杏仁にシアン化物中毒リスク

国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(化学物質)No.10(2016.05.11)を発表した。

注目記事

【EFSA】アプリコットカーネル(杏仁)はシアン化物中毒リスクとなる

アプリコットカーネルにはアミグダリンと呼ばれる天然に生じる化合物が存在し、食べるとシアン化物に変わる。シアン化物中毒は吐き気、発熱、頭痛、不眠症、喉の渇き、倦怠感、神経過敏、筋肉と関節の痛みと疼き、血圧低下を引き起こす恐れがある。極端な例では命にかかわる。欧州食品安全機関(EFSA)は、シアン化物の急性参照用量(ARfD)を20μg/kg体重と設定し、一般に生のアプリコットカーネルに存在するアミグダリン量に基づきARfDを超過することなく食べられるアプリコットカーネルの量は、成人では小さな粒を3つ(370mg)、幼児では小さな粒1つの約半分(60mg)だとしている。

※ポイント:健常な成人にアプリコットカーネルを与えたボランティア試験のデータ(Abraham et al. 2016)を用いていること、アプリコットカーネルの粒の大きさを考慮していること、が新しい点です。アプリコットカーネルの摂取リスクについて欧州では以前にギリシャ食品局(EFET)とドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)が評価していますが、今回のEFSAと結論が異なっているため、その問い合わせに対するEFSAの回答を示した共同文書も一緒に公表しています。新しいヒトボランティア試験をもとにしたNOAELとなる摂取量や、ARfDを導出する際の不確実係数の考え方の違いが結論の相違につながっているなどの説明をしています。

【EFSA】ビスフェノールAの免疫系への安全性がレビューされる

EFSAが以前に実施した評価よりも後に、ビスフェノールA(BPA)による胎児と幼い子どもの免疫系への影響について懸念を提示した報告が発表され、オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)がそれらの報告も含めた評価報告を行ったことを受けて、特別にレビューを開始することとなった。その手順書についてのパブリックコメントも実施している。

※ポイント:EFSAによるBPA評価は一段落ついたと思っていましたが、まだ継続しているようです。来年には、米国国家毒性プログラム(NTP)の2年間毒性試験の結果を含めた再評価と、この免疫系への影響評価の報告を予定しているとのことです。

【EFSA】外部科学報告書:ヒトリスク評価のための非単相性用量反応(NMDR)物質のレビュー

食品安全分野の物質についての2002年以降の科学文献のクリティカルレビューにより、非単相性用量反応(NMDR)仮説の根拠を評価した。系統的レビューの方法論に則り、最低5用量以上の用量反応データを抽出した。それらの用量反応についてNMDRのエビデンスレベルを6つのチェック項目で評価した。

※ポイント:オーストリア(AGES)、フランス(ANSES)、スウェーデン(カロリンスカ研究所)、オランダ(RIVM)の研究機関が実施したEFSA外部委託研究の報告書です。かなりの力作で、その作業量を想像すると圧倒されます。食品中化学物質による健康へのリスクを評価する際には、用量反応性があるか、それが単相性なのかそうでないのかは非常に重要な要素なので、この6つのチェック項目は有用な判断基準となるでしょう。

(安全情報部第三室)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.10(2016.05.11)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2016/foodinfo201610c.pdf

今号の目次

【WHO】
1. 国際がん研究機関(IARC):チェルノブイリから30年:チェルノブイリ惨劇の健康影響研究についてA. Kesminiene博士とのインタビュー

【EC】
1. 食品ロスと食品廃棄のための欧州プラットフォームに本日から応募者募集
2. 食品獣医局(FVO)査察報告:コスタリカ、モルドバ
3. 食品および飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. アプリコットカーネル(杏仁)はシアン化物中毒リスクとなる
2. 外部科学報告書:ヒトリスク評価のための非単相性用量反応(NMDR)物質のレビュー
3. ビスフェノールAの免疫系への安全性がレビューされる
4. EFSAはイノベーション賞を始める

【FSA】
1. 食物アレルギーのある人の1/4は外食時の反応に苦しむ
2. FSA理事会:2016年5月18日
3. 新規食品申請の意見募集

【BfR】
1. グリホサートの疫学研究:欧州リスク評価のための新しい知見はない
2. BfRは内分泌攪乱物質についての専門家会合に基づくワークショップ報告書を発表

【RIVM】
1. オランダOverijssel とLimburg地方の地下水および飲料水のラドン-222:測定キャンペーン2015
2. 学校の食環境

【DGCCRF】
1. 茶のピロリジジンアルカロイド汚染モニタリング

【FSAI】
1. FSAI会議が若い人のパフォーマンス栄養について探る
2. FSAIの報告書は重大な先天異常リスクを減らす選択肢を提案

【FDA】
1. FDAはメニュー表示について最終ガイダンスを発表
2. FDAはカナダを米国と同等の食品安全システムをもつと認める
3. FDAはナマズ目の魚の監視をUSDAに移す
4. FDAは2014健康食事調査の知見を発表
5. FDAは予防を主体とする輸入安全計画のFSMA戦略履行に関する3つの公聴会を開催する
6. リコール
7. 公示
8. 警告文書

【FTC】
1. Simple Pure サプリメントの販売業者はFTCと訴訟で和解
2. 最高裁判所がPOM Wonderful の判例は見直さないと決定したことについてのFTC委員長Edith Ramirezの声明

【TGA】
1. 安全性助言

【香港政府ニュース】
1. オンライン食品販売規制

【HSA】

1. HSAは人々に対し海外で購入した、患者に重大な副反応が生じる’Hai Leng Hai Beh Herbal Itch Removing Capsule’(‘海龙海马止痒丸’)について警告

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・(ProMED-mail)原因不明の食中毒、致死 パキスタン(パンジャブ)
・(ProMED-mail)シガテラ魚中毒 中国:(香港)
・(ProMED-mail)鉛、水 米国:(第6報)(MA, WA)学校
・(ProMED-mail)下痢性貝毒 米国:(ワシントン)
・(ProMED-mail)クレンブテロール、肉-米国:フットボールプレイヤー
・(EurekAlert)ハーブレメディは見過ごされている世界的健康ハザードである
・文献