厨師・馬さん/伝説の潮州料理店「潮州」(東京・荻窪)

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まじめな食品業界にかかわる物事を網羅するこちらのサイトに気楽なコーナーを作りたいという編集長のお達しで、私こと上荻吾朗が、ちょっとメタボ入ったチューネン男の食い道楽ぶりをご披露することと相成りました。

走ると食べたくなる悩み

 少々前まで漫画雑誌の編集部にいて、今はWEB製作の会社勤めをしております。震災の後、荻窪-飯田橋間を自転車通勤しています。元々食べることと漫画とエンタテインメントが大好きで、そのためには多少のお金と労力は惜しまなかった人間で、震災からこっちは、健康とメタボ対策と、イザというときのための帰宅困難回避を考え、自転車通勤者になりました。

 自転車は一応気張って、Cannondaleのロードバイク、CAAD10を――エイヤッと買ってしまったら、いやでも続けるだろう十ン万円!っていう頼りない思い切りのよさだった。でも、これがやってみると、えらく気持ちいいし、楽しい!

 交通状況は常に注意しなければならないし、マナーは守らなきゃならないけど、満員電車に乗る必要もないし、エクセサイズ効果は高い。通りすぎる街中のいろいろな様子も、人の目の高さでわかる。なにより、寄り道して、買い食いしたり、お茶したり、おいしいものを見つけたり……楽しみ方が無限に広がりそうなのが、自転車通勤の魅力であろう。

 もっとも、寄り道しておいしいもん食べ過ぎて、なかなか体重が減らん、というのは誤算だけど(笑)。

 というわけで、この連載には自転車の話がけっこう出て来ます。また、漫画編集部にいたこともあって、漫画の話もします。とくに最近の食べ物系漫画の隆盛には目を見張るものがあるので、そんなあたりもお話できたら、と思っています。

厨師とは特別な料理人の称号だったのですね

「潮州」(東京・荻窪)
「潮州」(東京・荻窪)

 さて、記念すべき第1回。ご紹介したいお店を訪ねた日はあいにくの雨だったけれど、それでも自転車を押してうかがいましたよ。住まいのある荻窪の「潮州」さん(中華:潮州料理)。

 漫画で中国料理というと、昔からよく扱われる。いや、いちばん扱われる料理ジャンルかもしれない。たとえば、まず、元祖ともいうべき「包丁人味平」(原作:牛次郎、漫画:ビッグ錠)でもラーメンを扱っていたし、いちばんメジャーである「美味しんぼ」(原作:雁屋哲、漫画:花咲アキラ)でも、周大人が活躍し、さまざまな中国料理が出てくる。中国料理のあの勢いと、料理の見た目からも伝わる派手さ、そして読者への親しみやすさからなのだろう。

 でも、中国料理漫画としてとりわけインパクトを覚えたのが「中華一番!」(小川悦司)と「鉄鍋のジャン!」(西条真二)の2つ。「鉄鍋のジャン!」は性格漫画でもあるので今回は横に置いておくとして、やっぱりインパクト大きいのは、アニメにもなった「中華一番!」。四川料理の天才少年リュウ・マオシンが天下一の料理人を目指すのがだが、そこで出てくるのが、彼が手にする「特級厨師」という称号。漫画だけの称号と思っていたら、実際に中国本土で特別な料理人につけられる称号なのですね。

 その「厨師」に、はじめて接したのが、こちらの「潮州」さんのシェフ、馬(マー)さんだった。お店は以前は南阿佐ヶ谷にあり、小さな店ながら連日超満員で伝説のお店になっていた。そこでのキャッチフレーズが「厨師の馬(マー)さんが腕を振るう、最高においしい潮州料理!」。それまで潮州料理も知らなかったから、「厨師」も、「潮州料理」も、「潮州」さんではじめて体験したことになり、その素晴らしさの虜になった。

 お店は、ずっと南阿佐ヶ谷の伝説的なお店だったけれど、なにしろ狭かった。それを移転して、ちょっと広めにテーブル席が20席ほども置かれるようになったのが、この荻窪時代の「潮州」さんなのだ。もちろん、おいしさは微塵も揺るがないのが嬉しいところ。

本日のセレクトは止まらない

菜単を見ている間にもわくわくが止まらない
菜単を見ている間にもわくわくが止まらない

 今回は少しでも多く食べたいために同好の士と荻窪駅で待ち合わせて訪店。僕自身ただでさえ食いしん坊なのに、同じくらい食いしん坊の連れとセットになると食欲にターボがかかる。「本日のおすすめ料理」を中心にしてセレクトした。

