用しても、予想外の事態になるタレントさんがおられ、今後の起用が懸念されます。

 なお、総務省の行政相談の広報では、キティちゃんを起用しています。問題を起こしそうにない方です。


2012年の10大ニュース
《特別企画》2012年食の10大ニュース[一覧]
これまでの「10大ニュース」
《特別企画》2011年食の10大ニュース[一覧]
《特別企画》2010年食の10大ニュース[一覧]
About 高木正雄 6 Articles
中央官庁室長級 たかぎ・まさお 現役中央官庁官僚。6本以上の法案作成に関与。大学講師(食品・法学)兼務。編著書は法律解説書、雑誌記事他計20冊(件)以上。