農産品の食品偽装が大幅に増加

No.14(2023.07.05)

薬剤容器(イメージ)

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。欧州委員会(EC)が発表した2022年の警戒協力ネットワークの報告書によると、この1年間に農業食品の偽装行為が大幅に増加した。国際がん研究機関(IARC)のアスパルテームに関する評価結果が、参加者が機密保持の同意書に署名しているにもかかわらず、公式発表の前にメディアにリークされて注目の的になっている。

注目記事

【EC】食品の安全性:食品安全警告は依然として多く、2022年には農業食品偽装に対するEUの協力が強化された

 欧州委員会(EC)は2022年の警戒協力ネットワークの報告書を発表した。報告書によると、この1年間に農業食品の偽装行為が大幅に増加し、食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF)が依然として最も活発なネットワークであった。RASFFを通じて、食品または飼料に関する健康リスクと関連する合計4361件の通知があった。さらに、2554件の行政支援・協力ネットワーク(AAC)の通知、または緊急の健康リスクをもたらさない欧州連合の農業食品チェーン規制に関する違反が報告され、さらに600件の偽装の疑いが通知された。

※ポイント:この食品偽装通知とRASFF通知の年次報告を見ると、現在EU関係国が抱えている問題の概要を知ることができます。RASFF通知のうち化学物質については例年と同様に残留農薬とカビ毒(アフラトキシン)に関する通知が多かったようです。うち農薬については、2020年1月に食用作物への使用の認可が取り消されたクロルピリホスとクロルピリホスメチル、また2020年にインド産ゴマ種子での検出が発端となり現在も問題が終息していないエチレンオキシドおよび代謝物2-クロロエタノールの残留に関する通知が大半を占めています。食品偽装の通知では、たびたび話題になっている、蜂蜜およびローヤルゼリーへの糖類の添加に関する報告の割合が最大でした。

【WHO】国際がん研究機関(IARC)モノグラフ会合134について更新

 IARCは2023年6月6-13日にアスパルテームの発がん影響の可能性について評価した。次いで、2023年6月27日から7月6日までFAO/WHO合同食品添加物委員会(JECFA)がリスク評価を更新する。これらの評価の結果は2023年7月14日にThe Lancet OncologyとWHOウェブサイトで同時に公表される予定である。

※ポイント:IARCモノグラフ会合のアスパルテームに関する評価結果が、参加者が機密保持の同意書に署名しているにもかかわらず、公式発表の前にメディアにリークされて注目の的になっています。IARCはJECFAとの公式発表に先立ち、IARCの評価は発がんの可能性に関する科学的根拠の強さを示しており、がんの発症リスクの程度を示すものではないこと、一方、JECFAの評価は暴露される状況とその量を考慮してリスクの程度を示すものであるという、両者の評価の性質の違いを説明するQ&Aを公表しました。両者の評価結果の公式発表については、次号でご紹介する予定です。

 アスパルテームについては、これまでにも各国の食品安全関係機関が評価を実施し見解を発表してきました。今号にも米国食品医薬品局(FDA)の見解をご紹介しています。安全情報部では、食品安全情報で過去にご紹介したアスパルテームに関する記事をまとめたファイルを下記サイトへ掲載する予定です。ご興味のある方は参考にしてください。

※「食品安全情報(化学物質)」のトピックス
https://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/chemical/index-topics.html

(安全情報部第三室)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.14(2023.07.05)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2023/foodinfo202314c.pdf

今号の目次

【WHO】
1. 出版物(食物アレルゲンのリスク評価:パート3、など)
2. 子供たちを食品マーケティングの有害な影響から守る政策についての WHO ガイドライン発表
3. 疾病負荷推定のための系統的レビューやその他研究に関心のある人材を募集
4. 国際がん研究機関(IARC):IARC モノグラフ会合134について更新

【FAO】
1. 食品安全と品質-FAO は化学物質暴露と腸内細菌叢に関する3つのレビューを発表
2. Codex

【EC】
1. 食品の安全性:食品安全警告は依然として多く、2022年には農業食品偽装に対する
EU の協力が強化された
2. 持続可能で健康的な食品を簡単な選択にすべき、主任科学アドバイザーグループが言う
3. SCHEER(環境及び新興リスクに関する科学委員会)
4. SCCS(消費者安全に関する科学委員会)
5. 査察報告書
6. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. 新しい定期刊行物「Food Risk Assess Europe(FRAE)」
2. ONE 会議2022年:1年経過
3. 食品酵素関連
4. 遺伝子組換え関連
5. 農薬関連
6. 飼料添加物関連

【GOV.UK】
1.2023年政府の化学者会議のプレゼン

【FSA】
1. FSA 理事会
2. FSA と FSS による新規制製品申請システムが開始される
3. 英国の家庭の食料不足:データと研究状況
4. 栄養調査

【COT】
1.2023年7月11日の会合

【FSAI】
1. スモークフレーバーの SF-007及び SF-010は2024年1月1日から食品への使用が認められない
2. 何故アスパルテームがニュースになっているのか?

【BfR】
1. 食品安全のグローバルな科学交流の強化
2. トラフ(餌箱)からプレートへ-なぜ安全な飼料がヒトの健康にとっても重要なのか

【ANSES】
1. バスク海岸におけるOstreopsis中毒の防止

【Ruokavirasto】
1. フィンランド食品局と Fimea は動物用医薬品の販売と使用に関する報告書を作成している

【SZPI】
1.年次報告書2022年

【FDA】
1. 食品中のアスパルテーム及びその他の甘味料
2. 食品トレーサビリティ規則のための新たな FAQ と追加ツールを発表する
3. 規制局の新しいモデルを含む統合ヒト用食品プログラムの提案に関する最新情報を提供する
4. 警告文書
5. リコール情報

【NTP】
1. TR-602(トリス(クロロプロピル)リン酸異性体混合物について)

【EPA】
1. 安全でない新規 PFAS が販売されるのを予防するための新たな枠組みを発表

【USDA】
1. ミツバチヘギイタダニとチヂレバネウイルスはミツバチを殺虫剤により感受性にする
2. 交配、ミツバチ、そして4つの P
3. 培養肉と家禽食品サンプリング計画
4. APHIS は規制状態レビュー回答を発表:Inner Plant の大豆とトマト、Ohalo Genetics のジャガイモ

【FTC】
1. 詐欺的レビューと推薦に取り組む更新広告ガイドを発表

【CFIA】
1. そのまま喫食可能な料理や海藻製品中の有害金属

【FSANZ】
1. 乳児用調整乳にヒトと同じ乳オリゴ糖を添加することへの意見募集
2. 食品基準通知

【NSW】
1.2023冬の Foodwise ニュースレター

【MPI】
1. 食品事業者は毎年模擬リコールを行う必要がある

【香港政府ニュース】
1. ニュースレター
2. 違反情報

【MFDS】
1.日本産輸入食品の放射能検査の結果
2.「やるべきことをやらない、とんでもない放射能検査」報道について説明
3. 食医薬ヤングリーダーたち、食薬処に集まろう!
4. オンライン食・医薬安全管理、民間が先頭に立ち、政府が後押しして
5. 海外からの直輸入食品に対する安全管理が一層強化されます

【HSA】
1. 一週間の国際的作戦で2,361件のオンライン品目を削除し、360個の違法な健康製品荷物を調査した
2. 食品中の「永遠の化合物」
3. ノンスティック・フライパンの安全な使用

【FSSAI】
1. ヒマーチャル・プラデーシュ州の栄養補助食品会社に警告

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・ProMED-mail1件