業種・業態の分類(2)

チェーン・ビジネスにおける業種・業態を区分する要因:15の整理
チェーン・ビジネスにおける業種・業態を区分する要因:15の整理
チェーン・ビジネスにおける業種・業態を区分する要因:15の整理
チェーン・ビジネスにおける業種・業態を区分する要因:15の整理
企業内・企業間であるべき連鎖・連携について考え直す連載。このシリーズで言う「チェーン・ビジネス」の範囲と、一般に行われている業種・業態分類の特徴を見ている。今回は、対面販売かセルフサービスかでの区分と、ショップ/ストアか販売店/特約店かという呼称での区分について説明する。

(3)対面販売志向かセルフサービス志向か

 前回見た例の中でも、“売り方の違い”は分類しやすい。すなわち、対面販売(非セルフ販売)であるかセルフサービスによる販売であるかの違いは、誰が見ても明らかに分類できる。生活者から見ても、経営側から見ても重要な業種・業態区別の基準になっている。

 百貨店は伝統的に、そして現在も、対面販売が売り方の原点になっており、法的、統計的な区分とも一致している。一方、ホームセンター、ドラッグストア等の“カテゴリーキラー”はセルフサービスを原則としているが、店の独自のビジネスシステムや取り扱い商品の特性に合わせて、極めて限定的に対面販売(的)な要素を採用しているところも増え始めている。

 外食産業でも、セルフサービスのシステムを作った「マクドナルド」などのファストフードサービスがある一方、「ガスト」「ロイヤルホスト」等のファミリーレストランは対面販売的である。居酒屋チェーンや焼肉チェーンなどの販売形態もファミリーレストランと同様であったが、昨今はセルフオーダーシステムや回転寿しのようなレーンを取り入れるなど、セルフサービス的に舵を切っているところも現れている。

 ここで私は、従来よく行われてきたキャッシュアンドキャリーであるか否かという単純な分類とはやや異なる視点による分類を提案したい。

 つまり、店舗という“顧客接点”において、スタッフが販売のために費やす時間の長短だけでなく、顧客に対面する頻度、対面時の顧客とのコミュニケーションの量、複雑性、専門性等の“対面時の対話の内容・質”によって、対面販売志向かセルフサービス志向かに区分するのだ。

 これは、経営側から見れば、以下各項の実現の必要性、実現可能レベル等を基本とした区分基準となるはずのものだ。

●Standardization(標準化)がどこまで進められるか
●Simplification(単純化)がどこまで進められるか
●Specialization(特殊化)がどこまで進められるか
●Centralization(集中化)がどこまで進められるか

(4)ショップ/ストアと販売店/特約店

 チェーンには、河川にたとえると下流・河口に相当する顧客接点を、「ショップ」「ストア」と呼ぶ場合と、「販売店」「特約店」と呼ぶ場合の2通りがある。この呼称(グループ)の差がいかなる相違から来るのかをはっきりさせておきたい。

 というのは、以下が業種・業態の重要な区分・判断の基準になり得ると考えるからだ。

●生活者に“財”を提供するための連鎖の中で、顧客接点がどう位置づけられているか。
●メーカーやチェーン本部等のサプライヤーが、顧客接点に対してどの程度の期待を持っているか。
●サプライヤーと顧客接点との間のポジショニング。

 たとえば、一般にフランチャイズ・チェーンの飲食店やコンビニエンスストア等においては、ショップやストアの店頭は、本部が構築したフランチャイズ・パッケージに完全に組み込まれた、チェーンの“構成部品”と位置づけられている。これらの場合、顧客接点である店頭で、ショップやストアの自主性の発揮は基本的に全くと言っていいほど期待されていない。

 一方、工業製品のセールス・チェーンに多く見られる、販売店・特約店と呼ばれるネットワークにでは、顧客接点であるショップやストアの店頭においては、販売店が自主性を発揮することが求められ、期待され、独自性の演出のためにアイディアを出すことが要求されることも多い。

 これらの場合、基本の契約内容として、顧客接点自らによる顧客創造並びに顧客維持の自発的努力と責任が強く期待され、また要求もされる。これは製品特性によるアフターセールスサービスの必要性やメンテナンスの必要性の有無とも強く関係している。

 換言すれば、顧客接点独自の機能、販売プロセスの中で顧客接点が付加する価値の大きさ、顧客から見たサービスの質やCS(顧客満足度)等が重視される業種業態だと言える。これらをトータルに判断・評価すれば、感性価値(顧客価値)が重視されているということにほかならない。

 商品・サービスなどの“財”自体がアフターセールスサービス(A/S)やメンテナンスがなくては、“財”の使用、消費の目的を十分には実現できない場合には、顧客接点としての自主性が大いに求められ、期待される。このような場合、顧客接点自らが販売実現の段階と販売後の活動で自主性を発揮し、新たな価値を生み出していることが多い。これは、個々の顧客接点自らが付加価値を生み出すプロフィット・チェーン(バリュー・チェーン)であることを意味する。

 この点は、標準化された商品を標準化されたしくみで販売する従来型のチェーンストアが目指すものとは大きく異なる。とくに販売プロセスの事前および事後で、顧客接点に対して独自の価値を何ら期待されないセルフサービス志向とは大きく異なる業種・業態となる。

 一例として、オートバイでは平均価格帯が最も高いハーレー・ダビッドソンを見てみる。通常、ハーレーは毎日乗る乗り物ではないが、顧客が思いついて乗りたいと思ったときに乗れなければ、単なるクズ鉄でしかない“物”となってしまう。このような状況がもしも多発すれば、期待する台数など売れるわけがない。ハーレーが大切に育ててきたブランドも壊れてしまう。したがって、いつでもどこでも乗りたいと思った時に、顧客が買い求めたハーレーが動くことを保証できるしくみが、ビジネスチェーンプロセスの中で構築されていなければならない。

 それを実現するためには、東京にしかない、しかもハーレー全体のマーケティングとセールス体制の構築に機能を選択集中していたハーレーダビッドソンジャパンだけでは、当然対応は不可能だ。また、どこか1カ所の販売店だけでも対応できない。したがって、全国に自主性と独自性を持つことが期待できる、顧客からの多様な要望に対応して行ける機能を持った“多数の顧客接点としての販売店(ディーラー)”からなるネットワークを構築することが絶対必要である。

 ハーレーのセールス・チャネルにおいては、販売店の積極的かつ自主的な販売活動を期待し、販売店の自己責任、メーカーの自己責任、相互の共通責任を果たして行くことを強く求めていたが、しかし、かといって他社の製品の取り扱い、いわゆる“併売”は認めていた。このようにこの業種・業態の区分の基準は専売と非専売の違いを意味することとは異なる。

奥井俊史
About 奥井俊史 106 Articles
アンクル・アウル コンサルティング主宰 おくい・としふみ 1942年大阪府生まれ。65年大阪外国語大学中国語科卒業。同年トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)入社。中国、中近東、アフリカ諸国への輸出に携わる。80年初代北京事務所所長。90年ハーレーダビッドソンジャパン入社。91年~2008年同社社長。2009年アンクルアウルコンサルティングを立ち上げ、経営実績と経験を生かしたコンサルティング活動を展開中。著書に「アメリカ車はなぜ日本で売れないのか」(光文社)、「巨象に勝ったハーレーダビッドソンジャパンの信念」(丸善)、「ハーレーダビッドソン ジャパン実践営業革新」「日本発ハーレダビッドソンがめざした顧客との『絆』づくり」(ともにファーストプレス)などがある。 ●アンクル・アウル コンサルティング http://uncle-owl.jp/