2011年食の10大ニュース[9]

  1. クーポンサイトによるトラブル多発
  2. パブリックコメントをめぐる騒動
  3. 多発した食中毒
  4. ヒラメと馬肉の食中毒原因見つかる
  5. 消費者庁の食品表示行政は混乱続く
  6. ソルビン酸国内製造終了
  7. 生食新基準施行
  8. 震災後の物不足
  9. 繰り返された牛肉全頭検査
  10. 暫定規制値をめぐるあれこれ

1. クーポンサイトによるトラブル多発

 新年早々に世間を騒がせたのはおせちの事件でした。おせちは数多くの食材の詰め合わせであること、需要が1日に集中することなど、季節祭事ものの商品としてもかなり条件の厳しいものです。おそらく、問題となった企業が経験のないままに取り扱ってしまったのが原因なのでしょう。しかし、私はクーポン会社にの責任も大きかったのではないかと思います。と言うのも、クーポンに関連したトラブルが、その後度重なって報道されているからです。

2. パブリックコメントをめぐる騒動

 パブリックコメント(パブコメ)とは、行政機関が法令を制定するに当たって、事前に案を示し、それについて広く国民から意見や情報を募集するものです。限定的ではありますが、市民の声を反映させるという意味で、パブコメは重要な制度です。ですが、まだまだ歴史が浅いせいか、制度について正しく理解はされているとは言いがたい状況です。

 パブコメがどういうものかは参考のリンクを読んでいただくとして、今年になって目立ってきたのがインターネット、とくにTwitterで「反対意見を送ろう」と呼びかける動きです。呼びかけるのは結構なのですが、資料へのリンクも示さず、問題点の解説も行なわず、ただ反対意見を出そうというのは、無責任な行為です。そうした呼びかけのために意見が多く集まりすぎて集計を外注せざるをえないなど余計な経費を必要とするような事態も生じています。ですが、その結果寄せられた意見数に対して、同主旨の意見をまとめて整理された意見数はごくわずかです。

 政策に社会的関心を喚起することは重要だと思いますが、それをパブコメに多数の意見を送るという手段に結びつけることはそろそろやめた方がよいと思います。

※参考 うねやま研究室[16]パブリックコメントは何のためにあるのか

3. 多発した食中毒

 2009年、2010年と2年間にわたって食中毒死亡者数が0件だったのですが、今年は多くの死者を出す死亡事故も発生してしまいました。1月にフグによる食中毒で死亡者が出たのに続き、4月には腸管出血性大腸菌による大規模食中毒事件も発生しました。この事件は5名の死者を出す近年まれに見る食中毒事件となりました。その後も、ファミリーレストランのセントラルキッチンで赤痢菌による食中毒が発生したり、最近では各地の刑務所でのウェルシュ菌食中毒が続いています。

 食中毒統計が出そろうまで何とも言えませんが、例年に比べて本当に目立つ食中毒事件が多かった印象です。偶然なのだろうと思う一方で、震災以降、保健所職員が放射性物質への対策に追われて、通常業務どころではないといった話も聞きましたので、そのあたりが影響したのかもしれないなとも思っています。

4. ヒラメと馬肉の食中毒原因見つかる

 ヒラメや馬刺しには、これまで原因不明の食中毒が存在していました。とくにヒラメでの食中毒は俗に「ヒラメトキシン」として知られ、これまでもヒラメの提供を控えるレストランなどがありました。今年になって、それらが寄生虫が原因になって起こるものと判明しました。ヒラメの寄生虫はKudoa septempunctata、馬刺しの方はSarcocystis fayeri。対策には冷凍を行うことが有効なのですが、馬刺しの解凍品は黒ずんでしまい商品価値が低下してしまうため、これまで販売していたスーパーでも取り扱いをやめるところも出てきています。

※参考

生食用生鮮食品による病因物質不明有症事例についての提言
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001fz6e-att/2r9852000001fzl8.pdf

5. 消費者庁の食品表示行政は混乱続く

5. 消費者庁の食品表示行政は混乱続く

 消費者庁が設立して2年あまりが経ちました。これまでの食品に関する同庁のアプローチは、こんにゃくゼリーをはじめとして、話題性の高いものを狙い撃ちにするようなものに思えてなりません。たとえば栄養成分においては「トランス脂肪酸」がそうでしょう。消費者庁はトランス脂肪酸の表示義務化を目指していたと噂されていましたが、今年開かれていた栄養表示検討会では義務化という結論には至りませんでした。また、現在行われている食品表示一元化検討会では「原料原産地表示」の義務化が他を優先して議題にあげられました。こちらの方は、今後どのような議論が行なわれるのかわかりませんが、その行く先は不安でなりません。

