輸入チキンから見るタイと中国の供給事情の変化

中国の食品工場(写真:編集部)
中国の食品工場(写真:編集部)

【チキンの商品開発 1】食品関連の原料高はかつてない勢いで継続してきているが、畜肉製品についても、例外ではない。輸入チキン加工品の一般的な状況と、意外に語れらてはいないことについてお伝えする。

ライン生産のタイ、手作業の中国

FOODEX JAPANのタイゾーン(写真:編集部)
FOODEX JAPANのタイゾーン(写真:編集部)

 日本のチキン輸入加工品のメイン拠点は中国とタイというパターンがほとんどだが、ここへ来て今までの流れに変化が見られる。

 数年前までの両拠点の使い分けは、タイは高度に管理された工業製品的な食品加工が得意で、中国は安い人件費をメリットとした手作業の入る商品の生産が得意というポイントでされてきた。

 たとえば、高度なスパイス調合の技術が必要な製品や、衣の結着が絶対であるプリフライのような商品は、タイの機械化されたラインで製造する。一方、炭火焼や焼き鳥の串うちなど、人手や手間のかかる製品は中国がコスト的に有利とされてきた。

 タイの場合、国のメイン産業である鶏業界は、日本で言えばNTTやトヨタなどの一流企業に就職するくらいの価値があるため、優秀な労働力が集まりやすい。そのため、飛躍的な技術革新には素晴らしいものがあったと考えられる。90年代はタイも炭火焼や焼き鳥を生産している工場が多かったが、2000年代からはライン生産品がメインとなり、効率を追いかけるようになってきていた。

 しかも、原料である鶏肉の生産から手がけている巨大企業が多く、トレーサビリティがききやすいのもタイの特徴である。

管理レベル高い工場も多い中国

中国の食品工場(写真:編集部)
中国の食品工場(写真:編集部)

 中国に関しても、多くの日本企業が品質管理基準導入を求め、ISOやHACCP対応の管理レベルの高い工場も多く見られる。

 少し横道にそれるが、昨今、中国製品が避けられたり、バッシングを受けたりするケースが見受けられ、これが気になる。本質は「中国産は○○だ」と十把一絡げに片付けられるようなそんなに単純なものではないはずだ。

 確かに心ない人間による残念な結果も散見されるが、それは中国に限った話ではない。あれだけ人のいる大きな国に対して「中国製品はよくない」とひとくくりにすること自体が単純すぎる話である。たとえば日本でも事故米を食品に転用していた心ない業者の事件の記憶も新しいが、その事件一つを取り沙汰して「日本製品はすべてだめ」と論じるようなものである。あの事件があったからといって日本企業全部がだめであるはずがないのである。

 歴史的な背景や感情から国民性を論じる風があり、その影響もあるだろう。しかし、ビジネスパーソンに重要なことは、「日本は」とか「中国が」とかひとくくりに見ないようにすることだ。自社に関係のある一つひとつの製造拠点や事例をどのように確かめていくかが大切であり、その際、グローバルスタンダードにのっとった自社の調査方法、判断基準、評価をきちん実行できるようにすることが、他社に対する差別化ポイントの構築であり、自社のノウハウになってくる。

 まずはパートナーとの人間関係を構築していくことが重要だ。国内・海外を問わず生産者のレベルはさまざまであることを理解し、その取り組み先と人間として信頼のできる付き合いを深めていかねばならない。

 また、国が違えば日本の常識が通用しない場合は多い。円が強かった時代はよかったが、昨今では、“病的に規格の厳しい”日本向けの製品は歩留まりが悪く敬遠されがちになってきている事実があることも、付け加えておかねばならない。

中国国内需要増と供給拠点変更

 さて、中国の経済成長は目覚しく、前述の「人件費部分のコストが安いので、手のかかる商品は中国に」という常識は崩れ始めている。中国の企業は、規格の厳しい日本向けの商品を作るより、中国国内向けや日本以外に向けた輸出をと考え、その比率が上がってきている。一方、安全面に関する中国不信と供給コスト上昇の流れから、日本の大手食品メーカーは加工製品の製造拠点をタイにシフトしようとしている動きがある。

 鶏加工品日本向け輸入量1位の冷凍食品メーカーのニチレイさんは、66億円を投じてタイの鶏肉加工大手のGFPTと合弁でニチレイGFPTを設立。タイのスラポンニチレイ食品カビンブリ工場を増設し、GFPTニチレイ設立に伴う工場の新設を行った。ニチレイは国産・輸入を合わせると、冷凍されたチキン加熱加工品で約30%の日本国内シェアがあるが、タイでの新たな2工場の稼動により、安定した供給体制を構築し、業界内での圧倒的なポジションの確立を目指す。

 また三菱商事は伊藤ハムベタグロを立ち上げ、新工場が稼動。その他にもタイでは大型の新工場立ち上げや増床の話がある。

 では、これらが仕入れ価格にどのように影響するのか? まずタイの供給量アップは仕入れる立場にしてみれば好材料の一つであるに違いない。中国側の生産量が落ちなければ供給過多になる可能性は高いはずだ。

穀物相場の影響を受けにくいタイ

 また、最近の価格交渉で、値上げを要求してくるパッカー側の説明で多いのが、バイオエタノール原料への利用から、コーンをはじめとする世界の飼料相場の上昇が製造原価を押し上げているという話だ。パッカーは口をそろえて上昇要因の一番で挙げてくるが、果たして本当にそうなのだろうか?

 実のところ、タイ産の場合、飼料価格の影響は少ないからくりがある。実はタイの鶏の加工で一番有利な点は飼料自給率が高いことで、ほぼ100%に近い。また若干不足する時期は5月から8月だが、その調達先は近隣のベトナムまたはインドネシアからの輸入なので、総じて原材料の調達がしやすく、製品価格に響きにくい。為替相場や米国の飼料相場が高騰したからといって、実際は影響を受けているとは言いがたい。

 そのことをわざわざ説明してくれるパッカーはいないとは思うが、飼料の輸入量データを見れば類推できる。交渉のテーブルに着く際、この部分は意識するべきである。タイバーツ高以外の影響は少ないとはずとみていいだろう。

 しかしながら、日本国内の鶏肉の価格は昨年の酷暑の影響が大きく、完全な供給不足になっている。この状況はしばらく続くと思われる。

本部長Q
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FFSチェーン マーケティング本部長 某ファストフードチェーンのマーケティング本部長。コンビニエンスストアチェーン、サンドイッチファストフードチェーン、ハンバーガーファストフードチェーンの商品開発に携わってきたこの道30年の現役マーチャンダイザー。仕入れのために日本中、世界中の産地と工場を訪ね、新商品の設計から物流までに知恵を絞る毎日。