ここ数年、中国を高い頻度で訪問しているが、そのなかで強く感じることの一つは、中国のパン市場が急速に拡大しているということだ。
大規模超市に並ぶ焼きたてパン
最初に、この記事で「パン」に含めるのは、日本のパン専門店が扱っているものやスーパーやコンビニのパン売場に並ぶような、普通にイメージするパン以外のものも含めていることをおことわりしておきたい。たとえば、饅頭（マントウ。蒸しパンの一種）に近い状態のものも中国の人にとってはパンの仲間に入るようだ。
中国のパンの販売店は多様である。パンそのものであれば、小規模な超市でもそれは包装品を扱っている。饅頭類は個人経営の店で、自家製のものを売っていることが多い。一方、コンビニや大規模な超市であれば、食パン、菓子パン、サンドイッチが棚に並ぶ。これらでは、日本メーカーと提携した製品も見かける。
大規模超市（本連載第12回参照）の中には、店内でパンを焼いているケースもある。日本であれば、「デイリーヤマザキ」に「デイリーホット」というコーナーで店内焼成のパンを販売している店舗があり、そのイメージに近い。日本では冷凍耐性のあるパン酵母を使用した冷凍パン生地を用いて、小規模店を含むさまざまなタイプの現場でパンを焼いている例があるが、中国ではまだ例が少ないため、スクラッチ（店舗で生地から製パンする）が多いと推測している。
大規模超市のパンと言えば、広州のイオンモールでバターたっぷりの大きなクロワッサンが売られていたことがあった。極めてリーズナブルと感じ、帰国時に土産として買い込んで来たものだ。
大規模超市では、グローサリーを見ても、パン消費の定着を感じさせるものがある。というのは、たとえばキューピーのマヨネーズやドレッシングがある売場では、アヲハタのジャムも棚に並んでいるのをよく見かけるのだ。ジャムはヨーグルトに添えたりすることもあるだろうが、やはりパンに塗るなどして食べることが多いだろう。
日本のパン、海外のファストフードも成長
中国に滞在中は、筆者もパンをよく利用する。仕事が終わって観光してから帰国することも多いが、その出かける先に料理店が期待できない場合、弁当としてパンを買って持参することもある。あるときは、小ぶりのあんパンやクリームパンが5つほど入っている菓子パンを選択した。あれは日系資本のものだったと記憶する。
中国のパン市場拡大には、2000年代に入ってからの日本の製パンメーカーの中国進出も一役買っている。たとえば、山崎製パンは早くも1981年に香港ヤマザキを設立しているのだが、2004年に上海ヤマザキを設立し、中国本土での事業を開始し、事業を拡大している。また、2009年には伊藤忠商事と敷島製パンが、中国・台湾で事業を展開する大手食品グループ頂新国際集団傘下の味全食品工業と合弁で中国における製パン事業に参入し、上海工場を建設している。
大規模超市で「北海道」と大きく表示したデニッシュが大量に並んでいる光景を見たことがある。北海道は中国でも人気の観光地でイメージがよいため、「北海道」はしばしば食品や菓子類の名称に用いられる。
パンの消費拡大のもう一つの形は、サンドイッチ等のファストフードの普及だ。ハンバーガーは「バーガーキング」「マクドナルド」「ロッテリア」などが上陸している。それらのいくつかの店舗を利用したが、いつも子供連れの家族で賑わっていた。また、「サブウェイ」は1995年に中国での出店を開始し、現在は中国全体で600店台の展開状況のようだが、先頃、今後20年で4,000店体制に持っていくとの発表があった。
