グルテンを含む穀類の参照用量

No.25(2025.12.10)

小麦粉(イメージ)

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。FAO/WHOはグルテンRfDを4mgと勧告。PAL判断基準と表示整合を提案。EUはNGT植物の規制緩和で暫定合意。EFSAはダイオキシンTWIを0.6pg/kg/週に案。

注目記事

【FAO/WHO】食物アレルゲンのリスク評価に関するFAO/WHO合同専門家会議——グルテンまたはグルテンを含む穀類の参照用量要約と結論

 国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)は、コーデックス食品表示部会(CCFL)から、グルテンおよびグルテンを含む穀類の参照用量(RfD)と濃度に関する科学的助言を求められたことを受け、2025年11月3〜7日に開催した専門家会議の要約を発表した。完全な報告書は今後発表の予定である。

 専門家会議は、セリアック病患者におけるグルテンばく露と臨床的な有害影響の関連を理解するためにさらなる研究が必要であること、グルテンフリー表示がない製品における非意図的な混入への予防的アレルゲン表示(PAL)の適用判断の基準を4mgのグルテンRfDにすることなどを勧告している。

※ポイント:以前の専門家会議で、食物アレルゲンとしての小麦のRfDが「総タンパク質量として5mg」と導出されました。今回の会議では、その小麦RfDがセリアック病患者の安全が守られるグルテンRfDの範囲に該当することを確認した上で、小麦に対して異なるRfDが設定されることを避けるため、小麦総タンパク質量5mg中のグルテン量(4mg)をグルテンのRfDとして推奨しています。また、複数の穀類に由来するグルテンを含む場合は状況に応じて原材料欄とそれ以外の表示欄(PALを含む)にそれぞれ適当な穀類名を記載する必要があることや、グルテンフリー表示基準とPAL表示基準の両方に該当する製品に対する消費者の混乱を避けることなども勧告されています。

【EC】欧州委員会は植物の新しいゲノム技術に関する暫定合意を歓迎する

 欧州議会とEU理事会は、新しいゲノム技術(NGT)を用いて得られた植物に関する新たなEU規則について暫定的な政治合意に達した。NGT植物をカテゴリー1(自然または従来の育種方法でも発生し得るもの)とカテゴリー2(その他)に分類した上で、カテゴリー1に該当するNGT植物は従来の遺伝子組換え生物(GMO)に関する規制や表示要件の適用が免除されることになる。今後、EU理事会と欧州議会で正式に採択される必要がある。採択後、2026年中に官報に掲載され、2年後に適用が開始される予定である。

【EFSA】意見募集——ダイオキシン類および関連するPCBs

 欧州食品安全機関(EFSA)が、食品に含まれるダイオキシン類および関連するポリ塩化ビフェニル(PCBs)の健康リスクの評価案を発表し、2026年1月26日まで意見を募集している。本評価は、WHOが2022年に毒性等価係数(TEFs)を改訂したことを受けて実施された。EFSAは、ダイオキシン類(PCDD/Fs)およびダイオキシン様PCBs(DL-PCBs)の新しい耐容週間摂取量(TWI)を0.6pg/kg体重/週と提案している。

※ポイント:2018年の前回評価では、2件のセベソ事故後調査と1件のロシア子供調査の疫学データを用いてTWIを2pg/kg体重/週と設定していました。しかし、ヒトの疫学研究では改訂されたWHO2022-TEFsの適用に必要となる同族体の情報等が十分でないとして、本評価ではラット試験のデータを用いており、結果的により低いTWIが提案されました。意見募集を経てEFSAによる評価結果が最終化された後には、それを科学的根拠として、EUで食品に設定されている最大基準値が見直される可能性が考えられます。

(注目記事のまとめ:安全情報部第三室)

目次

【WHO】

1. 出版物

2. 国際がん研究機関(IARC)

【FAO】

1. 食物アレルゲンのリスク評価に関するFAO/WHO合同専門家会議——グルテンまたはグルテンを含む穀類の参照用量要約と結論

2. FAOフードアウトルック、世界の食料品生産の幅広い増加を指摘

3. FAOの80年:すべての人のためのより良い食料の追求

【EC】

1. 欧州委員会は植物の新しいゲノム技術に関する暫定合意を歓迎する

2. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】

1. 意見募集——ダイオキシン類及び関連するPCBs

2. DRVファインダー(2025年12月に新しい耐容上限摂取量に更新)

3. 食品添加物関連

4. 新規食品関連

5. 遺伝子組換え関連

6. 食品接触物質関連

7. 農薬関連

8. ポッドキャスト

【FSA】

1. 新規食品認可ガイダンス

2. 2025年12月のFSA理事会のペーパーが公表される

3. 安全性評価における共通課題を特定するための精密発酵申請のレビュー

4. CBD製品の使用

5. 規制製品安全性評価

6. FSAは食品衛生ランク付け15周年を迎え、外食する消費者に「予約前に確認する」よう呼びかける

7. 食品規制の将来–予算発表

8. 薬剤耐性と食品:薬剤耐性とは何か、なぜ重要なのか

【BfR】

1. 抗生物質耐性の広がりと闘うための協力BfRは学際的な監視アプローチに参加する

2. マイクロプラスチック——現在分かっていることマイクロプラスチックに関する消費者保護フォーラム

3. BfR科学マンガ

4. 科学的なナンセンスを認識する“Quarks Science Cops”が“Risiko”ポッドキャストにゲストとして登場

【ANSES】

1. 強化され、より代表的となった新バージョンのCiqual表

【FDA】

1. タルク含有化粧品中のアスベストの検出及び特定のための試験方法;撤回

2. FDAはエージェント型AIの導入により人工知能(AI)の能力を拡充する

3. GRAS申請通知

4. 着色料認証に関する報告:2025会計年度第4四半期、7月1日-9月30日

5. 公示

6. 警告文書

7. リコール情報

【EPA】

1. ファクトチェック:EPAが「永遠の化学物質」農薬を最近承認したという誤った主張を否定する

【CFIA】

1. 業界向け通知–2026年1月1日に発効する包装前面の栄養シンボル表示に関するコンプライアンスと施行のアプローチ2. リコール情報

【FSANZ】

1. 食品基準通知

【APVMA】

1. 化学物質の再検討に関する決定のタイムライン

2. 新たなトランス・タスマン協定により第1次産業に利益がもたらされる

【TGA】

1. ビタミンB6含有製品に対する安全管理の強化

【香港政府ニュース】

1. ニュースレター

2. 違反情報

3. リコール情報

【MFDS】

1. 日本産輸入食品の放射能検査の結果

2. 輸入食品規制はスマートに、安全管理はよりきめ細かく

3. 人工知能(AI)予測でリスクの高い輸入食品を選別

4. 食薬処——全羅南道、農水産物の安全管理協力

5. 食薬処、冬期に備えキムチ用食材、多消費水産物の検査を強化

6. 食薬処、K-酒類のASEAN輸出ルート拡大

7. 第48回Codex総会、K-Foodの国際的地位強化の快挙!

8. 食品安全知識、食品安全国の「一口クイズ」で学んでみましょう

9. 回収措置

【HSA】

1. プレスリリース

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.25(2025.12.10)
https://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2025/foodinfo202525c.pdf