 なお、これらの検討会についてお手伝いする機会がありましたので、そちらにも目を通していただけると幸いです。

※参考

一緒に考えよう、栄養成分表示検討会
http://d.hatena.ne.jp/uneyama+hyouji/

食品表示・考
http://www.foocom.net/category/secretariat/foodlabeling/

6. ソルビン酸国内製造終了

 各社が「保存料不使用」を訴えるなど、日本ではイメージが悪い保存料。その代表格とも言えるソルビン酸の使用量は年々減少していました。それに伴い、国内で製造する企業も減少の一途をたどってきていました。そしてとうとう、国内最後の製造メーカーである。ダイセル化学工業が製造を終了し、国産のソルビン酸はなくなってしまいました。今後は海外からの輸入に頼ることになります。しかし、保存料に頼らずに流通や保存が可能なのは、コールドチェーンが機能しているからと言えます。電力の需給が当面苦しいと思われる今、再評価が必要だと考えます。

※参考

新井工場ソルビン酸/ソルビン酸カリウムの製造・販売中止、および、ダイセル南寧への製造集約について
http://www.daicel.com/news/2011/0628_1.html

7. 生食新基準施行

 ユッケによる食中毒を契機に、肉の生食についての基準が見直され、新基準の施行にまで至りました。私自身はかねてから肉の生食は危険であることを訴えてきたのですが、その立場からしても、この新基準は釈然としないものでした。

8. 震災後の物不足

 最後の3つは震災絡みのものを。

 まずはじめに震災後の物不足についてです。物流が安定した今なら、暫定規制値を下回る放射性物質に対する忌避反応を示すだけの余裕があります。しかし、震災直後の数週間は、食品の製造や流通が止ったり混乱したりで店にものがない状態が続きました。消費者のもとに商品が届かなかった理由はさまざまで、地震により工場や倉庫が被害を受け、商品が作れない、ものがあっても出荷できないということもありましたし、容器や包装を作る工場が被害を受けているために製造ができないというケースもありました。

 今回、日本の物流が本当に複雑な経路を経ているのだなと実感しました。そして、あの時期の人々に現在の風評被害を受けている食材についてどう思うか聞いて見たら、なんと答えるのでしょうか? ちょっと興味があります。

9. 繰り返された牛肉全頭検査

 東京都の屠畜場で暫定規制値を超える放射性セシウム汚染が発見され、その信頼回復のために多くの自治体が牛肉の全頭検査に踏み切りました。しかし、牛肉の汚染原因は明らかであり、対応方法も明白でした。もし、マスコミが不安を煽らず、きちんと報道していたならば、行政が粘り強く説明していたならば、全頭検査を行なう必要はなかったかもしれません。

 結果的に全頭検査は行なわれ、そこに検査能力の多くを割かれる結果となりました。そのため、他の食材を十分に検査することができない事態になっています。一度決めた方針を簡単に覆すことはできません。牛肉偏重の検査体制はいつまで続くのでしょうか。

10. 暫定規制値をめぐるあれこれ

 震災後、これまでの食品に対する放射性物質汚染の管理について、私は満点ではないものの、おおむね評価できると思っています。とくに、初期に放射性ヨウ素に汚染された食品の流通を防止するという需要課題に対応できました。その後もお茶や牛肉、きのこなどの検出事例はありましたが、その都度出荷制限などの対応が行なわれています。これらにはチェルノブイリの経験が生かされているのではないでしょうか。現在では、ほとんどの食品から放射性物質は検出限界を超えて検出されていませんし、検出されたとしても微量に留まっています。

 一方、一部では暫定規制値をはじめとした対策については評価が低いようです。ですが、事故の経過が異なれば、もっと深刻な放射性物質汚染のもと、暫定規制値ギリギリの運用を行なう事態も考えられたはずです。私は3月の時点で決めたものとしては妥当な数値だったと思います。


2011年の10大ニュース
《特別企画》2011年食の10大ニュース[一覧]
これまでの「10大ニュース」
《特別企画》2010年食の10大ニュース[一覧]

小比良和威
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食の安全情報blog主宰 おひら・かずたけ 「食の安全情報blog」筆者。食品関連の仕事に従事。