2016年食の10大ニュース[1]

方向は正しいが、波高く視界不良

  1. TPP(環太平洋連携協定)法案可決も頓挫か
  2. 加工食品・原原(原料原産地)表示の方針決定
  3. 訪日外国人旅行者2000万人突破
  4. 食品企業の信頼低下
  5. どっこい生きてる病原菌
  6. 消費税10%導入の再延期
  7. 外食24時間営業の縮小
  8. アマゾン「ダッシュボタン」発売
  9. 糖質制限ジワリ浸透
  10. BSE(牛海綿状脳症)の検査廃止

 何が起きるかわからない世の中になった。国際面では、ブレグジット(Brexit=欧州連合からのイギリス脱退問題)やトランプ氏の大統領当選がある。国内でも、博多駅前の大穴には「ここは日本か」と開いた口がふさがらなかった。ただし、リカバリー・ショットは悪くなかった。大穴に特殊コンクリートを「ドウドウッ」と注ぐミキサー車集団に、「シンゴジラ」の場面を思い出したものだ。

 コンピュータや情報関連のICT分野でも、大きな進歩があった。遥か将来といわれていた囲碁で、ディープ・ラーニングによる「アルファ碁」が世界のトップレベル棋士を圧倒した。産業革命以後の流れだが、機械に仕事を奪われることを誰もが心配する時代になった。

 第2次安倍政権は、4年を超える。働き方、エネルギー政策、年金、農協等の改革を進めている。目指す方向は正しいが、“遅々”とした歩みである。

 年末の大幅な円安は、輸出企業には福音だ。一方、減産調整が整った原油や天然ガス等の輸入品は値上がりする。

「羮(あつもの)に懲(こ)りて膾(なます)を吹く」状態だが、新基準に合格した原発の再稼働が始まったことをうれしく思う。

 安倍日本丸の向かう方向は正しい。しかし、波は高く、視界は不良だ。台風や舵の利かない船が進路に近付けば、迂回せざるを得ない。

 上記動向に配慮しながら、食関連ニュースを選択した。

1. TPP(環太平洋連携協定)法案可決も頓挫か

 TPP法案が成立した。ただし、米国のトランプ次期大統領は離脱を明言しており、先行きは不透明である。TPP不成立でも、日本農業の強化は待ったなしだ。農協の関与を弱める必要があるが、十分ではない。重要なのは、大規模化・高品質化・企業参入推進にあると考える。

2. 加工食品・原原(原料原産地)表示の方針決定

 TPPに反対する農業関係者の懐柔や一部消費者の要望に沿って全加工食品に原原表示が導入される。食品業界だけでなく良識ある消費者から反対の声があったが、結局押し切られた。「大括り表示」等が認められる模様だが、食品業者には大きな負担になる。国産品の消費増効果には、疑問がある。

3. 訪日旅行者2000万人突破

 訪日旅行者が2000万人を突破した。“爆買い”は終息したが、日本には多様なコンテンツが存在する。体験型の観光が増えているが、日本食の魅力は大きい。日本発の食品安全管理規格(JFS-E-A/B/C規格)がスタートした。国内のHACCP推進を図りながら、独自の利点を海外にアピールしていきたい。

4. 食品企業の信頼低下

 日本サプリメント「ペプチド茶」等について、関与成分が規格に達しないとしてトクホが取消された。機能性表示食品では、粗悪な文献に基づくものが流通している。異物問題も継続しており、カツ廃棄問題では廃棄物処理のシステム不全が明らかになった。企業は信頼回復に力を注がなくてはならない。

5. どっこい生きてる病原菌

 冷凍メンチカツによる腸管出血性大腸菌O-157食中毒が発生した。しばらく、話題にならなかったが、高病原性鳥インフルエンザが発生した。また、免疫型が異なるノロウイルスが猛威を振るっている。ノロは便口感染が多く、かつ不顕性感染も多い。食品に触れる者はこのことを自覚して、手洗いを励行する必要がある。

6. 消費税10%導入の再延期

 給料の手取りが多少増えても、国内消費は盛り上がらず、消費税10%は先送りになった。将来への不安が大きいのは確かだろう。節約志向でも、大切なものにはお金を遣うプチぜいたくは健在である。セブンプレミアムの売上げも伸びているようだ。2極化が進んでいることがわかる。

7. 外食24時間営業の縮小

 外食各社で、24時間営業の縮小が相次いでいる。コンビニ等の小売業でも、同様の動きがある。人手不足や生活習慣の変化が背景にありそうだ。この穴を埋めるように、外国人労働者が増加している。農業でも必要な外国人労働者だが、雇用規制の緩和を進めるべきと考える。

8. amazon「ダッシュボタン」発売

 人手不足への対応策の一つが、自動化・ロボット化である。セルフレジの試験導入が広がっており、訪日旅行者への外国語対応にもなるという。この流れに沿って、amazonがボタンを押すだけで商品が届く「ダッシュボタン」を開発した。さらに、レジなしコンビニにも進出するという。農業でも、ロボット化が進んでおり、動向に注目したい。

9. 糖質制限ジワリ浸透

 健康法には流行り廃りがある。しかし、少し違うと感じているのが、糖質制限である。有害な血糖値スパイクを避けることができる。極度の糖質制限は危険という指摘があるので、実行者は体調に注意が必要だ。食肉や魚介類の割合を高めると食費がかかる。食材として、大豆の重要性が高まるだろう。

10. BSE(牛海綿状脳症)の検査廃止

 飼料規制と特定危険部位の除去がBSE対策の骨子である。品質はプロセス管理が基本で、HACCPの考え方も同様である。異常プリオンの検査は不要になっていたが、ようやく全廃される。一方、食品中の放射性物質検査が続いている。リスコミを進めながら縮小してよいのではないだろうか。


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About 横山勉 99 Articles
横山技術士事務所 所長 よこやま・つとむ 元ヒゲタ醤油品質保証室長。2010年、横山技術士事務所(https://yokoyama-food-enngineer.jimdosite.com/)を開設し、独立。食品技術士センター会員・元副会長(http://jafpec.com/)。休刊中の日経BP社「FoodScience」に食品技術士Yとして執筆。ブログ「食品技術士Yちょいワク『食ノート』」を執筆中(https://ameblo.jp/yk206)。