コンビニエンスストアのこれから(1)

コンビニエンスストアに関する問題点
コンビニエンスストアに関する問題点
コンビニエンスストアに関する問題点
コンビニエンスストアに関する問題点

大きく市場が拡大したコンビニエンスストア業界だが、ここにきて成長が鈍化し、岐路に立つとも言われる。では、今後のコンビニエンスストア業界がどうなっていくのか、また、その中で成長を続ける秘策はあるのか、別の業界での経験を踏まえて検証と提言を行っていく。

コンビニチェーンとオートバイ販売網の共通性

 過日、ある方面から、コンビニエンスストア(以下CVS)の将来、具体的には売上増加策等の提言をしてほしいとの要望をいただいた。そのためにリサーチしたことを含め、“CVS業界の常識”にとらわれない視点から考えたことをお話したい。

 私がアンクル・アウル コンサルティングを開業してからすでに3年を経たが、まだ私を“オートバイの専門家”ないしは“自動車業界の専門家”とお考えの方がいらっしゃるので、なぜ私がCVSについて提言するのかと思われるかもしれない。

 確かに、私が3年前まで社長を務めていたハーレーダビッドソン ジャパン(以下HDJ)の仕事は、アメリカ製オートバイの輸入並びに卸売である。この商品は有名ブランド品であり、日用品ではなく、買い回り品でもない。当然マーケティングのやり方はCVSとは違うし、販売は徹底した対面販売であり、アフターセールスサービスも行うから、セルフサービスで売り切りのCVSとは顧客との付き合い方からして大きく異なる。

 しかし、HDJで実践してきた仕事と、CVSとの間には重要な共通項がある。それは、顧客接点すなわち店舗網=販売チャネルのあり方である。しかも、CVSの多くの店舗の実態を社会的な視点で見ると、HDJの属するオートバイ業界の場合と極めて類似しているのだ。

 つまり、これらはともにチェーン・ビジネスであるということだ。

バーチャルなフランチャイズ・チェーン

 HDJは、どの販売店とも資本関係や人事的な関係はなかった。また、フランチャイズ・チェーンでもない。しかし、運営の実態として見れば、HDJがチェーン本部、各販売店(正規販売店)が加盟店というように、フランチャイズ・チェーンに似た形になっている。他メーカーのオートバイ販売でも、これはほぼ同様だ。

 オートバイの販売網とCVSチェーンは、販売店とCVSのフランチャイジーの企業規模の点でも類似している。

 HDJ販売店の場合は大型店が多く、1店当たりの従業員数は平均10.5人だったが、経産省の商業統計(2008年)によれば、オートバイ販売店の従業員数は全国平均で1店当たり2.5人程度である。つまり、基本的には夫婦2人で、1~2人の社員(パート・アルバイトではなく正社員が多い)を抱えているイメージとなる。

 資本としては、経営者自身が出資し、オーナーとして店舗を開設して経営に当たるケースが圧倒的に多い。その平均年間売り上げはわずかに4500万円ぐらいという、中小零細小売業である(ただし、HDJの正規販売店では、1店当たりの年間売上高5.5億円)。

 店舗面積は、CVSの商業統計上の規準である30m2~250m2よりは大きなサイズの店舗が多い。労働時間は朝10時~20時くらいが一般的で、比較的長時間である。

 日常の店舗運営に関しても、HDJと正規販売店との契約は、基本的にはCVSのフランチャイズ契約との共通点がある。チェーン本部に当たるHDJが基本的なハーレーブランドに関してのマーケティングを展開し、販売店はこれに基づきつつ各店の主体性を発揮して販売活動を展開するのだ。

 HDJ販売網の場合は、CVSのフランチャイズ契約の場合よりも店ごとの自由裁量範囲はかなり広いが、やはりブランドに関する厳しい運用規定が存在するし、HDJから店頭等の改善、販売強化の方法など、具体的な指導が繰り返される。また、資本関係のない関係で、しかも正規販売店はHDJの顧客という関係でありながら、正規販売店からHDJへの販売情報の提供も求めた。

激しく縮小する市場の中で唯一成長したハーレー

 一方、HDJとCVSの違いとして気付く点の一つは、HDJと販売店が協同する場面が多く、重要でもあったという点だ。

 たとえば、季節に応じたイベントやキャンペーンも数多く開催したが、これらはHDJと販売店が“ファミリーとして連動する”販売活動であった。キャンペーンの多くは全販売店の店頭で展開し、イベントではHDJのリーダーシップのもと、地区ごとに、場合によっては全国の販売店が連動してサーキットや公園など大規模な会場を借り切り、HDJと販売店が協力し合って開催するということも多かった。

 また、正規販売店は中小零細企業と記したが、実はHDJ自体も資本金4000万円、従業員数十名の中小企業であり、CVSのフランチャイザーのような大規模な事業体ではない。

 業界の趨勢の違いということもある。

 オートバイ業界の最盛期は82~83年頃である。この頃は商業統計ではオートバイ販売店は自転車販売店と混同されていたので正確な販売店の店舗数はわからないが、業界紙誌では約4万~5万店はあったとする記事が散見される。つまり、80年代前半には今のCVSに匹敵するだけの店舗数があったわけだ。ところがその後、凋落を続けるオートバイ市場を反映して、2008年には商業統計でも1万1000店を割り込んでいる。

 オートバイの販売台数も、最盛期の82年は年間329万台だったが、2008年にはこれが60万台を割り込んで、市場は6分の1未満までに縮小した。

 一方、CVSは商業統計に入ってきた1983年には店舗数が6308店だったが、これが2008年には4万4391店と約7倍に増加していて、業界全体の売上高も大きく伸ばしている。

 したがって、業界の成長状況に関して言えば、オートバイ販売とCVSは全く逆の道を歩んできたことになる。

 だが、ここに来て、CVSの成長も頭打ちとなり、岐路に立っているとも言われる。

 そこで、CVSが今後どうなるか、どうするべきかという問いをいただいたわけだ。それと言うのも、オートバイ業界にいたのだから、市場が縮小する業界のことはわかるだろうというということだろう。しかも、手前味噌になるが、HDJはそのように四半世紀以上にわたって凋落を続けたオートバイ市場の中で、唯一24年連続して増販・増収をなし遂げた。それをどのように実現したのかを研究すれば、店舗網など基本的な仕組みは似ているCVS業界のことだから、今後競争優位に立つ方策が見えるはずと、意見を求められたわけであったようだ。

About 奥井俊史 106 Articles
アンクル・アウル コンサルティング主宰 おくい・としふみ 1942年大阪府生まれ。65年大阪外国語大学中国語科卒業。同年トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)入社。中国、中近東、アフリカ諸国への輸出に携わる。80年初代北京事務所所長。90年ハーレーダビッドソンジャパン入社。91年~2008年同社社長。2009年アンクルアウルコンサルティングを立ち上げ、経営実績と経験を生かしたコンサルティング活動を展開中。著書に「アメリカ車はなぜ日本で売れないのか」(光文社)、「巨象に勝ったハーレーダビッドソンジャパンの信念」(丸善)、「ハーレーダビッドソン ジャパン実践営業革新」「日本発ハーレダビッドソンがめざした顧客との『絆』づくり」(ともにファーストプレス)などがある。 ●アンクル・アウル コンサルティング http://uncle-owl.jp/