乳・乳製品容器回収の安全性

No.07(2024.04.03)

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国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。ドイツでは2024年1月1日以降に乳・乳製品・乳飲料用のボトルもデポジット制度の対象となったが、これによる回収機の汚染の程度や、それに起因する健康被害の可能性についてはまだ不明な点がある。

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【ドイツ】乳・乳製品等の容器回収で健康被害はあるか

 ドイツでは一部の使い捨てプラスチックボトルにデポジット制度があり、2024年1月1日以降は乳・乳製品・乳飲料用のボトルもその対象となる。今後、これらのボトルは使用後に回収機に返却しなければならない。

 レモネード、ビール、ジュースなどの飲料ボトルで既に実施されているデポジット制度の場合と同様に、容器内に残っている飲料、とくに乳脂肪やタンパク質が残っていると回収機が汚染される可能性がある。このような汚染問題に関しては、必要なデータが不足しているため包括的リスク評価は現在のところ可能ではない。たとえば、回収機が実際はどの程度汚染されるか、または洗浄と消毒がどのように行われているかについては知られていない。また、ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR: Bundesinstitut für Risikobewertung)は、細菌性バイオフィルムの形成またはカビの発生による健康被害があり得るかどうかを把握していない。

 しかし、BfRの現時点での評価によると、回収機の洗浄が適切に行われれば、消費者の健康リスクが上昇する可能性および食品安全への影響が生じる可能性は低い。これは主に、回収機に関するさまざまな技術が進歩していること、および食品の生産・包装方法の向上により食品中の菌量が減少していることに起因している。

 ドイツの使い捨て飲料容器のデポジット制度は、主に環境保護の観点から2003年1月に導入された。その後、デポジット制度が義務付けられる飲料・飲料容器の種類が追加された。2024年1月1日以降、乳、乳成分含有量50%以上の乳飲料、飲用の乳製品(とくにヨーグルト、ケフィア)に使用される0.1〜3.0リットルの使い捨てプラスチック容器もデポジット制度の対象となった。

 乳・乳製品は非常に腐敗しやすいため、デポジット制度の対象になる前には、その使用済み容器が回収機に返却されることで食品安全に悪影響がないかどうかが検討された。高脂肪製品は一般に粘度が比較的高いため、喫食・喫飲後の容器に残る量が多く、その容器は微生物の増殖に非常に適した環境となる。pH値が中性領域で水分含量が多い乳製品(チョコレートミルクなど)は、細菌による腐敗、とくにタンパク質・脂肪分解性の細菌による腐敗が起こりやすい条件を提供する。pH値が酸性で水分含量が多い乳製品(ドリンクヨーグルト、バターミルクなど)は、酵母およびカビの発生に好都合で、多くのフルーツジュースや果物含有製品にもあてはまる。

 容器内の残留食品が腐敗して悪臭が発生し、微生物が増殖するリスクが上昇した場合、小売店で保存されている他の食品に悪影響を与える可能性がある。低脂肪・低粘度の飲料(ビール、炭酸飲料など)の場合は容器に残る量が少ないため、悪影響のリスクは比較的小さいと考えられる。

 BfRは2003年に、乳・乳製品・フルーツジュースの容器にデポジット制度を導入するためには微生物や衛生に関わる上記のような問題を確実に防ぐ必要があると指摘した。20年前に飲料容器のデポジット制度が初めて導入されてからさまざまな技術が開発されたため、当時の衛生上の問題を再評価する必要がある。技術が進んだ回収機では、投函された容器の受取、分類および破砕が完全に自動的に行われる。このような機械を開発する過程で、洗浄方法に全く問題はなかった。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.07(2024.04.03)
https://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2024/foodinfo202407m.pdf

今号の目次

【世界保健機関(WHO)】
1. 「世界保健機関(WHO)食品由来疾患被害実態疫学リファレンスグループ(FERG)
2021-2025」が第6回会議を開催

【カナダ公衆衛生局(PHAC)】
1. 公衆衛生通知:ヤモリに関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella
Lome)感染アウトブレイク(2024年3月22日付初発情報)
2. 公衆衛生通知:ヘビおよびげっ歯類に関連して発生しているサルモネラ(Salmonella I4,[5],12:i:-および S. Typhimurium)感染アウトブレイク(2024年3月19日付更新情
報)

【欧州疾病予防管理センター(ECDC)】
1. サルモネラ症 ―2021年次疫学報告書

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and Feed)

【ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)】
1. 乳・乳製品などの容器にデポジット制度を導入:使用済み容器回収機の適切な洗浄を
行えば食品安全への影響はないと考えられる