岩手県産鶏レバーのしぐれ煮
広東名菜油菜心の炒め
潮州焼きギョーザ
潮州肉団子と春雨の炒め
天然ホワイト海老の香味炒め
XO醤
レタスチャーハン
栗のムース

「ギョーザだけ」の夢は今日も果たせず

 まず、鶏レバーのしぐれ煮。いい意味でレバー本来の味を生かしながら、ちょっと固めのペーストにして。ねっとりとした食感がなんとも素敵なのだ。

 そして、油菜心の炒め。これがまた絶品。潮州料理というか、馬さんの特徴である塩味のきかせ方が絶妙で。油菜心自体のもつ歯触りやアクさえ転換して美味に変えてしまう。

 そしてそして欠かせないのが焼きギョーザ。繊細で、もちもちで、ねっちりして、そしてジューシー。酢醤油にひたして口に運べば、そこには必ず幸せが訪れる。

 実際、ギョーザはこのお店の看板メニュー。いくらでも食べてしまえるのだが、他の料理もとにかくおいしいため、腹具合を考え、いつも、一人前(5コ)で泣く泣く終わらせてしまう。いつか思うさま、心行くまで食べてみたいものよのう……などと「芋粥」(龍之介)めいたことを考えてしまうが、またこちらにうかがうと、他の料理への尽きせぬ興味で身が引き裂かれてしまいそうになるのですね。

 そう思いながら注文した肉団子と春雨の炒め。まぁ、ヤバいくらいおいしくて、極旨でうっとりしちゃう肉団子に、ほどよく塩味が効いた春雨が絡んで……というのはもちろんなのだが、アミをはじめとした甲殻類も入って、コショウもピリリときいていて……これまたステキ。ぜひぜひぜひご飯の上にかけまわして食べたかった!

  • 岩手県産鶏レバーのしぐれ煮
    岩手県産鶏レバーのしぐれ煮
  • 広東名菜油菜心の炒め
    広東名菜油菜心の炒め

  • 潮州焼きギョーザ
    潮州焼きギョーザ
  • 潮州肉団子と春雨の炒め
    潮州肉団子と春雨の炒め

 そしてそして、海老の香味炒めの、スパイシーさと味噌味のコラボが素晴らしいことといったら! おおぶりでブリブリのエビの、香ばしさとむっちりした身のおいしさは、もう……これもまたご飯がほしかったぐらい。

 ここまでで、味的にはずいぶん満ち足りたかもしれない。その上、注文が立て込んできて、ちょっと待たされたぐらいで、サービスでXO醤が出てくる親切心……。サービスのきめの細かさといい、ここのファンでいてよかった、と毎回思うのだ。

チャーハン・XO醤・ムースで三段〆

 それでも、やっぱり、〆はチャーハンになってしまう。それも、絶品レタスチャーハン。レタスがしゃっきり生きているところで炒め、歯触りも残したまま、アミもチャーシューも存分に使いながら、強い火力で一気に仕上げる。パラパラのチャーハンのおいしさといったら!

 そのうえ、さきほど、間つなぎにふるまわれたXO醤が、ここにこんもりあるじゃないかっ!(笑)早速投入し、奥深い味を堪能するのだった。おおきなスプーンで4杯ほどもあるチャーハンが、連れと自分だけであっという間になくなってしまった。

 もう、お腹は十分にくちくなっているのに、最後の一口として、選んだのが、栗のムース。

 超好き!

 このデザート、栗をまるまるペースト状にして数個まるごと入れ込んだお品だからこそできる味わい。スプーンでペースト状のクリームを口に運んだあとは、お口の中が、まさに上質な栗で満たされる感じとも言おうか。もうとにかくおいしかったのだった。

 外に出るともうすっかり夜はふけている。

 うれしさとおいしさに満ちた気持ちを夜空に広げて、家路を自転車を押しながら、ホテホテと歩いていたのだった。

  • 天然ホワイト海老の香味炒め
    天然ホワイト海老の香味炒め
  • XO醤
    XO醤

  • レタスチャーハン
    レタスチャーハン
  • 栗のムース
    栗のムース

●「潮州」

東京都杉並区荻窪5-7-9
Tel.03-3393-7775
営業時間:17:30~23:00(22:00L.O.)
定休日:月曜日(祝日の場合は翌火曜休)

About 上荻吾朗 40 Articles
編集者 かみおぎ・ごろう 1964年生まれ。北海道出身。週刊誌記者、漫画編集者を経て、WEB製作会社で勤務。震災後、通勤困難を経験して、メタボ対策のためにも、自転車通勤をするようになる。おいしいものを食べることが何より好きな健康チューネン。いかにも飲めそうなヒゲ面のくせに下戸。